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福岡八女の地域文化を体感しつなぐ宿「Craft Inn 手」のコンセプト

2021年10月にCraft Inn 手という宿を福岡県八女福島につくります。地域文化の担い手に出会うきっかけをつくることが目的です。

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(暖簾は久留米絣・提灯は八女提灯と名尾和紙のコラボレーション)

今回は、この滞在できる場所をつくった背景や、コンセプト、部屋の様子をお伝えしていこうと思います。

○目次
【背景】
・いくらものがよくても、知らないと買えない。全く伝わらない。
・僕らがやらなければならないのは、地域文化を体感できる場をつくること!
・さらに、地域文化に通じる体感をあげる価値をつくる。

【コンセプト】
・Craft Inn 手という名前とチームがどう決まっていったのか?

【部屋の様子】
・藍 indigo / 竹 bamboo/ 和紙 washi 

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【背景】
いくらよくても、知らないと買えない。全く伝わらない。
僕らうなぎの寝床は、2012年7月に九州ちくごのものづくりを伝えるアンテナショップとして、仕事をスタートしました。今年で10年目に突入ました。地域にはものづくり、農業をやる人、商店を営む人、とても面白いけど知られていない地域文化の担い手がたくさんいます。しかしながら、それを知る、ものを通して体感できる機会というのは少ないでしょう。私自身前職で地域のいろんな方達と関わりながら伝えていく仕事をしていく中で、農業・工業・商業、本当にいろんな人と関わらせていただいて、地域のことを体感的に認識していきました。

僕は18歳まで佐賀の片田舎で育ち、大学は大分に行き、福岡の筑後地域で仕事をはじめるまでの20数年間、僕はずっと九州という地にいながら、このような魅力的な、おもしろい地域の側面は全く知りませんでした。なんとなくの田舎、なにもない地域と思っていたからこそ都市へのあこがれのようなものもありました。しかし、地域には魅力的な人、こと、文化がたくさん存在していたのです。

前職のプロデューサーの方の言葉が今でも覚えていて「いくらいいものをつくっていても、いくら美味しい食べものや文化があっても、知らないと買えないし、知らせないと伝わらないよ。」と。農家の方やものづくりの方が「いいものをつくればわかってもらえる。」と言われる時、必ずそのプロデューサーの方はこの言葉を言っていました(日田在住のBunbo江副直樹氏)。いいものをつくれば売れる、伝わるというのは幻想なのです。

僕らがやらなければならないのは、地域文化を体感できる場をつくること!
僕らが10年間お店を運営してきて、情報も発信したり、企画展を行ったりといろいろやってきました。しかし、お店という場所は「もの・商品」を通した活動のみで「文化のにないて」の方々や、その周りにある環境を直に感じてもらうところまで到達できませんでした。

僕らがやらなければならないのは、ものの消費ではなく、地域文化と様々な人を繋げて、体感を増やし、地域文化や分脈を自分毎として感じ取れる人を増やすことだと考えています。そのためには、お店という形態だけでは達成できない。もっと体感を増やす場所や事業をつくらなければならない!そういう危機感を持って、今回は地域文化につながり滞在できる場所(宿)をつくるのです。

さらに、地域文化に通じる体感をあげる価値をつくる。
僕らは、ホテルをつくりたいわけではありません、あくまでも地域文化に通じる体験価値を高めたり、訪れる人たちに「ワクワクしたり、学びがあったり、発見がある場所」をつくりたい。そして、宿という滞在できる場所を通して地域のつくりてや食材、まちの様子なども知ってもらい、その先にはツーリズムを通して地域のつくりてと出会って会話をしたり、一緒につくりての工程の一部を体感してもらうことによって、より深い学びや感覚が生まれていく、そういうことを狙っています。

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【コンセプト】
Craft Inn 手という名前とチームがどう決まっていったのか?
チームで名前をどうするか?ということを半年ほど議論していきました。うなぎの寝床をつけるのか?とか「素」とか「町家」とか、いろんな要素はあがってはいたのですが、しっくりこずに月日は流れていきました。

その中で、僕らは多くのつくりてとやりとりしていて、建築や照明、家具、備品なども今回はかなり作り込みをしていき、筑後地域を中心とした九州のつくりてとインテリアをつくっていきました。そして、朝食は八女の薬膳の活動をするサヘホの中村さんと一緒に考えています。サヘホさんは地域の農業者ともつながりがあり、農業の方々、そしてサヘホさんの想いもつながっています。

さらに、もともと、この八女福島のまちづくりがはじまったのは平成3年の大型台風で建物が倒壊したことによる影響、そこで現在街並みのリーダーとして活躍する北島さん、今回蔵の建築を担当くださった建築家の中島さん、地域の方々が奮闘し町並みを少しずつ自分たちの意思によって建物の改修・修繕活動を進めてきました。今回の建物(旧塚本邸・旧丸林本家蔵)の二棟もその活動の延長線上に位置されます。

