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【超能力捜査】ハーバード卒女性失踪事件・奇妙な真相


アメリカ、メリーランド州。

ローラ・ホグリングは将来を約束されたハーバード大卒の23歳の女性で、就職したのとともに最近実家に戻ってきたばかりだった。

しかし1992年10月19日の朝、ローラは出勤しておらず電話しても応答がない。仲の良い同僚が心配し、ローラの兄ウォーレンに電話をかける。

ローラは大変責任感が強く、無断欠勤などあり得ない。何かがおかしいことを察知したウォーレンは実家に向かう。ローラは不在だった。

夜になっても彼女は戻らず、手がかりがつかめない。不安が増した彼は警察へ連絡する。母親のペニーはカンファレンスで出張中だったが、ウォーレンから連絡を受けると出張を中断して家路へと向かう。

警察の捜査には何の進展も見られなかったため、家族は自分達でなんとかしなくてはと思っていた。何か悪いことが起こっていると確信していたからだ。

たくさんのローラの友人がポスターを貼ったりして積極的に動き出す。ローラ・ホルティング行方不明事件は地元メディアで大きく報じられた。

ローラはほぼ完璧なアメリカンガールだった。成績優秀で将来有望。長身で手足が長く、笑顔も可愛かったと兄ウォーレンが語る。

失踪から2日経過してもローラからの連絡はない。警察は本格的な捜査に着手する。まずは自宅から捜査は行われるが、不審な点や異常なことは何もなく乱された跡などもない。何者かが侵入したようには見えなかった。

警察は近所で聞き込み捜査を行う。すると隣の子守りの女性が奇妙な目撃証言をする。長身でスリムな金髪の女性が当日の朝8時に仕事に行くのを見たと言うのだ。

彼女によると、毎朝ローラは家を出る時に手を振ってくれると言う。この日のローラはトレンチコートとスラックスを着ていて、特に変わったことはなかった。ただ一つこの日は手を振ってくれなかったことを除いては。

ローラがあの日の朝8時に家を出たのなら彼女は今どこにいるのか。23歳の女性がこつぜんと消えたことに皆困惑する。

ウォーレンにとって、何が起こっているのが分からないことは非常に不快なことだった。ローラの居場所が分からないからと言って必ずしも何か起こったわけじゃないと考えようとする。だが状況をどのようにも説明できない。

警察は家族や友人に聞き込み捜査をする。地元の野原や森も捜査した。ローラ失踪から4日後、調査を全く新しい方向に導く発見があった。

ローラの自宅から1kmほどのところで警察犬によって血のついた枕カバーが発見されたのだ。一般的な枕カバーではなく、普通の家には置いていないような高価なものだった。ホグリング家のリネンとマッチしたため、当局は枕カバーを鑑識に回す。

具体的な証拠がないため公的には行方不明事件ではあるが、血のついた枕カバーが見つかったことで、他殺の可能性が高くなる。

家族と警察の間では、行方不明事件か殺人事件かで意見の対立があった。ウォーレンも殺人の可能性が高いと思っていたものの、この件で最悪なことが起こったのだと確信する。

何かひどいことが彼女に起こったのは明らかだが、何が起こったのか。ローラ失踪から1週間経っても彼女の生死は分からない。

そこへ場所を特定する能力を持っていることで有名な地元の超能力者が力になることができると申し出る。彼女は過去にも捜査に協力したことがあり、警察にも知られている存在だった。

その前の年に警察犬が行方不明になった時に、彼女が当局に電話をかけてきて、電話を切らずに最後まで話を聞いてほしいと言った。犬は川の側の木につながれていると言い、彼女が言った場所で無事に警察犬は保護された。

彼女の名前はデボラ・ヘインネッカー。幼い頃から不思議な能力を持っていて、写真や持ち物からエネルギーを読み取ることができると言う。

デボラはローラの居場所を特定できると警察に連絡をとってきた。実績があるため警察官も躊躇いなく会うことに同意し、デボラを署へ迎え入れる。その夜の任務はリッチ・フォーリン刑事。

行方不明のローラの写真を手にしたデボラは、パズルのようなイメージが見えると言う。

デボラは言う。

「見えたのは女性よ。ただすごく奇妙に感じる。と言うのは、彼女は男性的なエネルギーを持っていてそれがとても強いの。困惑してるわ。その人物は間違いなくローラを憎んでる。そしてすごく強く嫉妬してる。かなり強い嫉妬心よ。この人物がシーツか掛け布団でローラを包んでいるのが見えたわ。この人物はローラの服に着替えたように感じた。そしてローラを運び出した。この時点ではローラはもう生きていないことは確かだと感じたわ。」

男性的なエネルギーを持った女性、激しい嫉妬、殺人・・。フォーリン刑事はローラが死亡している可能性については同意した。だがデボラの言うことが信じられなかった。なぜなら当局はこれは女性による犯罪とは思えず、男性が関与していると思っていたからだ。

