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海を守るために行動する料理人の舞台裏Vol.1

シーフードアクション「うみとさち」では、クラウドファンディングやスーパーでの実証販売を通じて環境と労働に配慮したサステナブルシーフードを特別なレシピ付きで提供しました。この企画にご協力いただいたのが、海と魚の未来を考えるシェフ集団「Chefs for the Blue(シェフス フォー ザ ブルー)」です。

Chefs for the Blueは、料理人の立場から水産資源の保全と日本の魚食文化を次世代に引き継ぐことをミッションに掲げ、3年半前に活動をスタート。メンバーであるシェフたちは仕事終わりの深夜に勉強会を定期開催し、水産資源の現状について学び、未来に向けてできることを模索し、イベントなどの様々な活動を通して世の中に発信しています。

この度「うみとさち」のためにスペシャルレシピを開発してくれたトップシェフたちの座談会に参加させてもらいました。その時の様子をご紹介しましょう。

座談会 Part 1
参加者
佐々木ひろこ氏/フードジャーナリスト、Chefs for the Blue代表理事
米澤文雄氏/「ザ・バーン」エグゼクティブシェフ
大土橋真也氏/「クラフタル」シェフ
森枝幹氏/「チョンプー」プロデューサー
※以下、文中では敬称略

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-皆さんは、Chefs for the Blueのメンバーとして、さまざまな情報発信や活動を続けているわけですが、料理人である皆さんがどのように海産資源の持続可能性に触れ、行動するようになったのか、とても興味があります。

米澤 海の現状に危機感を覚えた佐々木さんから「皆で勉強会をやろうと思うんですが、興味ありませんか?」と声をかけてもらったのがきっかけです。食材の仕入れをしている中で、魚や魚介類全般の価格がちょっとずつ上がっているなと体感していて。毎日だとわかりにくいですが、僕は2007年にニューヨークから帰って来たんだけど、その頃の原価表を見直してみると、今とかなり価格が違うんですね。気づいたら魚の値段が上がっていて、その裏側には海産資源の減少があると。そういうことが勉強会をする中でわかったわけです。ですから、自分たちの知識レベルを上げていきながら、啓蒙活動じゃないですけど、この現状が世間にもう少し認識されて、何らかの行動に繋がればいいなと思っています。

大土橋 魚の価格が上がっているのは僕も実感しましたね。あとは数が減っている。チョイスできなかったり、思うように仕入れができなかったり。でも危機感があるというよりは、少しずつ魚が減っていることをなんとなくそうなのかな、と感じていました。ずっと同じところにいると微妙に変わってきている変化にはなかなか気づきにくいんですよね。

森枝 僕は2014年に店を始めた頃、自転車に乗って築地によく買い出しに行っていたんです。そこで仲良くなった人から「今は魚がない、全然魚がない」と言われたり、値段も高かったり、というのがあって、割とすぐに産直に切り替えました。そうしたら、今度は同じ魚種しか獲れなかったり、産直なのに「今日は全然魚が獲れなかった」と言われたり。そこで、今度は漁師の人に「皆がまだあまり使っていなくて、困っている魚はない?」と聞いて回って、ブラックバスとか、扱いづらいものを中心に使うようになりました。そういう魚を料理することが楽しかったので、僕の場合は、獲れなくなったことで変な魚に触れる機会が増えて面白いなと思っていたということころはありましたね。

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-シェフだからできること、逆に歯がゆく思うこともあるでしょうか?

森枝 そうですね。少しずつ活動を広げていますが、もっとインパクトを与えられるような規模の大きなことをしなくては、と思ったり。世の中の認識が変わっていって、初めてできることもあると思いますが、水産資源の持続可能性に関する現状の数字を見ると、「まだまだ頑張らなくては」という気持ちと「大変だな」という気持ちが交互に来る感じですね。

米澤 これまでに培った経験や技術、アイデアを使って、あまり人が使わない魚、世間一般ではあまり美味しくないと思われているような魚を美味しく料理する、それがシェフにできることなのかな、と。

森枝 そうやって新しい価値を一緒に作っていく、みたいなことならできそうですよね。

米澤 食べられない魚を食べましょう、と言っているわけではなく、いわゆる雑魚と言われるような魚も沢山あるし、そういう魚をいろんな機会に使うことによって、やがてマーケットになじんでいく、ということも将来的にあるんじゃないかな。

佐々木 サステナブルな魚は使いたいけれど、そこでいつも壁にぶつかるのが、サステナブルなものが市場にないということ。海外はかなり前から資源管理の進んでいる国が多いので、選択肢としてサステナブルなものも沢山あるけれど、日本にはそれがない。

米澤 ただ、日本の場合は世間で食べられる魚種が多すぎるというのもあると思う。地域性も含めて。僕が長くいたニューヨークでは、お店で出てくる魚種なんてそれこそ10種類ぐらい。そのぐらいしか出回らないから、食べる魚が決まっている。そこが日本とは違うところですね。日本では地方に行くと、「これがスーパーに並ぶんだ!」っていう魚がいっぱい。だから管理が難しいというのもあるし、その分、未来の高級魚を発掘できる可能性もあるかもしれない。

大土橋 日本は魚の大きさによっても名前が変わります。コハダやブリもそうだし、出世魚っていう言葉があるぐらい、一つの魚を大きさの違いによって楽しむことが食文化として確立されている。魚のそれぞれの大きさ、タイミングで美味しい食べ方を見つけてきた文化からすると、資源管理というのが非常に難しいとは感じますね。ただ、先ほど話題に出た、いま使われていない魚の中にもまだ見ぬ宝はありそうだし、私たちも実際にそういう魚を賄いで食べて、その可能性を皆で話し合ったりする機会は増えました。そんな魚を送ってくれる仲買さんも増えています。だから、知ることから一つひとつ始めていけば、前に進んで行けるんじゃないかと思っています。

シェフたちの熱い想いが伝わる座談会、いかがでしたでしょうか。次回は引き続き座談会Vol.2をお届けします。


▼Chefs for the blueの紹介記事はこちら


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