海を守るために行動する料理人の舞台裏Vol.2
「うみとさち」シーフードアクションでは、「Chefs for the Blue(シェフス フォー ザ ブルー)」所属のシェフに、環境と労働に配慮したサステナブルシーフードの特別レシピを制作いただきましたた。Chefs for the Blueのメンバーは、日頃から水産資源の現状と未来について学びを重ね、世の中に発信を続ける、行動するシェフたちです。
前回に続き、シェフたちによる座談会をお送りします。
座談会 Part 2
参加者
佐々木ひろこ氏/フードジャーナリスト、Chefs for the Blue代表理事
林亮平氏氏/「てのしま」店主
田村亮介氏/「慈華」オーナーシェフ
平雅一氏/「ドンブラボー」オーナーシェフ
※以下、文中では敬称略
-皆さんは、Chefs for the Blueのメンバーとして、さまざまな情報発信や活動を続けているわけですが、料理人である皆さんはどのように海産資源の持続可能性に触れ、行動するようになったのでしょうか。
田村 Chefs for the Blueの活動には最初から参加していますが、それ以前はメディアで報道されているように「ウナギやマグロの数が減っている」というのを知っていたぐらい。ところが勉強会で現実を知った時に、自分の胸に石を投げられたかのような衝撃が走り、「これはまずい」と本当に思った。それが発端です。そこから、Chefs for the Blueと共に僕も持続可能性のある水産資源について考え始めました。
平 勉強会で学んだことも大きかったのですが、僕はもう少し前にきっかけがあって。銚子に越田商店さんという無添加のサバの干物を扱っているところがあるんですが、工場を見学させてもらった時に、干物にはノルウェーから獲ってきたサバを使っているというんです。工場は海のすぐ近くにあってサバも獲れるのに。で、話を聞くと、ノルウェーは今の日本と同じように昔、乱獲でサバを獲りすぎて、良いサイズのものが獲れなくなったという経緯がある。それを回復するために国全体で制限を設けて、また大きくて立派なサバが獲れるようになった。そんなサバの歴史を知ってほしいという想いを込めて作っている干物だと。その話に感銘を受けて、僕も自分のレストランで使うようになったのが、魚について考えるようになった最初のきっかけです。
佐々木 日本ではサバはすごく獲れるんですが、海外に輸出しているものも多いし、大きいサイズのサバがなかなか日本には残っていないというのはありますよね。
林 僕は瀬戸内海にルーツがあるので、漁師さんと直接お話しして、海の状況を聞く機会があって。皆さん、口を揃えて言うのが、「このままいくと必ず獲れなくなる」と。だけど、どうしていいのかわからないというのはリアルに聞いていました。実際に瀬戸内海の魚自体も目に見えて減っていっている。去年は獲れた魚が今年は獲れなくなっているというのを漁師さんや魚屋さんから直接聞いていて。危機感は募るけれど、どうしたらいいんだろう。知らないことだらけなので勉強もしていかなくてはと思い、Chefs for the Blueに参加させていただきました。
佐々木 林さんは、Chefs for the Blueが去年行ったセミナーを聞きにきてくれたんです。
林 はい。以前からChefs for the Blueの活動には興味を持っていて、イベントにも参加させてもらったのですが、そこで水産資源の持続可能性に関する具体的な数字を知ったことがすごくショックでした。現実を突きつけられて、「自分にできることがあるのだろうか」と思いながら聞いていました。
佐々木 日本料理人にとって、魚は生命線ですよね。魚がなかったら明日がない、という。
林 そうです。日本料理のメインはほぼ魚なので。この現実から目をそらすことはあり得ない。ですから、Chefs for the Blueの活動に声をかけていただいてありがたかったです。
-料理をする側のシェフが生産に対して何を考えているのか知ることができるのは貴重な機会ですね。作り手の想いのこもった素材には、シェフである皆さんも気持ちが入って料理をしやすいものでしょうか。
林 もちろんです!とても大事なことだと思っているので、僕はできるだけ生産者を訪ねて、どういう人がどういう場所でどういう想いで作っているのか知りたいですし、それが手元に届いた時には、想いのバトンリレーだな、とつくづく思っています。それはお客様にも伝わると思いますし、お客様自身も望んでいるというのを最近はすごく感じます。背景を知った上で料理することで、やはり気持ちは入りますよね。
田村 僕のお店「慈華」も、そういう想いを込めて命名しています。食材を慈しむ、というのが僕の中でも一番大事なところで、想いのある方々が漁をしたり、育てたりしたものを僕らは使わせていただいている。食材がなければ、正直僕らは何もできないですし、そんな食材を使って料理することが大前提という気がします。
佐々木 農家さんとの繋がりは、この10年ほどで皆さんすごくできているようですね。漁師さんとはこれからというところも多いでしょうか。
平 僕は漁師さんや生簀をやっている人と密に連絡を取っていまして、送ってもらった食材を料理した写真を見せたり、お客様の反応を伝えたり。良い反応があるとどうしても伝えたくなって。そうすると彼らもテンションが上がって、賄い用にイワシを沢山送ってくれたりとか、もう一緒に作っている感じ。とても大事なところで、気持ちの入った人の食材を使うと、こちらも気持ちが入らずにはいられない。そこに良い循環が生まれるように思います。
-シェフの立場から、魚を食べる人たちに伝えたいことは。
田村 僕たちは魚を扱う時に、扱う責任というのを感じています。逆に休みの日や外食する時には食べる責任というのも意識しています。ですから、皆さんも食べる責任というのを思いながら、いろいろな情報に耳を傾け、現状がどうなっているか、ということにも関心を持って、今後の食材選びをしていっていただけると嬉しいです。
佐々木 この三年半で日本の漁業法も変わりましたし、社会もすごい勢いで変わってきています。この流れをどんどん加速させて、日本の海をもう一度豊かにし、食文化を先に繋げられるよう、シェフたち一同、心をひとつにして頑張っていきます。皆さん、どうぞ応援してください。
▼Chefs for the blueの紹介記事
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