枕カバーの血はローラのものだという鑑識の結果が出る。おそらくローラの寝室で事件は起こったのだろうと考えた当局はローラの自宅へ出向き、シーツを剥ぎ取って調べる。

するとローラの母親がこのシーツはローラのベッドのものではなく、ゲストルームのものだと言う。そしてローラのベッドのマットレスパッドはなくなっていた。

マットレスを調べるが血痕が装着した気配はない。そこで血痕を探すために化学薬品を用いることにする。ルミノールは血液中のヘモグロビンに反応し発光する。スプレーをし電気を消すと、マットレスが光りだし全ての血液が突然現れた。血痕が見えなかったのは犯人が一掃していたからだったのだ。

当局はローラの死はほぼ確実だとした。超能力者デボラが見越していたように。

家族がデボラから伝えられていたのは、血液がマットレスに付着していることと、それだけの血液を失っては生存できないほどの量であること。家族にとってもローラが生存していないことの裏付けとなった。

おそらくローラは生きて家を出なかったのだろう。だとしたら、翌朝彼女が家を出るのを見たという証言に矛盾が生じる。隣の子守りの女性が見たのは別人だったのか。ではそれがローラでなかったとしたら誰なのか。

若い女性が自宅で殺され犯人が野放しになっている。当局にも犯人特定と逮捕の大きなプレッシャーがかかる。再びローラを見た人はいないか、皆への聞き込み捜査が始まる。

自宅に出入りする人物は誰か、ローラの友人は誰か、母親ペニーに聞くと、ハーデン・クラークの名前も挙がる。

ハーデン・クラークはホグリング家の庭師兼雑用係で、森に住むホームレスの男性だ。ローラの母親は教会の更生プログラムを通してこの男性を雇っていた。

母親は警察に彼のことは放っておいてほしいと思っていた。彼には精神的な問題があるが、決して暴力的な人ではないので犯人ではないと言う。だから彼を疑ってほしくないと。

署に戻ったフォーリン刑事がハーデン・クラークの件を上司に報告するやいなや上司は、「なんてことだ!」と言う。

ハーデン・クラークには暗く歪んだ過去があった。妄想型統合失調症で、凶悪な器物破壊や盗難を含む一連の逮捕歴があったのだ。さらに未だ未解決である6歳の少女失踪事件の容疑者でもあった。

数年前にハーデン・クラークの事情聴取を行った刑事に話を聞くと、その刑事は言った。

「この男は異常だ。この犯罪をやる可能性は非常に高いぞ。」

そしてこの庭師はローラ失踪事件の第一容疑者となる。警察は尾行をし始める。証拠不十分なため現時点では逮捕できないのだ。

ウォーレンが言う。

「ハーデンに疑われる要素があるのは分かるが、私たち家族には抵抗があった。ハーデンが犯人のはずがない。彼は無害な人だから。」

ローラの母親は警察がハーデンにフォーカスしていることに激怒していた。そんなのフェアじゃない、彼はとても優しい人なのだと。

教会の牧師も憤慨し、この男性をそっとしておくように言う。ホームレス擁護者達からも署に電話があった。

しかし枕カバーの更なる結果が彼の犯罪への明らかな関与をさらけ出す。ハーデン・クラークの指紋がローラの血液の中に発見されたのだ。直ちにハーデン・クラークはローラ・ホグリングの殺人容疑で逮捕される。

ウォーレンは言う。

「私たち家族は彼を信頼していました。そしてその信頼が間違いだったことを知りました。とても辛いことでした。」

しかし疑問はまだ残る。ローラはどこにいるのか。

法律関係の仕事に就いたばかりの23歳のハーバード卒の女性が不可解な失踪をし、逮捕された庭師は何も語らない。

ファーリン刑事によると、血のついた指紋はあるものの状況的なものでしかない。確信に至るには十分ではなく、彼を釈放するべきだと言う声もあった。

保釈裁判で検察側は、更なる証拠を集めている間、ハーデン・クラークを刑務所に入れておくことを主張した。

ウォーレンは言う。

「何がおかしかったかというと、妹に何が起こったのか知らなかったことと、ハーデンの逮捕がその答えにならなかったことです。」

警察は捜査を拡大するが、進展がないまま数ヶ月が過ぎる。ハーデン・クラークは拘留されたままだが何も話そうとしない。家族は待つことしかできず、何もできないことに無力さを感じていた。

ファーリン刑事は言う。

「犯人はハーデン・クラークと分かっているが、それを証明するのが困難でした。ハーデンが過去に滞在した場所は全て行った。それでも必要な証拠を見つけるのに非常に困難な状況に陥っていました。」

