天と地のはじめ【古事記の全文解説003】
⭐現代語訳
段落①の解説
『古事記』の書き出しは「天地初発之時」から始まります。
「発」の訳し方には諸説ありますが、今回は「ひらく」と訳しました。
高天原とは分かれた天地の天の方を指す言葉です。
人間は(死んでも)行くことが出来ない、神様だけの世界です。
そんな高天原に最初に登場した神様が、天之御中主神です。
「アメノ・ミナカヌシ・の神」と読みます。
名前の通り、高天原の中心の神様です。
次に登場したのが高御産巣日神。「タカミムスビ・の神」と読みます。
高尚なモノを生み出す神様です。
次に登場したのが神産巣日神。「カミムスビ・の神」と読みます。
神様を生み出す神様です。
神様の数え方は、1柱(はしら)、2柱です。
天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神は日本の神様のBIG3となります。
この3柱の神々は獨神(ひとりがみ)と呼ばれる特別な神様です。
獨神とは、男女ペアでなく単独で誕生したオンリーワンな神様のことです。
そんな特別な3柱ですが、その身を隠していると書かれています。
身を隠しているとは、亡くなっているという意味の婉曲表現です。
高貴な方が亡くなられた際に、「お隠れになった」という表現を耳にしたことがあるかと思います。
そうです。BIG3は登場したばかりなのにもう亡くなってしまっているのです。これはどういうことでしょうか?
これには、神道における神様の考え方が関わっています。
神道における神とはGOD(絶対神)ではありません。SPIRIT(魂)なのです。
神とは実体のない魂であって、目には見えないけど感じることが出来るもの。例えば、先祖の御霊のようなものです。
つまり、3柱が亡くなっているというのは、実体のない魂状態として存在しているということを指しているのです。
これは日本神話を楽しむ上で大事なことですが、神様は基本的に実体がなく、人の目には見えない存在なのです。(凄い神様たちは神様パワーで人型に変身したりしますけどね)
その大前提を、『古事記』は冒頭で述べていることになります。
『古事記』とは過去、いにしえの記録。即ち、先祖の記録です。
神道は死者の魂を神として祀る伝統文化です。
よって、『古事記』は先祖の記録=「神々の記録」を綴った書物といえるのです。
段落②の解説
話を『古事記』本文に戻しましょう。
実体のないBIG3の後、なにやらよく分からない感じで宇摩志阿斯訶備比古遅神が登場します。
えげつなく長い名前ですが、「ウマシ・アシカビ・ヒコヂ・の神」と読みます。
アシカビとは植物の葦のことです。若々しい植物のようなスーパーエネルギーにより誕生した神様ということです。
ちなみに今更ですが、『古事記』の編纂は7~8世紀、完成は712年です。
当然『古事記』に書かれている時代には漢字がなかった時代もあります。
なので、基本的に神様の名前や人名は当て字です。
そして、その次に登場したのが天之常立神です。
「アメノ・トコタチ・の神」と読みます。
高天原をずっと保ち続ける神様です。
宇摩志阿斯訶備比古遅神と天之常立神もオンリーワンな獨神(ひとりがみ)で、尚且つBIG3と同様に実体のない魂状態となっています。
段落③の解説
天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神のBIG3。
それに宇摩志阿斯訶備比古遅神と天之常立神を合わせたBIG5を別天津神と呼びます。
別天津神と書いて「こと・あまつかみ」と読みます。(別天神と書く場合もある/読み方も諸説あり)
特「別」な天津神という意味になります。
天津神とは、高天原で誕生した神様のことを指します。
今後、天津神とは別に国津神という神様たちが登場します。
国津神とは地上で誕生した神様のことを指します。
BIG5は高天原で生まれた神様たちの中でも特別な神々なので、別天津神と呼ばれている訳です。
それでは今回はここまでです。
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