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お守り

お香に火をつけて、ゆっくり呼吸をする。

キャンドル1つだけ灯したこの部屋は私だけのもの。

どれだけ心が苦しくて、どれだけ逃げ出したしたくても、この夜は私を許してくれないの。

だから私は唯一の身方であるこの部屋で、細々と朝をむかえる。

勇気を出して、ある夜、散歩に出かけてみた。
とても素敵な夜だった。

でも私があまりにも似合わなくて、途中でさみしくなった。

しょうがないからコンビ二でコーヒーを買って、気をまぎらわす。
それが私にできる最大限の強がり。

私はタバコが吸えないから、代わりにコーヒーを飲む。

いきっているわけじゃないの。ただ生きているだけ。

私はあまり生きるのが上手くないから、苦みを取り入れて夜な夜な練習しているの。

だからね、神様、私にどうか甘さをちょうだい。

めいっっぱいの甘さを。

朝になった。

今日も世界は不安定で、空はコンクリート。

道ゆく人の声はまるで私に向かうナイフのようだから、私は今日もヘッドホンをしてる。

ねぇ、どんな音だったっけ

雨音1つも逃さないほど心惹かれてた。
あの子の声だってよく聴こえてた。

今日も私はヘッドホンをして家に帰る。行きたいところはたくさんあるけれど。

夜は私を不自由にするから。

私はキャンドルを灯して今日も細々と朝を待つ。

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