しかし超能力者のデボラは、ローラが埋められている場所が分かると思うと言う。

「キャンプ場に比較的近い場所だと感じました。彼女は浅い場所に埋められてる。泥だらけの土壌に。鼻の一部が露出している。頬の一部と、おでこも少し出ているかもしれない。」

これを警察は信じなかった。ハーデン・クラークがいたキャンプ場周辺はすでに何度も捜査していたのだ。しかしデボラは探し続けることを主張する。

ローラの失踪から8ヶ月後の1993年6月13日、驚くべき展開が起こる。

裁判の前日、科学者は全ての所見の見直しをしなければならない。その過程でローラのヘアブラシの中に他の髪の毛とは違うものを見つけた科学者が、それを取り出し調べるとウィッグのものだと判明する。

それより前に、ハーデン・クラークが借りていた倉庫が発見されていた。そこにはハイヒール、女性ものの下着、ドレス、ウィッグなど女性ものの衣服がたくさん収納されていた。ハーデンは女装が趣味だったのだ。

ようやくデボラの言っていたことが理に適ってくる。デボラにとっては電球が点いたような瞬間だった。

「ああそう、これよ、これが私が感じてたこと。この人物に男性のエネルギーを感じたのはこういうことだったの。」

ローラのヘアブラシから検出された髪の毛は、ハーデン・クラークのウィッグとマッチした。

ハーデン・クラークはついに自供。司法取引と引き換えに、ローラがいる場所へと案内する。彼は森の中にあるキャンプ場所の周りへと導く。

そこで一行は浅い場所に埋められたローラの骨を発見する。何ヶ月も経っており、雨によって体の一部分は流されていた。そのため彼女の体は地面に露出していたのだ。

全てデボラが言った通りだった。驚きを隠せない警官も多かった。そこは何度も何度も捜査を重ねた場所だったからだ。

ウォーレンが言う。

「ローラの居場所を知ってると言えることは、終止符を打つ機会を持てたという面では、とても助けになりました。何も知らない、分からないということはとても辛かったのです。」

ハーデン・クラークの両親は二人ともアルコール依存症で、彼は機能不全の家族に育った。そして母親に女の子の服を着せられていた結果、彼は自分自身を女性として認識するようになる。

彼は幼い頃からサディスティックな傾向を示し、犬や猫を虐待したり他の子供をいじめたりしていた。小さな動物を撃っては近所の家の前に置いたりもした。

ローラの母親が雇った庭師が生まれながらの殺人犯だとは知る由がなかった。

しかしなぜローラだったのか。

ローラの母親ペニーは、庭師ハーデンを息子のように可愛がった。ハーデンはミセス・ホグリングを慕うようになり母親の象徴となる。

そこへ実の娘がハーバードから実家へ戻ってきた。彼はローラに家を乗っ取られ、自分の存在が彼女に置き換えられたと感じたのだ。

彼はただの庭師と雑用係だったのにもかかわらず、ペニー・ホグリングを実の母親と錯覚していたのかもしれない。その怒りが彼の中で大きくなっていったのだろう。

自供により事件の全体像がついに明らかになった。10月19日の夜、ハーデンはホグリング宅に侵入。ブロンドのウィッグをつけてローラの寝室に侵入すると彼女を起こす。

ローラの恐怖は計り知れない。特にウィッグを被った男を見た時はどれほど恐怖だったことだろう。

彼女の手足を縛るとベッドの上で彼女の息を止めた。さらに彼女の喉を切り付けると、シーツで彼女を包み、車に運び出した。

その後またホグリング家に戻ると一掃。予備のシーツでベッドメーキングをし、通常のように見せかけた。そしてハーデン・クラークはそのベッドに入った。

翌朝、彼はウィッグをつけローラのヘアブラシで髪をといた。そして女装した彼はローラのブリーフケースを持って朝8時に家を出たのだった。

それが隣の子守りの女性が見た人物だったのだ。

その日の夜、ハーデン・クラークはローラを自分のキャンプの近くに埋めた。

ウォーレンが言う。

「僕にとって悲しいのは、その時に優位だった感情です。殺人なんて自分が知っている人には起きない、自分の大切な人には起きないという概念。人生でそんなことがあってはならないという考え。でも全て変わりました。」

ハーデン・クラークには、ローラ・ホグリングの殺人罪で懲役30年が言い渡された。

その後彼は、行方不明となっていた6歳の少女、ミッシェル・ドールを埋めた場所も明かす。彼が容疑者となっていた失踪事件である。

彼は他にも殺人を犯したと言っているが遺体が発見されることはなかった。しかし当局は彼の隠し場所からローラの指輪を含む戦利品の数々を押収している。

デボラは、今まで扱った中で一番奇妙な殺人事件だったと述べている。

フォーレン刑事は言う。

「この事件では超能力者に助けられました。だから私は超能力者を使うことに関してオープンです。もし彼女が力を貸してくれるのなら喜んで力を借りて事件解決につなげます。」


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