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ベルリンにある調査・言語サービス・コンサル会社のアカウントです。エネルギーを中心にドイツに関する情報を提供します。投稿は管理者の個人的見解も含みます。お気軽にフォロー・コメントください。

最近の記事

太陽光発電の再考:供給過剰への解決策

興味深い記事でした。Business Insider(BI)の英語版、日本語版、元ネタのSEBの記事も参考にしながら、私の理解をまとめていきます。(トップ画像はChatGPT作) この記事は特に23年の太陽光の大量導入によって生じたカニバリズム問題が今後悪化し、太陽光発電事業者の収益を悪化させることで太陽光発電の導入が急停止することを危惧しています。 SEBはグラフを使いながらこの問題を詳しく解説しています。 以下では、この2つの記事の要点を示して、個人的なコメントを添え

    • ドイツの脱原発から1年:5つの記事から見る現在地

      トップ画像はChatGPTが作成しました。 脱原発1年でハベック氏が投稿した動画が話題にドイツ国内で最後の原子力発電所が運用を停止してから1年が経過しました。この節目に、多くのメディアが過去1年間の動向を振り返る記事を掲載しています。 この記事では、まずハベック経済大臣による脱原発1年の動画、市民の声を紹介し、5つのマスメディアによる記事を紹介します。 経済大臣の評価 経済大臣ロベルト・ハベックは、1分間の動画メッセージを通じて、原発停止後の1年間におけるドイツの主要

      • LCOLCとは?LCOEの欠点を埋める議論を

        (トップ画像はChatGPTが作成しました) 再エネコスト予測の落とし穴と新たな指標LCOLCドイツ政府の経済賢人会議メンバーであるGrimm教授が書いた興味深い論文を紹介します。タイトルは「再生可能エネルギーのLCOEは、将来の電力コストの良い指標ではない」というもので、LCOEが将来の電力コストを正確に示すわけではないという警告が含まれています。 そこで、著者らは電力需要を満たすためのコストを計算するために、新たな指標「LCOLC(Levelizd Cost of L

        有料
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        • 発電所戦略で合意

          電力システムの脱炭素化と安定供給には、再エネと電力系統を一貫して拡大整備してくことに加えて、近代的で柔軟性が高く気候に優しい発電所が必要である。このため、オラフ・ショルツ連邦首相、ロベルト・ハベック経済大臣、クリスチャン・リンドナー財務大臣は、発電所戦略の主要な要素と今後の手続きの内容について合意した。 将来の電力市場設計に関する作業を直ちに進め、特に市場ベースの技術中立的な容量メカニズムのコンセプト(いわゆる容量市場)を遅くとも2028年までに運用を開始する目標で開発する

        太陽光発電の再考:供給過剰への解決策

          2023年のドイツの価格スパイクについて

          前回の記事では、ドイツの2023年の再エネ事情について書きました。この記事では、ドイツの前日市場が極端な価格をつけた時間帯についてのデータをお伝えします。 極端な値について ここで言う極端な値とは、極端に低い時間帯と極端に高い時間帯です。 価格が低い時間帯:前日市場の1時間値の価格が0以下(ネガティブ価格)をつけている時間帯 価格が高い時間帯:化石燃料で最も短期限界費用の高い天然ガスをベースにその1.5倍の価格 極端に価格が高い時間帯:2倍の価格 Agora Energi

          2023年のドイツの価格スパイクについて

          ドイツの2023年再エネ事情について

          2023年の電力における再エネの実情について、主要な速報値が出ましたのでかいつまんでご紹介します。 ドイツの再エネ比率は50%超えドイツの電力に占める比率は3つの指標で50%を超えました。 すべての指標で50%を超えるのは初めてと言われ、本当の意味で再エネが電力の半分を占めたことになります。 これに国産の資源である褐炭を加えると、ドイツ国内の自給率は76%で、4分の3にのぼります(ドイツは原子力は輸入資源扱いです)。2022年は電力自給率が70.5%だったので5%アップ

          ドイツの2023年再エネ事情について

          紹介:実践型グリーン・リスキリング講座(欧州の脱炭素・ESG関連規制から学ぶ、日本の産業強化編)

          あけましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願いいたします。 早速ですが、私も登壇させていただくセミナー「実践型グリーン・リスキリング講座」を紹介させて下さい。 講座の概要この講座では4回に分けて、EUの産業界が注目するサステナビリティやSDGs関連のトピックとして以下を取り上げます。 フードテック ファッションと素材産業 スマートシティ サプライチェーン これらに関連してEU内で起こりつつある変化はどのようなものでしょうか? スタートアップのエコシステム

          紹介:実践型グリーン・リスキリング講座(欧州の脱炭素・ESG関連規制から学ぶ、日本の産業強化編)

          骨粗鬆症のマッチョ

          https://twitter.com/nobbypapa1948/status/1722800723287851312 戦争で化石燃料の不安定性露見が加速したことはある意味予想外でしたが、化石燃料の高騰と供給能力減少は実際15年ほど前には2030年代後半には起こるものだと認知されていました。 それがメルケルが首相就任すぐにリフキンを招いて「エネルギー転換→インダストリー4.0」をまとめた背景にあるのですが、いかんせんロシアの安価な化石燃料によって強化を図る産業界の支持は

