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「自死について」

「自死について」


小林秀雄が「自殺を考えたことの無い者は誰もいない」という事を書いていた。

しかし、私は自殺しようと思った事も、考えたことも一度も無い。
このように書くとこれを読む人は「え、本当か?」と言われそうである。

私は幼少時から自分が人間存在であることを常に不思議に思っていた。
天性の相対的意識が感覚的レベルで具わっていたからである。

有体に言えば「生きる意味も、死ぬ意味も」見いだせなかった。
人間の姿をして生きている以上は人間として生きなければならないと思っていた。

通常言われている「自分を殺して云々」はたんなる状況、環境の中での自己保存のための意識操作にすぎない。

私が14歳から画家になろとと決意してから風景の中に人間を描いたことは一度も無い。
風景の中に人間を描くと風景が汚れると思っていたからである。

その当時の私の意識状態は釈迦の掌にいる孫悟空の意識状態であった。
私の自我は「虚無空間」に在った。

その後、強烈な内的体験を経て自分が如何に「無知」であったかを思い知らされた。

*世界観を一変させた神秘体験
https://note.com/umezaki/n/n104a6ccb8d2e?magazine_key=m9d5dd8cfc216

ただ、現実で人を殺そうと思った事は二度だけある。(想念で思った事はここでは書かない)
一度目は自分の父であった。

*「親殺し」オイディプス的体験(「自叙伝」より抜粋。)
https://note.com/umezaki/n/nc3fd8114cf6b

二度目は、私が銀座で画廊を経営している時に一緒にやっていた人物の周囲に集まっていた学生たちの浅薄、無礼な言動に我慢の限界を超えた時である。
私はその人物を二階の窓から叩き落そうと思った。
しかし、常連の友人が私の凄まじい殺気を感じたのか、私の足を掴み、泣きながら必死に止めた。
彼が止めなかったら確実に殺したであろう。

繰り返すが、私は今まで自殺などただの一度も考えたことは無い。

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