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「クリーピー 偽りの隣人」

だいぶ前に劇場で別の映画を観に行った時の予告編で見て、ものすごく気になっていたものの、結局劇場にいけず、やっと鑑賞できました。

ネタバレしまくって感想を書くつもりですので、まだ観てない方はぜひ鑑賞してから戻ってきてください。

北九州監禁殺人のような事件を元におそらく作られたであろう、何者かわからない他人がある日家を乗っ取り、そこの家族であるかのように暮らし続け邪魔になったものは家族に手を下させて、遺体の処理もさせて、逃げられない状況を作り精神支配をしながら奴隷のように金の工面をさせて暮らす、サイコパスの話。

園子温の「愛なき森で叫べ」も同様の作品ですが、クリーピーはグロテスクさはあまりないので割とすんなり鑑賞できます。

西嶋さん演じる主人公高倉は元警視庁捜査一課の刑事で、犯罪心理に詳しかったことからの驕りにより、サイコパスの犯人との交渉で失態を犯し退職。大学で犯罪心理を教えている。この、「俺はできる」心理でダメになった男性をどれだけ観てきたか。ドラマで。笑 人間の性なんでしょうか??試さずにはいられない己の力。そして大爆死。ちなみにこういうキャラクターはなんで男性が多いんだろう。テストステロンの所為なのか、、、。悲しいぜ。

香川照之がとにかく圧巻。サイコパス演じさせたら右に出るものはいないのではないかとすら思うし、本当にサイコパス要素もってるのかな?と疑いたくなるほどにコワい。その昔、東京ラブストーリーで、カンチをリカから卑怯な感じで奪った里美を演じた有森さんが実生活において、知らない人から道で石を投げられたそうだ。今の私もそんな感じで、香川さんがやばい人に思えてしまう。そこまでの説得力で観る者の心を動かした演技力は素晴らしいと言わざるを得ない。

ただ、突っ込まざるを得ないところがいくつもあって、どうしても書きたかった。役名が思い出せないので俳優さんの名前で語ります。すみません。

1)引っ越し先のお隣さんへの挨拶で手作りチョコをプレゼント

え?ありえなくない??わかりません、まあいろんな感覚の人が世の中にはいると思うけれど、いくら料理研究家ほどの腕前だろうと、初対面の人に、手作りのもの渡しますか??ファーストコンタクトで??

私は正直気持ち悪いので食べられません。お友達になったら喜んで頂くけど、どんな人かもわからない初めて会った人の手作りなど何が入ってるかわからないし、自分は平気でも相手がどう思うか考えないのはちょっとびっくりかも。いくら竹内結子ほどの美人でも、無理です。初回はせめて市販のものをお願いしたいです。もしくはいらないです。怖いよ。

2)挙動のおかしいお隣さんで、旦那にも関わらない方がいいと止められてるのに、更に手作りシチュー持参

もうファーストコンタクトの、手作りチョコレートで挨拶の段階で既に言動がおかしくて、「感じの悪い人だった」「関わらない方がいいよ」と夫婦間で会話したにも関わらず、翌日大量のシチューをボウルに入れて持参する。そこまでして仲良くなりたいの?隣の人、ヤバイ匂いしかしないのに?私は割と警戒心が無駄に高い方なのでちょっと理解できなかった。そしてこの時点でもまだ結子は隣の奧さんに一度も会ってないのに。私が奧さんならだいぶ引くかも。知らない人からの手作り波状攻撃。怖いよ結子。香川さんだけじゃなくて、私は結子が怖い。

3)シチューを持参した時、家の中の違和感に気付きながらも未だ警戒心がない結子

シチューを持って玄関に入ると、家の中の雰囲気が異様。もう、気付きませんか?わからないかなー。私なら何があるかはわからなくても気持ちの悪さ感じたら絶対近づかないし触られるような隙を与えないけどな。この作品の残念なところは、結子が香川さんに支配されるまでの描写が弱いところ。後半に実は薬漬けにされていて、元警察官の夫には言えない、、的な描写があるけれど、それだけではちょっと説得力に欠けるなー。せめてどうやって支配されたのか種明かしシーンがもう少し欲しかった。だってどう考えても一回打たれただけならこいつヤバイから警察いこう!打たれたのは私の意思じゃないし。こんな事してくるやつは絶対ヤバイって思ってすぐ警察か夫に言うと思うんだけど、、、。どんな薬なのかも説明もないし、どうやって入手していたのかもわからないまま!だからこの設定の説得力が私には足らなく感じました。イライラします。今思うともしかして、違和感があるのに接近してしまうほど寂しかったという事で、結子の精神状態は始めからやばかったのかなー。

