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京大卒の私が絵本育児を信じる理由 「ぶっくくらぶ」のすすめ

 これからの時代を生き抜く力を得るためには絵本がカギなのでは、と思っている。絵本育児の解説本はいくつか読んだけど、科学的と言ってよいエビデンスの強い論拠はない。それでも私は、自分の体験から絵本を信じている。

 私が6年過ごした京大はおもしろい所だった。変人しかいなかった(法学部医学部除く)。変人とはどんな人かというと、好きなことしかできない人。ハエの研究したり、アフリカの研究したり、ブラックホールの研究したり、時計台の前でこたつ出したり、鶏さばいて食べてみたり、鴨川でシュールストレミング食べてみたり、なんでもいいけどとにかく皆好きなことしかしない。興味ない授業は出ないし、簡単な方や将来稼げる方を選ばず、好きな方楽しい方を選ぶ。

 好きなことしかできない人は、裏を返すとこれからの時代を生きるのに大切とされる3つの力、自己肯定・選択力・レジリエンスを持っていると思う。 

・自分の好きなことに圧倒的な自信があり(自己肯定)
・他のことは脇に置いて自分の好きなことを選ぶ力があり(選択力)
・たとえしんどい道でも自分の好きなことを貫く芯の強さ(レジリエンス)

 例えば私の場合は、
・自分の好きなことに圧倒的な自信があり(自己肯定)
→発生生物学大好き人間

・他のことは脇に置いて自分の好きなことを選ぶ力があり(選択力)
→仕事なんてどうでもよくて、自分の体内でヒト発生を体験すること(=妊娠)を最重要目標とし、達成

・たとえしんどい道でも自分の好きなことを貫く芯の強さ(レジリエンス)
→学部も院もしんどかったけど学び続けた

 ではどうやってこの3つの力、自己肯定・選択力・レジリエンスが育まれたのか。根拠はないが、絵本がカギのような気がするのだ。


「京大なんか入れたのは元々頭よかったんでしょ」
「親も頭良いんでしょ」
「塾とかいっぱい行ってたんでしょ」

 私の経歴はこれらの一般論を全部ひっくり返す。
「うちはお金ないから私立行かせられへんで」
 小さい頃からずっとそう言われていたので、小中高大全部公立。塾も苦手だった数学と英語だけ行かせてもらったけど、本当に最低限。大学の学費は出してもらったけど、一人暮らしの生活費や遊び代は全部自分でまかなった。
 私の親は2浪して私大の夜学に通い、長年トラック運転手だった。親の年収が十分低く、私は余裕で奨学金を6年間満額無利子で借りられた。親が50代の時の年収を私が20代の時超えかけた(その後産休育休時短で給与激減してるが)。

 学歴や年収だけ見たら完全にトンビがタカを生んだ状態。ではなぜそうなったのか? 毎月2冊、家に良質な絵本が届いたからのような気がしているのだ。

●童話館ぶっくくらぶ

 幼い頃から小学校まで毎月2冊、家に絵本が届いていた。童話館という出版社の「ぶっくくらぶ」というサービス。

 ぶっくくらぶは40年以上続いている配本サービス。本代と送料で2,000~3,000円、毎月親が絵本に投資してくれた。私も弟も大きな本棚にぶっくくらぶの本がぎゅうぎゅうに詰まった子ども部屋で育った。
 ぶっくくらぶは3つの柱を大切にしている。

絵が、子どもに見つめられるに足る美術であること
言葉が、洗練された美しい日本語であること
物語りが、その年ごろの子どもの心の世界と真に響き合っていること

童話館 ぶっくくらぶ

 もちろん当時はそんなこと気付いていなかったけど、絵、言葉、物語の良い刺激を受けていた。
 特に「物語」が重要なのではと思う。物語に没入し、自分が主人公となり、時に笑い、泣き、ワクワクし、ハラハラする。物語の中には優しい人、怖い人、魔女、幽霊、鬼も出てくる。現実にはない世界を頭の中で生きる。自分と同じ考えの人ばかりではないことも、この世には悲しい事実があることも、物語を通して知る。
 膨大な物語に触れることで育まれる心の強さみたいなものが、何かある気がする。

 自分の体験からぶっくくらぶには良い印象があったので、エン様(赤ちゃんのあだ名)が生まれてすぐ契約した。なんと30年前の私と弟の履歴も残っていて、スタッフの方が教えてくれた。

