子どもの教育にお金かけた方がいいのか問題に一旦答えを出した
もしかして、私の考え方が子どもの可能性を制限している……?
そう思い始めたのは、転職先のパパママ社員さんたちの教育方針がぶっ飛んでいたからだった。ある人は子どもを全員中学から海外留学させているという。ある人は娘さんを超有名お嬢様学校に入れ、幼稚園から高校までエスカレーターで通わせるつもりだという。
小中高大院と国公立共学育ちの私は目が点になってしまった。まじで言ってる? 中学から留学?? ずっと女の子だけの世界で育つ???
中学生の頃から海外で育てば間違いなく英語堪能。お嬢様学校で育てば上品な子に育つ。周りも良家の子女ばかり。きっと皆勉強もできて、趣味もたしなんで、運動もして、ステキな子に育つ未来しか見えない。将来安泰。勝ち組。
転職先の人が留学やお嬢様学校の選択肢を取っているということは、私もこの会社の年収で頑張れば似たような教育環境を提供できる可能性があるということだ(留学のケースはぶっ飛びすぎているので参考にならないが)。
しかし私は真逆の考え方をしていた。自分と同じようにずっと国公立で行ってくれたらいいし、子どもの進路は親がレールを引くものではないと思っていた。本人が「○○に行きたい」と言いだしたら叶えてあげたいが、習い事も塾も受験も親から提案するつもりはさらさらなかった。ましてや幼稚園受験なんて専業主婦の特権で、私は長く預かってくれる保育園5年のゴールデンタイムにしっかり仕事をするしかないと考えていた。だが一緒に仕事をしている人はお子さんをお嬢様学校に幼稚園から行かせている。
もしかして、私の考え方が子どもの可能性を制限している?
お金があれば、お金のかかる教育環境を提供してあげるべきなのか?
そんな迷いが生じていた時、この本に出会った。
キャシーさんはゴールドマン・サックスの上層部。ゴールドマン・サックスは世界に名だたる金融業者。世界中のカネを動かしてボロ儲けしてる。資本主義の権化。六本木ヒルズのオフィスには川が流れ橋が架けられ、金融エリートの世界と俗世を分けているという(虚実あるやも)。ぶっちゃけ私は良いイメージがない。
マネーゲームの覇者、ゴールドマン・サックスが、子どもにマネーゲームを教えるなと言っている。その真意はいかに? と思い、読んでみた。
お金はあくまで手段であり、目的は社会が幸福になること。まず教えるべきは働く意味であり、マネーゲームは二の次ということらしい。ゴールドマンにいる人がどういう背景でそう思うようになったのか。
キャシー・松井さんは幼いころ、両親とも働きづめだった。両親は身ひとつで奈良からアメリカに渡り、花卉農業を始めた。キャシーさん自身も農作業に駆り出された。働かざるもの食うべからず、というような家で育った。周りの友人は働かなくてもお小遣いをもらっていた。親に文句を言っても一蹴されるだけだった。
キャシーさんは農園で働いているときに、B級品のお花をまとめてラッピングをして付加価値を付けて売るというスモールビジネスを思いつく。まるでウォーレン・バフェットがレモネードを庭先で売ったように、ビジネスの原体験をする。
真ん中より低いレベルの公立高校から、キャシーさんはハーバード大学に合格した。しかもきょうだい全員ハーバード卒。奈良から身一つでアメリカに渡った日本人からハーバードに行く子どもたちが出た。父親も奈良の農家からアメリカの大農場経営者。とんびがタカを生む物語。
キャシーさんはハーバードを出てゴールドマン・サックスでのキャリアを歩むが、子どもには働くことを教え、世の中の負の側面を見せ、親は何も残さず子どもに自立を促す。自分たちは幸運であること、何か一つ間違えるとホームレスになってしまうかもしれないこと、ボランティアをすることを教える。
現実は食べるものがない、住む家がない、安全が脅かされる人たちの生活。今ならウクライナやガザが最も厳しい現実だろう。きれいなビルが立ち並び、着飾った人が街を行く世界は非現実ということを、頭に入れておかなければいけない。
キャシーさんの父親は資産を子どもたちに残さず、マツイ財団を設立し、1人約400万円を年十数人に与えている。これは世の中で一番貧しい人が、何とか大学を卒業できる額として設定されているという。
キャシーさんと父親の生き様を読んで、こうありたいなと思った。子どもには金稼ぎではなく「働く意味」を伝えたいし、人に与えることをしてほしい。世の中を良くする仕事をしてほしい。
私は「お金があれば、お金のかかる教育環境を提供してあげるべきなのか?」という疑問を持っていたが、答えはおそらくNO。
留学や受験というお金のかかる教育環境は手段でしかなく、そこで何を学ぶかは別問題。留学や受験をしなくても、働く意味は伝えられるだろう。
一方で、留学や受験という手段を取ると働く意味を考える学びの機会が多いかもしれない。均質な友人たちに囲まれることで視野が狭くなるリスクもある。
極端な話、ホームレスに会う機会を作れるかが親の力の問われるところだと思う。私は中学生の時、BIG ISSUEの販売者(つまりホームレス)がなぜか家にやってきて、仲良くなったという経験がある。もう15年くらいずっとBIG ISSUEを買っている。ホームレスでなくても、難民や病気・障害など、「現実」を知ることにお金や時間などのリソースを使えるかどうか。
私がずっと公立育ちなばかりに、留学や受験というお金かかる選択の結果良い教育を受けられるのかどうかが全然イメージわかないんですよ。社会の現実を知り、働く意味を考えられる教育はどこで受けられるのか? それは家庭の仕事?
幸い、子どもがまだ1歳なので何をどうするということもないが、とりあえず今日の結論。
・お金のかかる教育と子どもに教えるべき内容は別物。
・子どもに教えるべきは、社会の現実と働く意味。
引き続き継続検討します。
《終わり》
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?