真面目な人 1/3 〈全三回〉
短編小説
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二次会の会場となったスナックは、三十代のとば口に立ったばかりの男女二十二名がなだれ込んだことでほぼ貸し切りの状態になっていた。一般の客もいないわけではなかったが、いい大人が羽目を外したときの無遠慮な話し声や笑い声、普段ならこの店ではあり得ない四股を踏むようなどすんどすんという音が床から伝わってくれば、すみやかに会計を済ましてドアの外に消えた先客たちの判断は賢明だったろう。同窓会からの流れでクラス毎に二次会をやることになり、断る理由のない夏夫は参加