アイドルの曲(WEST.)に励まされた私の話

コロナ禍になり何気なく見始めたYouTubeの中で、たどり着いた「ジャニーズWEST(当時)」のチャンネル。
その時の私にとっては、同じ事務所の他のグループのYouTubeも見ていたし、暇つぶしのコンテンツに過ぎなかった。
ただ、ある時ふと過去の動画を見返していて、自分の心にあまりにもまっすぐに落ちてきたものがあった。
そのおかげで今の自分がある。その気持ちを言葉にできるかわからないが、拙いなりにここに記してみたいと思う。
私が衝撃を受けたのは、Storm Labels公式のYouTubeに上がっている「証拠」というMusic videoを見た時だ。

「こんなにも笑って、いや泣いて、
忙しなく叫ぶ キミの心は、頑張っている証拠だよ」

WEST.「証拠」歌詞

冒頭の曲の始まりの言葉とその歌声を聞いた時、なんてまっすぐに励ましてくれるのだろうかと衝撃を受けたのだ。

当時の私には4年ほどお付き合いしていた人がいた。
職場を通じて出会った人で、最初は上手くいっていたと思う。
ただ、少しずつどこか歯車が噛み合っていないなという感覚があった。
今振り返れば、別にお付き合いという形でもなんでもなかったのだと思う。
言ってしまえば、母親か家政婦の代わり、もしくは1人になりたくない時の都合の良い存在なだけだったのだと思う。

相手は私が転職をすると、なぜか私の仕事を否定し、見下してくるようになった。「俺がいなければ何もできないお前」と揶揄されることもあった。
それでも優しい時は優しいし、二人でどこかへ出かけることも楽しかった。

いつの頃だか、何かと私の家に入り浸るようになり、相手は仕事も休みがちになった。仕事と家事をこなす私を横目にお笑いを見ながらゲラゲラ過ごしている相手に、家事を手伝って欲しいと言うと、泣きながら「こんなに弱っている俺をお前はこき使うのか」と言われるようになった。

「別にこの人とお付き合いしなくてもいいのでは…」と心のどこかで思いながらも、当時の私は友達も少なく、他の誰かと出会う手段もなかった。

私の行動を非難されながら過ごす毎日に、自分の中の自己肯定感がガリガリと削られて、何にも自信が持てなくなっていくような感覚に陥った。

自己嫌悪しながらもずるずると関係を持っていたときに、相手からプロポーズを受けた。「一緒に幸せになろう」と。

その時の状況をはっきりと今でも覚えている。思わず涙が出た。このプロポーズを受けたら二度と逃げられなくなるという恐怖によってだ。
相手は言った。
「前に指輪を買ってたじゃん?俺覚えててさー。その時のサイズで作ったよ。ピッタリでしょ?」
思わずその場でぎこちなく笑う自分がいた。
なぜなら、渡された指輪はブカブカで、サイズが合っていなかったからだ。

どこがピッタリなんだ・・とするりと抜け落ちる指輪を触って思った。
心が悲鳴を上げた。「この人と一緒になることなんて無理だ。」と。

自分自身の気持ちを無視できず、プロポーズの返事は考えさせて欲しいと言った。そして少しずつ距離を置くようになった。

距離を置いて、自分の仕事に集中するようになって、心が軽くなった感覚があった。
仕事はとても楽しかったし、自分を変えたいと思ってジムにも通って外見から変われるように小さな努力をしてみた。
また、世の中はコロナ禍となり、行動は制限されるものの、時短勤務やリモートワークも整い、自分の時間が確保出来て、自分の将来について考える時間ができた。
相手のことについても「本当にこれでいいのか」と振り返る時間が増えた。
そしてコロナ真っ只中となり、仕事だけに打ち込んでいた日々の中、私から切り出しだ。「お別れしましょう」と。

