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ロスジェネはゆく

「就職氷河期世代」の就労や社会参加の支援に17億円の予算がついたらしい。
オリンピックの招致時の開催予算の見積りが7340億円で、最終的な開催経費が1兆4530億円。
なんだか悲しくなってしまう。

就職氷河期世代=ロストジェネレーションと呼ばれた私たちの世代は、バブルの恩恵を受けず、だけどバブルを知っている世代やもっと上の世代からは同じ価値観を求められた世代だ。
下の世代からは、「こんな社会を作ってきた上の世代」として見られている世代でもあると思う。

私はいわゆる「王道」を歩まなかった。
大学卒業に合わせた新卒の就活はしたことがないし、初めて就活をしたのは息子が小学校に入ってからだった。
就活と言っても探していたのはパートかアルバイトだったのに、それでも仕事が見つからないことに惨めさを感じた。
面接に行ってあからさまに、専業主婦で仕事しなくてもいいんじゃないですか?と言われたこともあった。
今考えるとその人の人間性を疑うけど、その時は仕事経験がない自分が恥ずかしかった。
あの時はまだ、自分以外の自分の世代の人は「王道」を歩いていると思っていた。
「王道」がなくなっていたのが現実だったのに。
何とかかんとか潜りこむようにアルバイトを始め、何度か仕事を変わって、思えばいろんな場所、いろんな雇用形態で働いたなと思う。

去年仕事を辞めて、しばらくのお休み期間を経て、今年になってモゾモゾと就活を始めた。
ハローワークに行くと、就職氷河期のための専用窓口ができていた。
地方自治体は就職氷河期世代向けの求人を出していることも知った。数人の募集にものすごい数の人が応募しているらしい。
若者サポートステーションが対象にする年齢は、ロスジェネ世代の年齢上昇に合わせてどんどんあがって、今では49歳までになっている。

自分の生きてきた時代、これから生きていく時代。
この2年、社会全体の働き方が変わってきていること。
自分の年齢。
私は、正規雇用の仕事は探さなかった。

去年辞めた職場は、仕事自体はやりがいはあったけど、組織も人間関係もぐちゃぐちゃで、正職員はみんなどんどん体調を崩して辞めていった。
辞める時に調べたら、何十年も働いた人は退職金もたくさんもらえるけど、10年働いたくらいではほんのちょっとしか退職金なんてもらえないこともわかった。
一方で、社会保障があることのありがたさを感じた無職の半年間ではあった。
年金も、健康保険も、全額自費だとそれだけでものすごい負担で、それなりの収入がないと自費負担の社会保障費に生活が蝕まれる。
国民皆保険は絶対に守りたい制度だと思っている私でも、健康保険料が引かれた通帳を見ると気持ちが沈んだ、

この機会に、とりたかった国家資格にハローワークの高度人材育成訓練制度を使って挑戦することも考えてたけど、倍率も高くて不合格となり、これは働きなさいということだなと受け取ってくるっと方向転換して、気を取り直して、就活をスタートした。
ハローワークで受けたキャリコンで、これまでの経歴を洗い出していたのが履歴書や職務経歴書作りに役に立った。
職歴だけじゃなくて、ボランティア歴や子育て経験も自分の強みになることもリフレーミングできた。
とはいえ、一ヶ所に応募するのにもけっこうな気力を使う。
履歴書と職務経歴書。紙にしたらほんの2枚。
その2枚を書くために、自分の引き出しをあちこち開けて、本棚をひっくり返し、数行に伝えたいことを込める。
応募先によってはテーマ作文を書いたこともあった。
そうやって書いた書類を送って、書類段階で通らない時のがっかり感。面接で通らない時の脱力感。
自信喪失して、暗く落ち込んで、瞬間的に何もやる気が起きなくなる。
新卒の就活で、大学生が何社も何十社も受けるという話を聞くけど、大変なことだよなあ。
自分が否定されているわけではなくて、そことのマッチングの問題だと頭ではわかっていても、やはり落ち込むし、だんだん追い詰められるような気持ちにもなる。
生活どうするんだよ…という現実ものしかかる。

私は、相談に乗ってくれる人がみじかにいたことや、転職をしてしなやかに生きている友人がいたことに助けられながら、駆け抜けてお仕事のご縁をいただいた。
健康保険と年金に加入できて、生活が維持できるお給料をもらえて、自分の経験を社会に還元できそうな仕事。単年度雇用条件付更新。
私はとても嬉しい気持ちだった。

息子や、支えてくれた友人たちは喜んでくれて、同じようにきっと喜んでくれるだろうと親に報告したら、まず雇用形態を聞かれて、正規雇用ではないことを心配されて喜んでもらえなかったのは地味にショックだった。
親の気持ちは想像はできた。なにしろいつまでたっても心配が絶えない娘だ。仕事内容もよくわからなかったんだとも思う。
でも、別に「よかったね」くらいは言ってくれてもいいじゃん。減るもんじゃないし。
と、ちょっとだけ子どものきもちになる。

「移住」とか「フルリモート勤務」というワードも頭をちらついたし調べたりもしていたけど、まだしばらくは東京で生きることになりそうな私だ。
自分が歩いてきた道を思うと、未来は想像もつかない。
だから、今目の前にある時間を大切に、ロスジェネはゆく。

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