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【小説】ヴァルキーザ(ルビ付き版)

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小説『ヴァルキーザ』本文にルビを振った版のマガジンです。(本文の内容を少し改変しています)
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2022年9月の記事一覧

小説『ヴァルキーザ』 26章

小説『ヴァルキーザ』 26章

26. 北方の旅路

ユニオン・シップ団は、凍てつくような冷たい風が襲いかかる北方の、黒い水面の氷雪海の海岸を歩いた。

一面、灰色の空の下、ときにちらちらと、ときに吹雪のようになって舞う雪と悪戦苦闘しながら、一団は進んでゆく。

路の途中で幾度か、死霊騎士と遭遇した。

エルサンドラの遣わしたこの魔物を、ユニオン・シップは苦闘しつつ退治し、前途を切り開いていった。

捉えた対象に瞬時に死をもたら

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小説『ヴァルキーザ』 25章(3)

小説『ヴァルキーザ』 25章(3)

ロード・ガイエンに別れを告げて屋敷を出ると、グラファーンたちは、先の旅路である氷雪海の海岸へ行く前に、このビルバラの町の中を少し歩き回ることにした。

町の隅で一人の老人と出会い、話をする。
彼は、ビルバラの人々から「賢者ラナ」と呼ばれている人物だ。

彼はグラファーンに打ち明ける。
「 わしは、エルサンドラにすべての悪を帰すことには慎重なのじゃ…その訳は、町のさらに奥にいるタキリスに聞くといい」

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小説『ヴァルキーザ』 25章(2)

小説『ヴァルキーザ』 25章(2)

グラファーンたちが、今までの自らの冒険の事と、これからの冒険の予定とを話したのを静かに聴いた後、ガイエン卿は語った。

「私もかつて、『時の城』に乗り込み、悪魔から城の奪還を試みたことがある」

グラファーンは驚いた。
「えっ! あなたも時の城に行かれたのですか」

「そう。まだ私が現役の冒険者だった頃の話だ。私はその当時、君たちのように、仲間とともに、冒険の装備をして、時の城に乗り込んだのだ」

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小説『ヴァルキーザ』 25章(1)

小説『ヴァルキーザ』 25章(1)

25. ビルバラ

爆炎と煙のなかに沈む「運命の砦」を辛くも脱出したユニオン・シップ団は、砦の内部にいた時に人の話で聞いていたビルバラの町に、逃げ込むようになだれ込んだ。

ビルバラの町で、ユニオン・シップ団は、運命の砦にいた守護聖獣キメラが勧めていたことに従って、町の治安判官に願い出て、エルサンドラのしもべ達のせいで「運命の砦」で自分達に課された時間超過の苦役の補償をエルサンドラ側に行わせるよう

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小説『ヴァルキーザ』 24章(3)

小説『ヴァルキーザ』 24章(3)

グラファーンたち冒険者が三階に上がると、そこは岩をくり抜いた巨大なドーム型の空洞だった。
その広い空間を少しずつ、足元に気をつけながら歩いてゆくと、前方の暗がりの中から巨大な影が浮かび上がる。

グラファーンたちが身構えると、天井から、ぱっと数条の光が降り注いだ。魔法の照明の光だ。
光は、岩の床を広範囲に照らしている。

スターリスが果敢に声を上げ、三階の、その巨大な主に問いかけた。

「あなたが

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小説『ヴァルキーザ』 24章(2)

小説『ヴァルキーザ』 24章(2)

誰も話題にしなかったことを考えると、それはよほど小さな村で、とうに竜のゲルグースによって破壊されてしまったようだ。

グラファーンたちはあわてて、ローレリア鉱山に数日前に起きた出来事をトーラス、アルマイル、ベルシーラに伝えた。

トーラスたちは、その話に衝撃を受けた。

「何ですって? 鉱山が攻撃された?」
「あなた達が壊したのか?」
「じゃあ私たち、これからどうやって生活していけばいいの?」

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小説『ヴァルキーザ』 24章(1)

小説『ヴァルキーザ』 24章(1)

24. 運命の砦

空飛ぶ絨毯から降りると、グラファーンたちは、目の前に垂直にそそり立つ巨大な岩を削って造られた、「運命の砦」に入っていった。

入ってすぐにグラファーンたち冒険者は、暗黒僧侶の小集団と遭遇し、避けられない戦いとなった。

冒険者たちが彼らを打ち倒し、そのうち一人の生き残りを捕らえて尋問した。

砦の内部は三階建てであること、二階にはブラックフォロスたちがいること、一階には自分たち

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小説『ヴァルキーザ』 23章

小説『ヴァルキーザ』 23章

23.グラーズ砂漠

冒険者たちは、グラーズ砂漠を目指して、北へと歩いて行った。

遠くに砂漠の見えるステップを歩いてゆくと、途中で、反対側から歩いてくる一人の旅人と出会った。
旅人は女性で、キサルファという名の女魔法使いだった。

魔女キサルファの話によると、このステップの先には少数民族の宿営地があり、そこで旅に必要ないくつかの品物を買うことができる、とのことだ。

また、グラーズ砂漠を渡るのに

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