藍田ウメル

藍田ウメル

マガジン

  • Words【不定期連載小説】

    「実はすごいじぶんなんていない。だから、僕は間抜けでみっともない自分を語ろう」 親からの束縛から逃れようとする「僕」が、美しい少女「かほ里」をはじめ様々な人物と出会い、「恋のようなもの」に振り回されながら、「創作の呪い」にとらわれていく青春小説。「僕」は本当の「言葉」を、いつか語ることができるのか? 不定期連載

  • 転送少女症候群、もしくは黍島柘十武の長い回想【完結済】

    「君に恋をしてもいいかな?」 生きる理由も希薄な「僕」の前に、ある日突然現れた少女がそう問いかける。強引に始められた同居生活の中で、彼女はその能力(転送)によって辿った奇妙な自分の半生の物語を語り出した――。セツナサと幻想の長編。ある意味においての切実な「青春小説」

  • 僕はハタチだったことがある【連載長編】【完結済】

    かつて、「僕はハタチだったことがある」。ハタチのとき、「君」を選ばなかった僕が、あの日々を遠く離れて「君」に伝えたいものは……。迷いと苦悩と喜びと、生と性と死の青春小説。(連載小説・2014年作品)

  • 断片集・藍田ウメル短編集

    恋愛や失恋、若さということ、そしてその底に潜む性をテーマに、2014年頃電子出版した短編小説集から、数編を掲載し、纏めていきます。

  • epilogues【連作短編集】

    「十年前、僕の恋物語は終わった。終わったはずだった」 かつての恋の”その後”を生きる僕と、彼女と、もうひとりの彼女の、それぞれの視界に結末は映るのか?もう恋なんてない恋物語を描く連作短編。(2019年作品)

最近の記事

Words第Ⅰ部の終わりに(あとがき)

この作品は、2020年にKDP/AMAZONで「Words・Ⅰ」として電子出版したものを、主に改行などの若干の修正を加えて、分割・連載したものです。 AMAZONでの電子出版は停止していますので、現時点で読めるのはここだけとなっています。 ここまでが、第Ⅰ部となります。 これ以降の執筆・公開については、未定になります。 出版後、第五回「このセルフパブリッシングがすごい!」(現在は終了)で1位にしていただいた手前、続きを書くことは責務だとも思っていますし、 それなりの構想は

    • 【連載小説】Words #22【第Ⅰ部完】

       この物語はフィクションです。  作中の人物・団体・学校・事件、及び各種名称、方言などあらゆるものは、創作であり、実在のものとは一切関係がありません。    この連載をまとめたマガジンはこちら↓  あんな嬉しくないデートは、初めてだった。  あれなら、話もせずに、寒さに凍えながらただベンチに座ってるだけの真沢とのデートの方が百倍ましだった。  話ができなかったのじゃない。寧ろ黙っていることを許されないから、その「デート」は地獄だった。  手をつながされ、ベタベタされ、遠藤は

      • 【連載小説】Words #21

         この物語はフィクションです。  作中の人物・団体・学校・事件、及び各種名称、方言などあらゆるものは、創作であり、実在のものとは一切関係がありません。    この連載をまとめたマガジンはこちら↓  公立高受験は終わった。試験は、手応えがなかった。ひたすら倫生対策に打ち込んだせいであまりにも問題が素直すぎるように思えた。  もうひとつなにか意地悪がしかけてあるのではないか、と疑心暗鬼になって、何度も解答を書き直したくらいだった。  でも、それが良かったのか悪かったのかは全然わ

        • 【連載小説】Words #20

           この物語はフィクションです。  作中の人物・団体・学校・事件、及び各種名称、方言などあらゆるものは、創作であり、実在のものとは一切関係がありません。    この連載をまとめたマガジンはこちら↓  私立の合格発表は終わっていたが、公立の試験は、まだ終わっていなかった。塾の教室は、まだ緊張に満ちていた。  その街で最も偏差値の高い公立の東髙が大方の生徒の第一志望である。優秀な私立高が増えた今と違って、当時のその地方では私立と言えば、倫生など数少ない例外を除けば、成績の良い生徒

