見出し画像

05_軍配、推し活、コマーシャル 夏の涼だけじゃない「うちわ文化」

※この記事は「お盆と夏の涼週間」2023年7/25(火)-7/31(月) に付随した特集記事で、メールマガジンでリリースした内容をアーカイブしています。
メールマガジンの新規登録はこちら


江戸時代のうちわ絵
女性が描かれているわけは一体、、、

「権威」から「娯楽」へ 
時代と共に変化するうちわの役割

夏の風物詩、うちわ。仰いで涼んだり、キャンプの火おこしで使ったり、夏祭りで配っていたり。この季節に馴染み深いものだが、もともとの起源はかなり古く、今から4000年以上前の古代エジプトまで遡る。

日本に伝わったのは紀元前3世紀の中国(周)からと言われ、貴族などの身分の高い人が顔を隠すのに使ったり、邪気を払うための儀式に用いたのだそう。現在のように涼をとる使い方ではなく「権威の象徴」「儀式・信仰」などの側面が強いようだ。戦国時代には、権威・縁起物の意味合いから武将が持つ「軍配」にもなっている(相撲の軍配もこれ)。

「あおぐ」などの使い方が一般的になったのは江戸時代からと言われている。製紙技術の向上や団扇の製法が各地に伝わったことからうちわが大衆にも広まり、実用的な生活道具として町民文化に浸透していく。合わせて木版印刷技術も向上し、団扇に絵を刷る「団扇絵」が発達。和歌や浮世絵が描かれ、一般の手にその美が行き届くようになった。こうして団扇は従来の「権威」を示す道具から、「たのしむ」道具へと変化していった。

広告うちわ、当たり前だがいろいろある

「広告うちわ」の発明 
うちわのメディア化

明治時代に入ると「広告団扇」が発達する。社名や商品のキャッチコピーが印刷され、主にアメリカに輸出された。国内でも企業や団体の販促・宣伝として需要が増し、うちわの実用面に加え広告媒体としての役割が備わるようになる。

戦中は生産が激減するものの、戦後・昭和20年代後半から日本経済の回復とともに団扇の生産も復調していく。昭和30~40年代は当時人気の俳優・女優の顔や姿が扇部を飾り、人々はそのアイドルを近い距離感で手にとって親しんだ。

1966年には四国団扇株式会社(香川県・丸亀市)がプラスチックうちわ『ニューファン』を開発。手作りの竹うちわを遥かに上回る生産性と低コストを実現し、広告媒体として急速に普及していった。それから駅前やお祭りなどで配布される代表的な広告媒体の一つとして定着し、スポーツ観戦やアイドルコンサートの応援グッズとしても欠かせないアイテムとなった。

うちわはコミュニケーションの手段にもなるのだ

fanがファンをつなぐ 
歴史が裏付ける「”推し活”うちわ」

権威、儀式、縁起、祈願、軍配、信仰、などなど、、、涼むための「あおぐ」以外にも様々な使われ方をしてきたうちわ。

他にも踊りや祭りにおいても使われる例が多く、全員で同じ図柄を持つことで集団を表したり、扇部に団体名(組や講中、役名など)を書いて掲げ持ち「所在」を表示する、いわば「チームのユニフォーム」みたいな役割があった。これはどこか今のスポーツ観戦やアイドルのコンサートの応援グッズとしての使われ方にも通ずるんじゃないかと思う。

アイドルうちわで言えば、江戸時代の団扇絵の中の役者や遊女、力士(今でいうアイドル「推し」だ!)などの絵を描いたものがかなり近い。うちわで推しを身近に感じたり、ファン同士で繋がったり、うちわがコミュニケーションの手段として働いているのは、きっと江戸時代にも起こっていたのではないだろうか。

今ではうちわで推しに想いを伝えられたり、推しにリクエストできたり(投げキッスとか返ってきたり!)、自分でうちわをつくるその時間も楽しめたりなど、うちわの役割は常に進化しながら活躍し続けているのだ。

プラスチックにはない価値を 
地元の竹と和紙でつくる「渋うちわ」

うなぎの寝床では、熊本山鹿、栗川商店北民渋うちわを取り扱っている。
素材は阿蘇外輪山の真竹と手漉きの和紙。仕上げに柿渋を塗る「渋引き」が特徴で、渋引きを行うことで防虫効果があり丈夫で長持ちする団扇に仕上がっている。

団扇はすでにプラスチック製のものが主流で、伝統的な団扇の需要が激減し、今では来民団扇を作っているのは栗川商店一軒のみ。1991年に31歳で4代目を継いだ栗川さんは、渋うちわ持つ素朴さや趣を強みに変えようと、地元の素材と伝統の技にこだわり、団扇をつくり続けている。

丈夫で永く使えること、竹特有のしなりと持ち心地、モノとしての存在感など、きっと渋うちわだからこそ感じられる夏の風情があると思う。ぜひ栗川商店の渋うちわで夏の涼を味わっていただきたい。


RECOMMEND ITEMS / 関連商品

夏の涼を楽しむものたち、集めました

1. 栗川商店 渋うちわ

夏の訪れをつげる
柿渋で仕上げた伝統の団扇
1,320円(税込)〜
ご購入はこちら

2. みのや扇舗 /fan/fun

茶道用の扇子をつくって120年
閉じた姿も美しい
6,050円(税込)
ご購入はこちら

3. 西の線香花火

300年変わらない線香花火の原形
風に乗ると火花の勢いが増す
880円(税込)
ご購入はこちら

4. MONPE steteco.com 高島ちぢみ

夏の快適アイテム「ステテコ」の生地を使用
サラサラ着心地で涼しい〜
11,550円(税込)
ご購入はこちら

5. にじゆらの手ぬぐい

手ぬぐい一筋、半世紀
カラフルで柄も楽しい手ぬぐい
価格:1,650円(税込)〜
ご購入はこちら

6. うなギフト 納涼縁側ギフト

風土と知恵と技術が生んだ
日本の夏を楽しむ納涼セット
5,355円(税込)
ご購入はこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?