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小説

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私の書いた小説をまとめています。
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#掌編小説

【掌編小説】声 to 声

 良く晴れた夏の暑い日に、ぴこ、と音が鳴ってメッセージが届いた。それは私が登録していたア…

有未
3日前
3

【掌編小説】雨降りの日に

 さあ泣けと君が映画を押し付けて来る。僕は「そういうことじゃない」とそれを押し返す。君は…

有未
1か月前
2

【掌編小説】「遠くの空の下で」

  ――君に伝えたメロディーが、今も何処かで響いていますように。  話し相手を探していた…

有未
4か月前
19

【掌編小説】寄り添う花

 土地を相続したの、これでお金の心配をしないで小説を書くことに集中出来るわ。そう言って、…

有未
5か月前
26

小説のかけら 5【ただ月の光が見下ろしていた】

 人の話を真面目に聞く気はあるのかと、ついに彼が私のイヤホンをそれでも気を遣ったのか片方…

有未
7か月前
2

【掌編小説】月と太陽

 ――時々、君が闇夜に沈んで溶けて行く。  付き合って五年目になる彼女からの、メールの返…

有未
7か月前
16

【掌編小説】君を探して

 僕は、君を探して夢をみる。いつも、いつまででも。    ――ふと、思った。気付いた、と言った方が正しいのかもしれない。何故、夢の中の君は僕と会う場所を高架線の下にするのだろう。  日陰が良いから……だろうか。僕が君の元に行く時、空を見上げれば抜けるような青空で、真っ白で厚みのある雲が幾つも浮いている。蝉の鳴き声もしたような気もする。アスファルトが、じじじ、と焼ける音が聞こえそうな程に太陽の熱を受けていたかもしれない。  君は暑い季節が苦手だったから、日陰――高架線下

【掌編小説】今、此処にある雫

「今日が重たいんだ」  吐き捨てるように君が言った。僕はそれを聞きながら中空に浮かぶラグ…

有未
10か月前
3

【掌編小説】秋の風

 朝が来た。私にとってはいつも通りの朝だ。だが、今日はとても気持ちのいい風が吹いている。…

有未
1年前
11

【掌編小説】夕暮れ公園での約束

「これ、チョコチップクッキー」 「お、ありがとう」  今日も一花は俺にクッキーを焼いて持っ…

有未
1年前
17

【掌編小説】もう少しだけ

 明け方の白い月を見ていた。まだ寒い時間。窓辺に座っていると何処までも行けそうな気がした…

有未
1年前
7

【掌編小説】恋に落ちた話

 ――いわゆる、恋ってやつ?    私の思いってやつを友人に話したら、そう言われた。  恋…

有未
1年前
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小説のかけら 7 【居場所を探して】

 壊れかけのノイズが耳から遠くで鳴る。壊れかけの愛はとても脆く儚く悲しかった。夜明けの空…

有未
2年前
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小説のかけら 6 【君はまるで太陽のように】

 切り取られた真夏の空が浮かぶ。僕はそれをぼんやりと眺め、流れる汗を拭うことなくそのままにしていた。  また来たの、と声を掛ける女性がいた。見遣るといつもの女性が呆れ顔で僕を見下ろしている。女性は遮光カーテンを素早く閉めてエアコンのスイッチを入れる。真夏の空は姿を消し、代わりに目に入ったのは女性が差し出したビニールの袋だった。がさりと音を立てて僕にずいと差し出された袋の中には、夏に相応しいチョコミントのアイスクリームがふたつ仲良く入っていた。食べるでしょ、とぶっきらぼうに言