        Words第Ⅰ部の終わりに(あとがき)

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        • Words【不定期連載小説】
          23本
        • 転送少女症候群、もしくは黍島柘十武の長い回想【完結済】
          16本
        • 僕はハタチだったことがある【連載長編】【完結済】
          14本
        • 断片集・藍田ウメル短編集
          6本
        • epilogues【連作短編集】
          5本
        • 僕のニシャ【連載小説】【完結済】
          56本

        記事

          【連載小説】Words #19

           この物語はフィクションです。  作中の人物・団体・学校・事件、及び各種名称、方言などあらゆるものは、創作であり、実在のものとは一切関係がありません。    この連載をまとめたマガジンはこちら↓  僕の記憶力なんて曖昧で、それが緊張したり興奮したりする状況下にあるときに余計信頼性に欠けるものであることは、何度か言ったように思う。  だから、僕はその試験のことをあまり憶えていない。難しかった。そういう印象が、いまも残っている。  でも、考えに考えて、正答に向かう試行錯誤ができ

          【連載小説】Words #19

          【連載小説】Words #18

           この物語はフィクションです。  作中の人物・団体・学校・事件、及び各種名称、方言などあらゆるものは、創作であり、実在のものとは一切関係がありません。    この連載をまとめたマガジンはこちら↓  そんな決意は飽きっぽい僕の中でも消えなかった。勉強した。そして、受験日が、もうそこまで来ていた。  倫生は、志望者が各地方に散らばっているために、各主要都市に試験会場を設けていた。僕の住んでいた街でも、試験は行われる。  受験にかこつけて親から離れて旅行してみたかったような気がす

          【連載小説】Words #18

          【連載小説】Words #17

           この物語はフィクションです。  作中の人物・団体・学校・事件、及び各種名称、方言などあらゆるものは、創作であり、実在のものとは一切関係がありません。    この連載をまとめたマガジンはこちら↓  そういう流れで、僕は、いよいよ公にも倫生高校を目指して勉強することになった。  僕自身に、経堂の友情に応えようとする意気込みがあったことは間違い無いけれど、今となっては、母の方がずっとその気になってノリノリであり、絶対合格するのよ、などと鼻の穴を広げてけしかけられると、僕は自分の

          【連載小説】Words #17

          【連載小説】Words #16

           この物語はフィクションです。  作中の人物・団体・学校・事件、及び各種名称、方言などあらゆるものは、創作であり、実在のものとは一切関係がありません。    この連載をまとめたマガジンはこちら↓  遠藤がにこやかに笑っていた。僕は、顔を引きつらせた。 「佳織、すごく喜んでた」  昼休みに呼び出されて、僕は遠藤と一緒に校舎裏にいた。  僕は、前日の日曜日、真沢と「デート」をした。まったく持つべきものは仲間である。経堂がアリバイを作ってくれた。事情を説明した僕に、経堂は少し笑っ

          【連載小説】Words #16

          【連載小説】Words #15

           この物語はフィクションです。  作中の人物・団体・学校・事件、及び各種名称、方言などあらゆるものは、創作であり、実在のものとは一切関係がありません。    この連載をまとめたマガジンはこちら↓ 「何? 万引きでもすんの?」 「し、品川?」  その不穏な言葉が大きく店内に響き、一瞬で、店員たちが僕に注意を向けたのがわかった。僕は、とりつくろうように、それより大きな声で半ば叫ぶように言った。 「し、しねーよ。そんなこと!」 「へえ、すげー挙動不審だったから、やんのかなー、って

          【連載小説】Words #15

          【連載小説】Words #14

           この物語はフィクションです。  作中の人物・団体・学校・事件、及び各種名称、方言などあらゆるものは、創作であり、実在のものとは一切関係がありません。    この連載をまとめたマガジンはこちら↓  僕が、すっかり経堂に影響されて、「フツーの連中とは違うこと」をするために、休み時間、教室で倫生の過去問題集をひとり解いていると、目の前に人影が立った。  まあ、夢中で勉強しているポーズを取りながら、多分に人の目を気にしている僕は、一旦、気付かないフリをして、その人影がそれでも動か