Craft Inn 手の中で未来につながる3つの手
1_家具やインテリアを担ってくれた筑後地方・九州のつくりての方々
2_たべものを担ってくれる料理人のサヘホさん、その先の農家の方々
3_建築を直してくれた建築家、施工をになってくれた方々

この建物や家具、サービスに関わってくれた方々は、自分たちの手でものをつくり、育て、未来へつないでいく方々です。この未来へつないでいくバトンのようなものが手によって渡されていく、そういう意味でも「手」というキーワードが浮上してきました。

そして、クラフトというものは、単純な手作りとかそういう意味ではなく、人の意思が加わり不確定な要素を持ちながら生み出されるものだと考えています。現代ではクラフトコーラとか、クラフトビール、クラフトチョコ、クラフトジンなどもクラフトという言葉が使われ、単純な機械的量産ではなく、担う人の意思が介在する余白が残っている状態だと思っていて、それに対して、生活者である僕らは学びがあったり、感動や喜びを感じることができる余地があると思っています。そして、その先に土地の背景や分脈など文化があります。

このクラフト的な解釈や、手というキーワードがあわさっていき「Craft Inn 手」という名前は決定していきました。

【部屋の様子】
どんな建物なんだろう?藍・竹・和紙というテーマの2棟3室
建物は旧塚本邸という、八女福島の福島八幡宮の近く、八女茶の名付け親許斐本家さんの隣に1棟2室、そしてうなぎの寝床の丸林本家の裏に蔵があり、そこが丸林本家蔵で1棟1室あります。3部屋にそれぞれ特徴を持たせました。

1_藍の部屋(旧塚本邸入口)
福岡県南部の筑後地方には久留米絣という産地があります。1800年からはじまり、今もなお20件弱の織元が存在しており、その伝統的でありながら、日本のネイティブな領域ともいっていい藍染手織りはこの地域のアイデンティティでありルーツです。その藍染をテーマにした部屋です。木を藍染したテーブルや藍染手織りのタペストリーやクッションなどをしつらえています。

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2_竹の部屋(旧塚本邸奥)
八女は筍(孟宗竹)の産地でもあると同時に、竹細工(真竹)の産地でもありました。しかしながら、今竹かごなどをつくる地元の人たちは減ってしまいました。しかし、別府で修行をした長岡さん、石田さん、竹椅子を発明したてんごやの染谷さんなどが、今暮らし制作をしており、お三方と家具や照明を、そして、僕や春口が持っている私物の竹皮のリースや、宮崎の背負いカゴなどをしつらえています。

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3_和紙の部屋(旧丸林本家蔵)
八女は手漉き和紙の産地であり、お隣の佐賀県・名尾和紙も産地です。楮(こうぞ)や梶(かじ)の木が使われています。今回は、肥前名尾和紙さんと蔵の壁から出た縄をもう一度紙にすき込んでもらい還魂紙(かんこんし)というものを漉いてもらい、本棚の下部に貼りました。そして、和紙を使った作品などもあしらっています。和紙と蔵という要素から蔵と言えば本だろうということで、ライブラリも設置します。

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本当は、もっともっと多くの方々に関わってもらいできてきた建物、備品や家具・照明の紹介をしたいところですが、これは、またしっかりしたいと思いますので、まず背景とコンセプトをお知らせしました。

2021年10月のオープンを目指して奮闘していきます。下記予約受け付けていますのでぜひサイトご覧ください!

Craft Inn 手【té】:https://craftinn.jp

UNAラボラトリーズ :https://unalabs.jp
この宿はUNAラボラトリーズ(うなぎの寝床のグループ会社活動)の文化ツーリズムの一貫でもあり、体験を通して地域文化を伝えるというコンセプトに準じます。宿というものをホテル的にとらえるのではなく、地域のものや文化、文脈に触れる滞在体験として感じてもらえたら嬉しいです。

うなぎの寝床:https://unagino-nedoko.net
うなぎの寝床は地域文化商社として、福岡県南部筑後地域で活動し、九州ちくごのものづくりを中心に、全国のものを200件ほど取り扱いして伝達しています。このCraft Inn 手のものはうなぎの寝床がセレクトしました。このものを体感できるショールームとしても感じてもらえるとありがたいです。

写真:Koichiro Fujimoto
建築・家具照明監修:リズムデザイン 
サイン:三迫太郎

ほかにも多くの方に関わって頂きましたが、ちゃんとご紹介しますのでお待ちください。笑 本当にみなさんありがとうございました。

本質的な地域文化の継承を。