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「そして、ただ暗闇だけが残る」

「そして、ただ暗闇だけが残る」

悲しみを火にくべて
夜道を歩き出しながら
ふと、財布を忘れてしまったことに気がつく
けれどもう後戻りもできず
そのまま歩いていくうちに
結果としてこれでよかったのだと
私はもう何も持たないのだと思いなおす

行く手には人がいるだろうと思ったのに
街灯の下、群れているのは獣ばかりだった
求めることはやめようと思った矢先に
こうして求めては裏切られる
戒めなくてはならない
私の希望はもう死んでしまった

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窓

 あの頃窓の外にあった快活なざわめきは、今も同じように窓の外にあって、私はここで彼らの声を聞いている。遠くの声の美しさ、近づく足音、きしむ窓、私は溜め息をついてまた筆をとる。起こらなかった事事の余韻。

 あの踊りの輪は、おまえのためのものではないんだ。だけどおまえはここで、木靴を履いて踊ることだってできる。ただ、やらないだけさ。床が傷むし、音を出すと大家が嫌がるからさ。
 なだらかな午睡の中で、

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雲の速さにおびえて
顔を伏して歩く子ら

こんな天気では獣たちも干からびていくだろう
私たちはどうしてこんなに途方に暮れているのだろう

吹き飛ばされた人人を
何もできず見送ることにさえ
私は罪を感じなかったのに
今このなんでもない時になって
私はすべてを贖いたいと思う

風の吹くことを

私はおまえに謝らなくてはいけない

空の高さを

扉をしめて

扉をしめて



うしろ手に扉をしめて
手さぐりに歩きだすと
扉の向こうで
ざわめきが遠く聞かれた

私はおまえを置いていく

はだしの足から
心の底まで冷えてしまった

私は自分と暗闇との区別がつかない

足取りとともに
私はこころをなくしていった

私はそれでも
歩をゆるめることはなかった