          骨粗鬆症のマッチョ

          改定国家水素戦略の更新内容

          NWSの更新と2030年の目標像 水素とその合成物質の利用は、脱炭素化、特に2030年までに予定されているエネルギー部門、運輸部門、産業界の変革において重要な役割を果たすだろう。そのためには、投資サイクルが長期化しがちであることを考慮し、今日、そして現政権中に、トレンドを生み出す投資決定の方向性をすでに定めておく必要がある。 国家水素戦略の更新は、持続可能な、特に経済、環境、社会に配慮した水素、その合成物質の生産、輸送、水素活用技術への民間投資のための信頼できる道筋を確立

          改定国家水素戦略の更新内容

          連邦ネット庁のモニタリングレポートに関するコラムの雑感

          ツイッターでは、以下のコラムがチェリーピッキングだと話題になったようです。 この記事の問題は、ドイツは欧州の電力純輸出国であることを示すために取引結果のみを提示し、それをもってドイツはフランスに対して輸出超過と示したところ、元データは取引結果も物理フローも並べて載せてあるのに取引高しか示さないのはチェリーピッキングだ、ということのようです。 特にドイツはフランスに取引では輸出超過だが、物理フローでは輸入超過のため、再エネで不安定な系統を抱えているドイツについては物理フローで

          連邦ネット庁のモニタリングレポートに関するコラムの雑感

          もしドイツの太陽光と風力が2倍になったら?

          ドイツ政府は2030年までに電力消費における再エネ比率を80%にするという大きな目標を掲げています。この目標の達成には太陽光と風力の増強が不可欠です。本記事では、ツイッターで見つけた素晴らしい投稿をご紹介がてら、書いていきましょう。 ドイツ政府の再エネ目標現在ドイツ政府は2030年に電力消費に占める再エネ比率80%を目指しています。その鍵となるのは太陽光と風力の増強であり、ドイツ政府の目標は以下のとおりです。 2030年までの再エネ増強目標は太陽光が3.3倍、陸上風力が2

          もしドイツの太陽光と風力が2倍になったら?

          年明けの原発延長議論:口火はFDP

          2023年1月3日づけSued Deutsche紙の記事 予想通りといいますか、FDPが23年4月末に決まっている原発の稼働延長を言い出しました。 原発の延長については激しい対立の末、予定通りの22年末停止を目指した緑の党と、以前から延長を訴えていたFDPの間を取る形で、昨年10月末にショルツ首相がアデナウアー以来となる(らしい)首相権限を用いて稼働中の3基(停止済みの再稼働はなし)を23年4月までの延長を決めたところでした。 FDPは首相の決定を即座に歓迎しましたが、そ

          年明けの原発延長議論:口火はFDP

          Discussions in the Vortex of Germany's Energy Crisis(2) Soaring Prices and Supply Shortages

          In the previous issue, I noted that Germany's measures against the energy crisis were convoluted and that there was a risk that the confusion would be exacerbated by the sharpening of each party's arguments in connection with the federal st

          Discussions in the Vortex of Germany's Energy Crisis(2) Soaring Prices and Supply Shortages

          物理フローと取引フロー2

          先日物理フローと取引フローの説明をしたところ、SNSで「国際電力トレーダーが物理フローのデータを使っているそうですが?」というコメントをいただきました。 どういうことかと思って調べてみると、電力トレーディング会社がEurostatの物理フローを税関に提出する輸出入取引データとして使っているというツイートを読んでのコメントなのかと思いました。 どこの国のトレーダーにどういう質問をした結果の回答なのかはわかりませんが、トレーダーが輸出入実績に税関のデータを使うというのは、関税

          物理フローと取引フロー2

          Commercial Exchanges と Physical Flow

          取引フローと物理フローの違いはなんですか?という質問をいただきましたのでわかる範囲で回答します。 これらの用語を正確に記すと 取引フロー:Scheduled Commercial Exchaneges 物理フロー:Physical Flow となります。 そこで、ここでは Scheduled Commercial Exchanegesを計画取引量 physical Flowを物理フロー とします。 それぞれの言葉の定義はEntso-Eを参考にします。 計画取引量 各市

          Commercial Exchanges と Physical Flow

          ドイツの失敗は再エネ推進なのか?より構造的なものなのか?

          ドイツの失敗はエネルギー転換そのものなのか?ドイツのエネルギー政策は現在非常に難しい問題に直面しています。問題は2つに分けられます。 1.ガス価格が高騰している 2.ガスが十分に調達できないかもしれない ドイツがこうした自体に陥った理由については、色々な仮説があります。その中でも、「ドイツは不安定な再エネを増やしたためにバックアップとしてガス火力が必要になり、ロシアからのガス輸入に依存する構造を作ってしまった。再エネを推進したことは間違いである」という仮説が支持されてい

          ドイツの失敗は再エネ推進なのか?より構造的なものなのか?