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まずは価値観を柔らかくしよう。「実践!50歳からのライフシフト術」を読んで。

私、バブル世代です。
同世代の友人、知人を見回してみると30代くらいの時とは違う仕事をしている人はイキイキとして見えます。
一方、ずっと同じ会社、同じ仕事を続けている人は、まあそれなりに、です。私は、後者です……。

会社にあと何年居場所があるか、会社を辞めたあと、老後というにはまだ早い50代後半~60代に自分がやりたいこと、やれることを見つけられるのか。正直不安です。

「実践!50歳からのライフシフト術」という本を読みました。

心理学者のユングは、人の人生を、日の出から日の入りまでの時間にたとえました。その時間を、少年、成人前期、中年、老人という4つのステージに分け、ステージとステージの間には、転換期という「危機」があるとしました。
少年から成人になるには、あるいは、中年から老人になるには、それまでのものの考え方や行動を大きく変える必要がある、しかし人は簡単には変化できない。そして、人生の午前と午後の境目である中年への転換期、つまり「人生の正午」こそが、人生最大の危機であるとし、その年齢を40歳前後と定めました。
平均寿命、健康寿命は、ユングがこの考え方を提唱した20世紀中期から大きく延びています。
人生最大の危機である人生の正午は、今の日本では、50歳前後で訪れているのではないでしょうか。

この本は、50歳以降にライフシフトした22人のインタビュー集です。

全員が、自分の人生の「主人公」になっています。自身が生きていくうえで大切にすべき価値観に気づき、オーナーシップをもってワクワクしながら生きています。そう、ライフシフトとは、生き方の抜本的な変化です。転職、起業のような外形的な変化のことではないのです。

50歳といえば、就職してから35年あまり、会社勤めの中で多様な経験を積んできてはいても、決定的に欠落している経験があるという。それは、「自分が何をするかを自分で決める」という経験だという。
転職をしている場合でも、多くの人は「やりたいから」ではなく、「できるから、やったことがあるから」という理由で転職先を選んでいます。
また、起業している場合も、「成長領域だから、儲かりそうだから」であって、「自分自身がその仕事をやりたい」という固有の理由ではないことも少なくありません。

しかし、単に「やりたいこと」を見つければいいのではなく、「なぜその仕事をやりたいのか」という質問に、きちんと答えられるかどうかが大切なのだといいます。「できるから」「やったことがあるから」ではなく、「成長しそうだから」「儲かりそうだから」でもない、その人固有の理由や動機に基づく回答があるかどうかが重要だといいます。

それが価値軸です。その人自身の心の中から湧き上がってくる「〇〇を大切にしたい」「〇〇が心から好きだ」「〇〇が気になって仕方がない」という想いが、何をするかを導くのです。

この本に登場する22人のライフシフターは全員が日本の会社に勤めていた普通の人たち。そういう人が、ある時、あることをきっかけに、自分の中にある価値軸に目覚めていきます。

価値軸の多くが、以下の8つに分類できることがわかりました。
●人を育てる
●好きを仕事に
●社会に貢献
●手に職つけたい
●海外とのかけはしに
●故郷に帰る
●住みたいところへ
●家族とともに

ここで紹介されている22人のほとんどは50歳時点で会社に勤めていました。ひとつの会社に勤め続けていた、いわゆる「変化にうまく対応できず、転職やキャリアチェンジがうまくいかないタイプ」の人たちです。

しかし、みなさんが自らの価値軸に気づき、仕事を楽しみ、ワクワク生きているのは何が要因なのか。

ライフシフトしていくプロセスも順風満帆ではありません。挫折や失意があったり、試行錯誤の日々が続いたりしています。サクセスストーリーとは程遠いものばかりです。
ですが、そこには大きな共通点がありました。みなさんが、
◎心が騒ぐ
◎旅に出る
◎自分と出会う
◎学びつくす
◎主人公になる
という5つのステージを経験しているのです。

◎心が騒ぐ
「これでいいの?」という違和感、焦り。
◎旅に出る
ゴールは見えないけど「まずやってみる」、一歩踏み出す。
◎自分と出会う
旅に出る中で価値軸に気づく、核心のステージ。
単に「やりたいことに気づく」のではなく、なぜそれをしたいのか、という理由や動機に気づくことが大切。
自分自身の強い想いや信念、問題意識と出会う。
◎学びつくす
何をなしたいかがわかったら、それを実行するために自分の知識・スキルを高める、学ぶしかないことに気づく。
◎主人公になる
自分の人生の主人公になって、自分の仕事、自分の人生をマネジメントしていく。
マネジメント=管理、ではなく、「何とかする」。限られたお金や時間、人材を何とかやりくりしながら、目的の実現に向けて、何かを成していく。

「自分と出会う」ステージで、もう一つ大切なポイントがあります。それは、すべての人が「自分の中にあるモノ」と出合っていることです。過去の仕事経験、子どもの頃の体験、趣味や嗜好、故郷などなど。50年にわたって生きてきた人の心の中には、自身の価値軸がすでにあるのです。自身の経験や想いと関係ないことを、無理やりやろうとしてはいけないのです。

また一方で、ライフシフトには「アンラーニング」が欠かせない、ともいいます。

「長年の会社員生活で自分と一体化してしまった鎧兜は脱ぎ捨てなければいけない。得たスキルや得意なことは活かすべきだけれど、過去の業績や立場にしがみついていては新しい挑戦はできません」と語っています。
過去の成功体験がすべて有効なのではありません。ある成功体験が、新たなことを始めようとしたときに邪魔することもよくあるのです。これまで学んできたやり方、身につけてきたものの考え方を捨てることも重要なこと。アンラーニングは、ライフシフトに、主人公になるために欠かせないものです。

最後に、ライフシフターに共通する変身資産として10項目を挙げています。

・とにかくやってみること
・どんなことからも学んでいること
・学んだことを捨てられる勇気を持っていること
・違和感を大切にすること
・みんなと同じじゃなくても平気なこと
・3つ以上のコミュニティに所属していること
・有意義に公私混同していること
・自分についてよく知っていること
・自身の人生時間を自分でマネジメントしていること
・人生に起きる変化を楽しんでいること

この10項目すべてを、高い水準で意識していなければ、ライフシフトはできないのか。決してそんなことはないといいます。どれか一つでも、小さなことでもいいから意識し、そのステージをクリアする中で、また新たな変身資産を獲得していけばいいと。

50年生きてきて、五十肩のように凝り固まってしまった心、考え方、価値観をもみほぐして柔らかくすることから始めてみようと思います。


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