●ぶっくくらぶで届く赤ちゃん絵本

 ぶっくくらぶでは良質な絵本を厳選して届けてくれるとうたっている。どんな絵本が届くのかなと楽しみに待っていると

「ほ、ほう? これが、良いのか……?」

 となるものも多数。笑 3冊紹介する。

『だっこして』


 赤ちゃんにはビビッドで輪郭のはっきりしたものを見せると良い、ということになっている。sassyの赤ちゃん絵本やしましまぐるぐるも人気。けどこの絵本はラフな線で色塗りもざっくりした感じ。この絵は赤ちゃんにとって良いのだろうか。内容は「だっこして」「はいだっこ」の応酬で、もし本屋さんで見つけてもこの絵本に1,000円は出していない。

 続いて

『おつむてんてん』

 赤ちゃんにきちんとした言葉で話しかけた方が良いという説がある。あんよじゃなくて足、わんわんじゃなくて犬。赤ちゃん言葉はシンボル(単語)が増えてしまうので、かえってわかりにくくなるという論理は至極真っ当に思える。そこに「おつむ」て、あかんやろ……。

 次はこちら

 『いいおかお』


 松谷みよ子さんの絵本は『いないいないばあ』が有名で、そちらもぶっくくらぶで届いた。この絵本も赤ちゃんに認識しやすいのか謎。
 『いいおかお』は、ふうちゃん、ねこ、いぬ、ぞうがいいおかおをする。そこまでは良い。最後にお母さんが現れて、いいおかおのみんなにビスケットをあげる。そして最後の文章「あぁおいしい、おいしい おいしいはどーこ」
 おいしいはどーこ?! どこ? え、口ってこと? 大人は混乱。私は読み聞かせするときに「おいしいビスケット」に変えている。


 赤ちゃんのために良いのか一瞬頭を抱える3冊を紹介した。でも、多分これが良いのだ。求めたらだっこしてもらえること、頭をてんてんと叩いて遊ぶこと、みんながいいおかおをすること。赤ちゃんは絵本を通して小さな物語に触れることができる。そしてなにより、エン様はこの3冊を読むと声をあげて笑う。

 絵本が良質かどうかは、子どもを1人、2人しか育てていない母親には判断できない。その点、ぶっくくらぶは絵本を40年届けてきた実績があるので信頼できる。親が自分じゃ選べない本を届けてくれるというところにぶっくくらぶの価値があると思うのだ。子どもが触れる世界を親の力以上に広げてくれる。親が自分で選べる本は自分で買えばいいしね。

 その他の絵本も少し紹介。上では若干ネガキャンっぽい書き方をしてしまったが、ストレートに良いとわかる絵本ももちろん届く(というかその方が多い)。

『くっついた』も有名だけど、こっちも良い
いつかエン様が歩いて私のところまで来るのが楽しみ
まてまてまて、だけの文章でもエン様は楽しそう
『じゃあじゃあびりびり』から『コロちゃんはどこ?』までがぶっくくらぶで届いた絵本。ここに置いているのは一部。

●「通信」

 毎月の絵本には「通信」が同封されている。これが、気づきの多い読み応えのある内容なのだ。
 例えば「絵本の収納」がテーマの回があった。本は場所を取る。住空間は限られるので、本の収納は常にまとわりつく課題。私自身、自分が読む書籍はほぼkindleで買っている。
 通信では、絵本を捨てないようにと書いてあった(出版社だから当然なのだが)。

片付けたいのは大人の都合
幼少期に素敵な絵本に囲まれて過ごすことの方がどれだけ価値があるか
読んでいない本もしばらくして手に取る、そこから何かが広がる
絵本は幸せの象徴

2023年7月通信より引用

 他にも「誰しも心の中に鬼婆や山姥がいる」、「見えないものの気配を感じる」など、普段育児や仕事で追われていると見えなくなっていることに気付かせてくれる内容が多い。

 そしてなにより、読者欄がとてもあたたかい。赤ちゃんから小学生まで、様々な年齢の子の絵本事情が垣間見れる。うちは一番下のコースなので、お兄さんお姉さんのエピソードを読んでは「エン様も将来こうやって絵本を読むのかな」と想像している。

今月の「通信」



 自分のN=1の体験談で論理もへったくれもないが、私はぶっくくらぶとともに育ち、たくさんの物語に触れることで、自己肯定・選択力・レジリエンスの3つの力が身に着いたように思う。
 私の弟は、私とは正反対のような人生を歩んでいるが、同じように3つの力をしっかりと持っている。というか私たち姉弟が3つの力を持っているとしたら、原因は絵本くらいしか思いつかないのだ。
 トンビがタカを生むように、エン様にも親を超えていってもらいたいので、できるだけ絵本を読んでいる。

 10年続けると、毎月2,500円×12ヶ月×10年=30万円。強い心を育てるために、投資対効果を高いと思うか低いと思うかはあなた次第。


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《終わり》

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