最後は呆気なかった。なぜなら会うことは拒まれ、電話も不可能、LINEで伝えるしか手段もなかったからだ。
仕方なくこれまでのお礼とお別れの連絡をLINEで行った。既読はついたものの遂に返事はなかった。

仕事では、ひとりの上司が大病を患いながら勤務していた。その上司には本当にお世話になった。
入社してからこれまで、私にとっての直属の上司だった。多くのことを学ばせていただき、その恩は尽きない。

理不尽なことも、腹が立つようなことも仕事では起こりがちだ。
そういう時にその上司は盾となり、部下を守ってくれるような器の大きい人で、本当に頼りになる存在だった。
頭の回転も早く、知識も豊富で、辞書のような頭脳をしていたから、なんでも相談できたし、この人に着いていけば間違いないと思えた。

しかし病というものは厄介で、本人の意思とは無関係に進行するものだ。とても無情なものである。
その上司の体を、病は少しずつ蝕んだ。だんだんと休みがちになる上司を心配すれば「まだ生きているし、体が動く限り働きたい」と本人は言った。

上司は誰かと外食に行くことが好きで、そんな上司に「美味しいもの食べにいかないか」と言われたら一つ返事で仕事終わりにさまざまなものを食べに行った。話題になっているお店から、上司の思い出が詰まっているお店まで……。

会社でも、外食でも、とにかくたくさん話をした。
そのおかげで同僚とも仲良くなれた。
そんなきっかけを作ってくれるのもまたその上司だった。
「また行こうな!」と食べたものを忘れないように記録するLINEグループも作って、同僚含めて共に楽しんだ。

月日は過ぎ、コロナ禍4年目に突入。
少しずつ行動制限も緩和される中、上司の体に異変が起きた。
上司はそのまま意識を失い、ICUに緊急入院となった。

上司の席が空席となったことで、その分の仕事を誰かが担わなければいけない状態となり、仕事に忙殺される日々が続いた。
その場にいないことを悲しむ暇もないぐらい、とにかく忙しかった。
同僚ととにかく励まし合いながら乗り切っていたと思う。
ただ、その時の感情は今ではもう思い出すことが難しい。
それぐらい本当に目の前の仕事を片付けることでいっぱいっぱいだったのだ。

仕事に追われる日々に疲れていたのだとも思う。
上手くいかないことも増え、自分の責務も、上司がいた頃に比べて何十倍にもなった感覚があった。心から「あの人の背に守れていたんだな」と思った。

そのうえ、上司と出会ってすでに何年も時が経っていたとはいえ、こんなにもあっという間に上司の命が尽きようとする日が来るなんて思ってもいなかった。
これまで当たり前にあったものが、儚く消えようとすることを目の前にした時、私たちは無情に過ぎていく現実というものを知った。

それでも時間は止まらない。仕事も止まらない。なんとか踏ん張って仕事をこなす自分の現状に、背中を押してくれる言葉がとにかく欲しかった。

たわいのないYouTubeを見て笑って日々を忘れる時間もあったが、当時はそれよりも誰かに背中を叩いて押してくれる一言をもらいたいと願う日々でもあった。
そうしなければ心が折れそうな気がしていたからだ。

大人になれば他人から褒められる機会は減ってしまう。
仕事が出来て当たり前、行動して当たり前、自分の行動が自分の責任となる。
けれども、大人だって、他人から励まされたり、褒められたい時だってある。
認められたいと思うことだってある。

前置きが長くなってしまい申し訳ないが、そんな中で出会ったのが、現WEST.の「証拠」という曲だった。

「置いてきぼり」なんて言わないで
完璧じゃ疲れちゃうよ
らしく行こうぜ Long & Winding Road
どれが正しくて 間違いで 
手探りのまんま 生きているんだ
何が悪いのさ

元々、曲を聴く時に歌詞の意味を考えがちな私は、ストレートに思いを伝えてくれる曲が好きだった。
まさにこの曲がその時の自分に刺さったのだ。自分自身の背中を押してくれる気持ちになれた。
まさかアイドルの曲に励まされるなんてその時は思ってもいなかったし、青天の霹靂だった。
それからは毎日この曲を聴いたし、無我夢中でWEST.の曲を調べた。