          【連載小説】Words #14

          【連載小説】Words #13

           この物語はフィクションです。  作中の人物・団体・学校・事件、及び各種名称、方言などあらゆるものは、創作であり、実在のものとは一切関係がありません。    この連載をまとめたマガジンはこちら↓  僕は、その教室の季節を、書かなかった。  わざと。意図的に。季節が一巡りしたら、それが、終わってしまうから。  ずっと、そこにいたひとのことを、そこにしかいなかった少女のことを、書き続けたかったから。  でも、僕の記憶のストックも、もうそろそろ尽きようとしている。秋が来て、冬が来

          【連載小説】Words #13

          【連載小説】Words #12

           この物語はフィクションです。  作中の人物・団体・学校・事件、及び各種名称、方言などあらゆるものは、創作であり、実在のものとは一切関係がありません。    この連載をまとめたマガジンはこちら↓  いつもの、放課後。教室。もう、正直、当たり前の習慣のように僕はかほ里とイヤフォンを分け合っていた。僕は訊いた。 「ブルドッグってカワイイと思う?」 「あ?」 「パグ、とか」 「イヌ?」 「うん。あの潰れた顔の」 「ああ。アレな」 「うん」 「……あんまりかわいくないな」 「……あ

          【連載小説】Words #12

          【連載小説】Words #11

           この物語はフィクションです。  作中の人物・団体・学校・事件、及び各種名称、方言などあらゆるものは、創作であり、実在のものとは一切関係がありません。   この連載をまとめたマガジンはこちら↓  僕がバス代を貰えなくってしばらく経ったある日。その日は大雨で雷が鳴っていた。僕は母に乞うた。 「あの、雨なんで、バス代ください」 「傘があるでしょ?」 「は?」 「傘があるから、歩いて行けるでしょ?」 「いや、だからそういうレベルの雨じゃない――」 「ああ、しつこい! なんでもご

          【連載小説】Words #11

          【連載小説】Words #10

           この物語はフィクションです。  作中の人物・団体・学校・事件、及び各種名称、方言などあらゆるものは、創作であり、実在のものとは一切関係がありません。   この連載をまとめたマガジンはこちら↓  真沢は、結局、帰ってきた。  死にもしなかったし、不治の病が判明したわけじゃなく、こじらせた体調を、きちんと回復させて、帰ってきた。  カノジョの死が、僕という人間に、深い傷と暗い陰を残し、かほ里に支えられながらドラマティックに挫折から再び立ち上がることになるという妄想とは関係無

          【連載小説】Words #10

          【連載小説】Words #09

           この物語はフィクションです。  作中の人物・団体・学校・事件、及び各種名称、方言などあらゆるものは、創作であり、実在のものとは一切関係がありません。   この連載をまとめたマガジンはこちら↓  次の月曜、真沢は学校を休んだ。彼女のグループのひとり、遠藤が僕にこっそり耳打ちをした。 「佳織ちゃんね、本当は熱が三十八度もあったんだよ。でも、ずっと楽しみにしてたの。だから、ムリして行ったんだって。その……映画に。で、ちょっとこじらせて」  彼女は、アンタたちのこと知ってるの、

          【連載小説】Words #09

          【連載小説】Words #08

           この物語はフィクションです。  作中の人物・団体・学校・事件、及び各種名称、方言などあらゆるものは、創作であり、実在のものとは一切関係がありません。   この連載をまとめたマガジンはこちら↓  そして、僕はついにその日を迎えた。  手紙を密かに渡しあいながら、僕と真沢は休日にシネコンにいた。何を見るかはまだ決めていなかった。そのとき話し合って決めよう、と真沢の手紙にあり、僕もそれに同意した。  それで、僕たちは最寄り駅で待ち合わせをしたわけだけれど、僕たちはそこにつくま

          【連載小説】Words #08