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海野まなみ
2022年9月16日 17:54
彼から「今日、離婚届を提出しました」とのLINEがあった。わかりました。とだけ、返信をした。あっけない幕切れ。あんなにケンカして、たくさん傷ついて、何度も何度も彼を呪った。今だって、全てを納得してるわけじゃない。悔しさと寂しさも、まだ残ってる。それでも、もう過去を振り返るのはやめにしよう。今は「離婚」に、必要以上にセンシティブになっているだけ。傷ついた心は、時間
2022年9月15日 17:26
「病院から連絡がありましたので、折り返し電話してください」とだけ、彼にLINEをした。数時間後に「わかりました」との返信。病名はなんとなく察しがつくけど、あえて聞かなかった。そして、これで全てはおしまい。サイン済みの離婚届は、すでに彼に渡してある。今日か明日には提出するのだろう。今になって本音をいえば、私は離婚はしたくなかった。ずっと死ぬまで、幸せな結婚生活を送りた
2022年9月14日 17:21
彼の机の上に、無造作に置かれている健康診断結果を見つけた。いくつかE判定がある。多分、これだな。彼の親族は、闘病しながら長生きしていた。彼のお父様も。彼のお祖父様も。彼はそれをとても気にしていて、もし自分が同じような状況になったら「安楽死する」とよく言っていた。日本ではそれは難しいんだよ、私、安楽死の許可にサインするのは嫌だよ〜。まだ仲が良い頃に、笑って話したのを思い出
2022年9月13日 17:50
それは、行きつけの病院からの電話だった。「ご本人様に何度も電話したのですが通じなくて、 緊急連絡先に奥様の電話番号が書かれていたので・・・」・・・そうか。私の連絡先はあちこちに登録したままだ。少しづつ、変えてもらわないといけないな。そんなことを考えながら、病院からの話を聞いた。精密検査の日程変更だった。え?精密検査?なんの?けれど冷静を装い、話を合わせて聞き出し
2022年9月12日 17:47
今日、やっとこの家を出ることができる。全く寛ぐことができなかった家。嫌な思い出しか残っていないから、悔いがないわ。彼は珍しく出掛けている。もう、私と顔を合わせるのが嫌なのかもしれない。それならそれで結構だ。私も昨晩は言いたいことを言ったけど、どうせ彼はほとんど理解していないだろう。まあ、それも彼の人生だ。忘れ物がないか、ぐるっと部屋を見回す。その時だった。私の携
2022年9月11日 17:54
あの女を切らない限り、あなたは幸せになれないの。でも、あなたからはもう切れないよね。今回こそ、絶対に連絡してはいけなかった。私との離婚が、最後の砦だったんだよ。これが、あの女の復讐だよ。自分に依存させて、あなたを幸せにさせないの。考えすぎだって思ってる?女が原因で、人生間違う男はたくさんいるよ。最初はみんな、軽い浮気から始まるんだよ。あなたは女という生き物を舐め
2022年9月10日 18:42
あなたは、恋愛感情がなくなっても、あの女との縁を切る気はないよね?出張ついでにこの女とデートするのは、楽しみの一つとして定着してるもんね。かといって、あの女と再婚する気はないんでしょ?あれは不倫だから楽しめたんだよ。あなたもそれはわかってるはず。この先も、腐れ縁みたいにズルズル続くと思うよ。けれどこの先、例えばあなたに、好きな女が出来たとする。真剣に付き合っていたとして
2022年9月9日 18:29
女はね、自分を見捨てた男を絶対に許さないよ。自分が幸せになってその男を忘れるか、もしくは呪って復讐するか、どちらかだよ。復讐と言ってもね、別に犯罪行為するわけじゃないよ。この女はね、あなたを、自分に依存させようとしてるんだよ。この意味わかる?あなたもこの女に対して負い目があるから、会ったら優しくするでしょ?お金だって出すでしょ?最初は女も遠慮気味かもしれない。でも、その
2022年9月8日 18:01
それなら私も親切心で一つだけ、あなたにアドバイスするよ。あなた、またあの女と連絡取ってるでしょう?もちろん今更、私が口出すことじゃないんだけどさ。どうせあなたの方から「離婚が決まった」って連絡したんでしょう?大体わかるよ。でもさ、あなたから一方的に見捨てられた女が、あなたからの連絡に再度応じる意味、わかってる?自分に魅力があるからだとか思わないでよ・笑自分を見捨てた男と
2022年9月7日 17:49
「色々迷惑かけてごめん・・・」サインをした離婚届を渡した瞬間に、彼は言った。最後はキレイに終わりたいのだろう。カッコつけたい彼の気持ちはわかるけど、今になって謝られてもね。「憎み合って別れたくないからさ・・」・・・憎み合う気はないけど、キレイゴトを言うつもりもないよ。「マナミには幸せになってほしいと、本気で思ってる」・・・あなたの親切心に水を差すようだけど、余計なお世話
2022年9月6日 18:16
前回は、離婚届を目の当たりにしてみっともないほど動揺してしまった。そこから逃げ出したくてしょうがなかった。彼がサインを急かすのにも、腹が立った。たった一枚の紙切れで、人生が変わってしまう。思い描いていた結婚生活には程遠く、悔しさと無念があふれ出た。こんなはずじゃなかったのに!でも、どんなに頑張っても、どうにもならないこともある。それを痛いほど学んだ結婚生活だった。次
2022年9月5日 17:20
彼が出張から帰ってきた。すでに私の荷物がないことに、一瞬驚いたようだったけど、全てを悟ったようだった。「荷物運んだのか。いつから新居に住むんだ?」明日の朝にはここを出ていくよ。あとは私の布団を運ぶだけだから。「そうか。 あ、昨日メールしておいたけど、保証人の件は無事に外れたから」うん、見たよ。私は敢えて、ありがとう、とは言わなかった。「じゃあ、これ」彼は離婚
2022年9月4日 16:01
彼から「出張が数日伸びます」と事務的なメールが届いた。現地で誰と何をしているのか、もう考えないことにした。この機会に、引っ越しをしてしまおう。この家にいるから、いつまで経ってもグズグズ引き伸ばしてしまうのかもしれない。大家さんに交渉したら、日割りで入居できるようになった。新居はここから車で1時間弱。大型家具や家電はないから、自家用車で3往復もすれば、ほぼ運び込めそうだ。
2022年9月3日 17:26
あれから一言も話さないまま、翌朝、彼は出張に出かけた。結局、書きかけの離婚届を持っていったのかはわからない。まさか私のサインを偽造してまで、勝手に出すことはないだろう。彼がいなくなって、改めて考える。離婚に迷いはない。むしろ、早く楽になりたいくらいなのに。けれど目の当たりにした「離婚届」に動揺した。それを見た途端、ぎゅっと胸が締め付けられて、思わず涙が込み上げてきたのだ。