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「しかたない」

「そこに置いていたあなたが悪いんでしょ」

いつもこうだった。
…そうか、私が悪いんか…。

言っても分かんないんだから「仕方ない」よね…。

いつからか、諦めるようになった。
回りがWiiUや新しいゲーム機で遊ぶ中、ずっと大切にしていたDSiとカセットたちを、いつの間にか私の部屋に入って勝手に取って知らぬうちに売られていた時だって、部屋の教科書に隠しておいた修学旅行のお小遣い1万円を取られていた時だって、やっとの思いで行けた九州大会の日、見に来てくれるって約束してたけど、弟の用事で結局見に来れなかった時だって、……

全部、全部、仕方ないの。
私が我慢すれば、丸く収まるんだから。

「仕方ないじゃん…だって、分かんないんだもん。」
「仕方ないじゃん…だって、弟の用事の方が大切なんだもん」

「…しかた、ない…じゃん…お姉ちゃんなんだもん、私が我慢しないと…」

「………なんで、分かんないの…、分かってよ!!」
「なんでわかんないか、分かんないよ!!」
「なんで、私見てくれないの?!」

「……あんたなんかいなければよかったんだよ…!」

ずっと我慢していたナニカが爆発して、言ってはいけない言葉をぶつけてしまった。

あーぁ、みんな泣いてる、泣かせてしまった。
ごめん……っ、ごめんなさい。

母は私に対して、一度も「お姉ちゃんでしょ」「お姉ちゃんなんだから」って口にしたことはなかった。
私が勝手に私自身に【呪い】をかけていた。

─次の日、そんな言葉をぶつけたにも関わらず、弟はニコニコしながら話しかけてきた。
きっと、その言葉をぶつけた事に対するトゲが刺さったままなのは言った私だけ。

だから、未だに「しかたない」の呪いに取り憑かれてる。
良くも悪くも便利がいい言葉。

しかたないよ、、、

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