「生きてゆくことの半分は 壁にぶちあたるばかりだ
 残された半分は それを乗り越えてゆくためだ」

WEST.「人生は素晴らしい」

「誰にだって 逃げたくなって
大切なものほど 見えなくなるけど
愛は必ず君の心にあるよ 僕ら一緒に歩いて行こうよ」

WEST.「僕ら今日も生きている」

ここに載せたのはたった数行の歌詞に過ぎないが、一曲を通して常に聴いている人間を推してくれる言葉が並ぶ。
どちらも曲調はとてもポップな感じなのに、歌詞を見て思わずグッと泣きたくなる自分がいた。

辛くても、もう一度立ち上がれ

彼らはそういう曲を何曲も歌ってくれているのだ。
しかも、彼らは背中を押すだけじゃなく、一緒に歩いてくれるような元気もくれる。

この間発売された「絶体絶命/Beautiful/AS ONE」の収録曲の「超きっと大丈夫」は、私にとって最も元気になれる曲だ。

「おまたせしました  ジャジャーン登場さ応援団!
言える 言える 君は頑張ってる
押してもダメならば引いてみようか
そんな事言わない 超一緒に押してやる
超きっと大丈夫 超一緒に生きてやる さぁ行け」

WEST.「超きっと大丈夫」


私は今も毎日この曲を聴いて出勤しては、自分を奮い立たせている。

上司は結局、一度意識を取り戻し、話ができるまで回復したものの、病が進行し帰らぬ人となった。
最後の最後まで私の心配をしてくれて、最後には電話までしてくれた。仕事を何とかこなす私を認めてくれ、愛弟子と言ってくれた上司。
志半ばでお別れとなったものの、私は今、上司から教わった一つ一つの行動を大事に仕事をしている。

正直、今も自分に残る上司の面影が消えず、立ち直れていない。しかし、それでもなんとかこなしていけているのは、WEST.がいるからだ。

コロナ禍で怒涛の別れがあった。正直なところ、これ以外にも別れがあって、人と縁の切れることの多い数年間だった。
何度も挫けそうになった。
「自分の人生はこれでいいのか」と今でも迷うこともある。

ただ、それでも前を向けるのは「どこかで自分と同じように頑張っている人がいる」と思えるからだ。
そう思えるようになったのは、WEST.を知ったからだった。

知り合いでもないし、ご本人たちにこの想いが届くこともないと思う。
それでも、無条件に、曲という形で毎日励まして、
背中を押してくれる存在であることが私にとって何よりのかけがえのない存在だ。

きっと同じようにWEST.の曲に励まされている人が何人もいるだろう。
もしくは違う曲、違うアーティストに励まされている人もいることだろう。
そういう同じ感覚を持つ人に、私も同じだと言いたくてここに記した。

WEST.の彼らは今年がグループを結成して10周年の年だ。
そんな10周年に私は運良く、彼らの歌声を生で聴ける機会を得た。
10周年ツアーに参加できることとなったのだ。
当日はきっと泣いてしまう、そんな気がしている。
それぐらいCDで聴いても、DVDで過去のライブを見ても、とても力強く、笑顔で歌う彼らが眩しいのだ。
昨今、事務所の問題もあり世間の風当たりは強い。
彼らもそんな苦しい状況を受け入れながら生きていることだろう。
そんな彼らだからこそ、日々を大切に、一所懸命に生きている気がしている。
そうでなければ「きっと大丈夫だ」なんて言える歌詞が作れるものではない。

私はこれからも、たくさんの元気と励ましをくれるWEST.の曲を楽しみに生きるだろうし、ツアーに参加して、一緒に過ごすことができる時間を私はとても楽しみしている。
いつも本当にありがとう。そして10周年、心からおめでとうございます。

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