4)警視庁捜査一課の人間が捜査中でない家で無関係の人間と爆死したのに捜査が甘すぎて冷める

いやー。どう考えたって異常でしょ?捜査一課の警察官が爆死?住宅街で?知り合いの家でもないのに?東出が借金抱えてたのはたまたまなのか、香川さんが東出を捕まえてから金借りたのか。だとしたら近々の借金は事件の匂いしかしなくないですか??一般の住宅であの規模の爆発もおかしいし。こんな変な状況で警察官が亡くなったら、もう少し真剣に捜査しませんか??お偉いさんがきて西嶋さんに話聞くけど誰一人香川さんを疑ってない。うーん警察ってそこまで甘いかな??流石にもう少し優秀だとおもうんだけど、、、。元捜査一課の刑事だった西嶋さんのいう事を誰もあんまり信じないのもどうなんだと。

5)「あの人お父さんなんかじゃありません。」発言を一旦持ち帰って忘れる

西嶋さんに隣の女の子が「あの人、お父さんなんかじゃありません。知らない人です」と告白する。それでもとりあえず放置。え??嘘でしょ。一瞬二人が肩組んだりしたのをみて、それだけで「なーんだ普通の親子だ」って信じるか??衝撃発言だし。告白したのも何かに怯えて隠れながらだったところを見ると、もっと早く手を打てたんじゃないの?と焦れる。それから川口春奈が以前の事件について話す中で隣人の水口の家を調べ、さらに水口も殺されていたことがわかって初めて「お父さんじゃありません」が気になりだす。遅い。遅いよー

6)明らかに隣人がヤバイと気づいてるのに、日中家に居る奧さんをほったらかし

一緒に捜査してて、唯一隣の香川さんが怪しいから調べてと打ち明けた東出が、さらに隣の田中さんちで爆死したのに、奧さんになにも説明しないで家に放置。警察官じゃないから秘密の保持とかそういう規則ないのに。あきらかに様子のおかしい結子も「どうしたの」「なんでもない」のワンターンでほっとかれる。薬漬けで暑い結子は扇風機と仲良し。普通そんなヤバイ奴が隣の家に居ると思ったら、とりあえず実家に返すかビジホ送りとかするだろ。ほんとに元警察官ですか??危機感なさすぎない??

7)絶対にヤバいとわかっている人の家に、おじさん一人で踏み込ませる

東出も一応捜査一課の警察官なのに、サクッと殺されてる事を思えば、あんなひょろひょろのおじいさん一人で踏み込ませないでしょ普通。アメリカの刑事ドラマ見てると、二人でタッグを組んで慎重に踏み込むのが定石だから、こんな無計画な状況見てて殺してくださいと言わんばかりで目も当てられない、、、。一旦自宅を確認してから、二人で踏み込みましょう!と提案するのが普通じゃない??繰り返しますが西嶋さんは、ほんとに元捜査一課だったんでしょうか。。。オーマイガッ。

8)ここまでうまく人を支配下に置いてきた香川さんが、西嶋さんに銃を渡すのが早すぎる

うーん。わずか1〜2ショット(時間の経過はわからないが、警察のお偉いさんが行方不明な事を考えると数日は経っていないはず)の薬だけであれだけ敵愾心を持っていた西嶋さんに銃を渡すのは、いくらなんでも甘くないですか?そこがあからさますぎて「あーこれで終わりかー」とうっすらわかってしまうのもちょっと残念、、、。

<まとめ>

あえて説明をせず、観ている方に想像させるように作ってあるのかもわかりませんが、私には結子の心の隙間がよくわからなかったし、どうやって支配されたのかがすごく興味があったし、そこがこの事件の恐ろしさだと思うのですが、その辺の描写は少なくて残念でした。その辺の描写でいうと「愛なき森で叫べ」の方が細かかった。でもその分吐き気がするけどね!!リアルな感じでとにかく不快感の塊でゾッとします。

香川さんの恐ろしさには脱帽でした。あと西嶋さんが、犯罪心理学への興味が暴走して被害者である川口春奈に対して「おもしろいですね」なんて他人だから言える失礼な発言をしつつも、自分の家に起きていた事には全く対処しきれなかったのも皮肉だった。

香川さんが死んだ後の女の子の異様なテンションはなんかリアルな気がしました。抑圧されていた者の突然の解放。異常な高揚。

料理をしている結子の後ろで揺れるカーテンの影の不穏さとか、大学で川口春奈が事件が起きる前の事を回想する後ろで鳴る、ゴー、、、ザザザ、、と何かを引くような音、ただの生活音なんだけど、不吉な感じで、隅々まで不安を掻き立てる小さな技は、上手いな〜!!と感動しました。

それからトップの写真の食事シーンで西嶋さんちで香川さんが、ビスケットみたいな何かをボリボリ食べながら歩いて話してたのも、サイコパス味がすごかった。ヤベー奴っぽさ。やだなーこれされたら。

振り返って思い出すのは香川さんの怖さでした。

⭐︎6点(10点中)



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