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小説『ヴァルキーザ』 24章(1)

24. 運命のとりで

空飛ぶ絨毯じゅうたんから降りると、グラファーンたちは、目の前に垂直にそそり立つ巨大な岩を削って造られた、「運命の砦」に入っていった。

入ってすぐにグラファーンたち冒険者は、暗黒僧侶ブラックプリーストの小集団と遭遇し、避けられない戦いとなった。

冒険者たちが彼らを打ち倒し、そのうち一人の生き残りを捕らえて尋問した。

砦の内部は三階建てであること、二階にはブラックフォロスたちがいること、一階には自分たちのようにブラックプリーストがいて邪教団カルトを形成していること、砦自体はエルサンドラ軍の要塞基地として使われていたこと等の情報を聞き出せた。

その捕虜を砦の入口から追い出すと、ユニオン・シップ団の冒険者たちは、さらに砦の中へ入り進み、一階の中央部でブラックプリーストのカルトと遭遇した。

激しい戦闘の末、冒険者たちは彼らを全滅した。

一階の奥へ進むと、岩壁をくり抜いて造られたいくつもの牢屋があり、精霊フォノンたちが中に閉じ込められていた。

みな、ミリヴォグ族だ。

彼らが、ここからさらに奥地にあるエルサンドラの基地に供給される予定の奴隷たちだったことが分かると、ユニオン・シップは彼ら皆を牢屋から救い出した。

「助けて頂いて有難うございます、私はトーラスです」
「ありがとうございます。私は、アルマイルといいます」
「ありがとうございます、ベルシーラと申します」
フォノンたちは次々に自分の名を明かし、礼を述べた。

グラファーンは皆を安心させようと微笑みながら話しかけた。
「皆さんは、もう自由です」


イオリィとラフィアが虜囚りょしゅうだったフォノンたちに食料と水を配って回る。
食料と水は、カルトのブラックプリーストのいた居室から奪い取ってきたものだ。

フォノンたちは食事を済ませると、故郷に対する心配を口にした。 

「皆さんのいた故郷はどこですか?」
エルハンストが訊く。

「私たちは皆、ローレリア鉱山のふもとにある村の者です」

「え? あのローレリア鉱山に、村があったのですか」
アム=ガルンが驚く。

「はい。鉱山の西側に。なにしろ、私たちは鉱山から出る鉱石で生計を立てておりましたから…」

ユニオン・シップの冒険者たちは皆、鉱山の西側を見たことが無かったので、村の存在に気がつかなかった。



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