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短編小説集

49
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#純文学

目次の代わりに

 noteに投稿した自作の「短編小説」を、カテゴリー別に分けてみた。どんな小説を書いているの…

45

愛しい顔

短編小説 ◇◇◇  雨の日にお墓参りをした記憶がある。お盆の十三日だった。  わたしがこ…

海亀湾館長
3週間前
51

犬を連れた奥さんの犬の行方

短編小説 ◇◇◇  アームに取り付けたWebカメラを天井近くまで伸ばし、真下に向けたまま狙…

64

皮のない葡萄

短編小説 ◇◇◇  黒のチェスターコートの下は裸なのだから、身支度に時間はかからない。襟…

51

マリー・セレスト号のしつらえ

短編小説 ◇◇◇  妻が今日から三日間、里帰りで家を留守にする。  おれは仕事の都合もあ…

46

耳の婚活

短編小説 ◇◇◇  市の中心にある城址に作られた公園は全国でも名高い桜の名所になっていて…

45

間男のでんぐり返し

短編小説 ◇◇◇  誰に誓ってもいい。疚しいところはまったくない。恥ずべき行為は何一つしていない。隅永孝策は、自分の股ぐらから朝焼けの名残を留めた白い空を見上げながら、己に言い聞かせていた。  要するに、自分は清廉潔白であると言いたいのだが、このような事態になったのだから、落ち度はあったのだろう。悔しいけれど、それは素直に認めなければならない。それにしても、これは何だ、どういう状況なんだ、とでんぐり返りのような体勢のまま隅永は思う。  そもそも、不忍池妖香の相談に乗っ

窓に立つ足

短編小説 ◇◇◇  櫛野静一は普段の生活では滅多にコンビニを使わなかったが、釜玉うどんを…

66

半月たちの哀歌

短編小説 ◇◇◇  寺林涼子は職員室にある自分の机に置いてあった二つ折りのメモを見つけて…

31

木星の翅を連れて

短編小説 ◇◇◇  真夜中に冷蔵庫の扉を開けたら、中に蛾が止まっていました。大きな蛾です…

36

鶏小屋の夫

短編小説 ◇◇◇  夫が激しく私を求めてくる日は、決まって夫が鶏小屋に行った後のようだ。…

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真面目な人 3/3 〈全三回〉

3  つづら折りの暗い参道を車で上る。神社は小高い山の中腹にあり、全体が霊山になっている…

14

真面目な人 2/3 〈全三回〉

2  以前から夏夫は、男であれ女であれ異性の特定の部位に性的魅力を感じることは、相手の身…

18

真面目な人 1/3 〈全三回〉

短編小説 ◇◇◇ 1  二次会の会場となったスナックは、三十代のとば口に立ったばかりの男女二十二名がなだれ込んだことでほぼ貸し切りの状態になっていた。一般の客もいないわけではなかったが、いい大人が羽目を外したときの無遠慮な話し声や笑い声、普段ならこの店ではあり得ない四股を踏むようなどすんどすんという音が床から伝わってくれば、すみやかに会計を済ましてドアの外に消えた先客たちの判断は賢明だったろう。同窓会からの流れでクラス毎に二次会をやることになり、断る理由のない夏夫は参加