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自分にかけられた呪い

自分にとって音楽は何なんだろう。ずっと考えながら生きてきた。楽器を触っていない日があると何となく落ち着かないし、今までの人生で音楽を聴いていない日なんて1日もなかった。中学高校とまともに楽譜も読めなかったくせに生半可に耳が良かったせいでピアノを弾くことができ、街中で流れるBGMだったりテレビで流れる音楽だったり気に入った音楽を少し覚えては適当な伴奏をつけて遊んでいた。楽器を弾くのが好きな一方で楽譜を読んだり楽典の勉強をするのはとても退屈だった。全然続かなかったから教科書はいつまでも埃をかぶったままだ。いまだに五線譜の上の音符は数えないとわからない。理論の話をされるといつも申し訳ないような気分になってしまう。そんなこんなでずっと音楽を聴くのが好きだった割にそれで生きていけたらとかは考えたことが全くなかった。そもそも中学高校はバリバリの運動部に所属していたし大学だって普通の理系学部だ。大好きなジャズピアニストやロック歌手は僕にとって全く別の世界に住む人間だった。かといってあなたは音楽が趣味なのね、と言われると強い違和感を覚えた。自分にとって趣味は何か別に主としてやっているものがあってそれの息抜きのためになされるものだという認識があった。よく電車の広告で「老後は趣味を見つけましょう」とかあるじゃん! なんか時間あるけどとりあえずやっとくかみたいなやつじゃないの? 自分にとっての音楽はもはややればやるだけで苦しいものになっていた。練習してもそう自分の思うようには弾けるようにならないし、うまくいった!と思ってもその演奏が相手に全く響かなかったりする(もちろんその逆もあるけど)。よく実業家かなんかが「好きなことを仕事にしろ」とかほざいてることがあるけどもはやこれが好きなものなのかさえわからない。いやもちろん楽しい時もあるけど好き、というにはもうその沼にハマりすぎた感があって何とも言えない。趣味と言い切ってしまえるほどの楽観さはないしかといって音楽でやっていくぞ!みたいなストイックな感情もいまだかつて抱いたことがない。何なんだろう、これ。やればやるほど沼にははまっていくし気づいたら自分の専門科目なんてそっちのけでとてもじゃないが成績表には目を通す気分になれない。これだけやったからといって人に目に見えた何か成果があるわけでもない。一年に何回かライブをして細々と曲を作る毎日。最近ではもはや呪いと呼ぶことにしている。幼い頃からなにか定職を見つけてそれでしっかり生きていきなさいと祖父母に言われてきたからだろうか、今はそんな金言を提げながら就職活動しようかなーみたいな気分で職探し(もどき)をしているけど結局めんどくさくなって適当にピアノで曲を作ったりしている。やり始めたら始めたで「めんどくせーもう二度とピアノの練習なんかするかよ」とか思う日が定期的に来るのだがそれでも何となく鍵盤は触っていないと落ち着かない(練習はしないけど)。全く迷惑でヘンテコな呪いにかかったものだと思いながら今日もイヤホンのスイッチをつけた。

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