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アフリカ54カ国がひとつの市場になる?アフリカ自由貿易圏協定が運用開始

今年の1月1日から、アフリカで54カ国(エリトリア除くすべての国)が参加する、自由貿易協定(FTA)が運用を開始しました。アフリカ自由貿易圏(AfCFTA)協定といい、エーエフシーエティーエーと読みます(アフリカFTAとかの方が言いやすくないですか?そのうちそう呼ばれるようになる気がします)

これってすごいことですよね。WTO創設以来最大の貿易協定で、域内人口13億人です。アフリカ版EUと言われており、将来的には人の移動の自由や統一通貨の実現も見据えられています。

実際にアフリカビジネスに関わる企業にとって必要な、具体的な情報はこちらに書きました。

2018年に44カ国が署名をした時点では、まだしょせん署名しただけだし、アフリカでは、こういった構想が打ち上げられてから実現までが長いのが常なので(西アフリカの共通通貨ECOの導入はどうなった?)、当初は実現可能性を軽くみた感じがあったと思うのですが、世銀やアフリカ連合の執念でここまでこぎつけました。

世銀・IMFには、80年代に構造調整融資・貿易自由化の失敗によってアフリカの経済を長く落ち込ませたという経緯があり、今回のアフリカ自由貿易圏(AfCFTA)協定は、まるでそのリベンジであるかのように、熱心に取り組まれています。

とにかく前に進めることが重視されたようで、54カ国の中には国内の議会などでまだ批准していない国もあるのですが、見切り発車してしまいました。具体的な関税撤廃の品目やそのスケジュール(どの品目をどれくらいずついつ関税を減らしていくか)なども決定に至っていないのですが、運用開始とあいなりました。

関税が撤廃するまでの期間は5年(国によっては10年)なので、この5年でなんとかすればよい!という風に課題を後回しにしたんだな、というのがひしひしと感じられます。

どういう効果が期待されているかはこちらに書きました。

アフリカは各地域に地域共同体というのがすでにあり、その中ではとっくに関税免除での貿易が行われているので、アフリカ自由貿易圏(AfCFTA)協定が開始しても効果は限定的なのでは?という声もあります。

たとえば、南アフリカを中心とする南部アフリカの国々は地域共同体に加盟しており、ここは南アからの道路インフラも整っているので、すでに「南ア経済圏」といってよい状況になっています。

ザンビアやジンバブエなど、その経済水準のわりによい製品や部品などが簡単に手に入ったりしますが、それは南アから運ばれてくるからです。外食チェーンやスーパーは南ア資本ばかりです。

逆にこれらの国からは、南アに農産物や資源、労働力が吸収されていきます。

こういう状況が、いままでの地域よりも広範囲に広がることになる可能性はあります。つまり、強い国がどんどん強くなり、強みのある国はその強みを広い範囲で生かせるようになる可能性はあるし、またそれが期待されているのでしょう。

アフリカの中で、製造に強い国、消費マーケットを抱える国、農業が強い国、軽工業で中間財が作れる国と、分担しあって、アフリカ全体で付加価値を高めてグローバル経済に対抗していこうというのが、このFTAの狙いのひとつです。

そして、そうやって域内で物品のやりとりが増えれば、それに伴いインフラの整備も進むかもしれません。

ナイジェリアなどは、アフリカ各国から、特に中古品の部品や日用品などの買付の人が訪れる「アフリカのドバイ」みたいなところがありますが、これからはドバイに行くよりナイジェリアにいこう、という動きになるかもしれませんね。もっとも中古品の輸入を行う人の大半は、もともと関税を脱税しているケースが多いと思いますが。。

南アやエジプトは、アフリカの中で製造業がさかんで、作れる製品のレベルも高いです。こういったところで作った製品を、アフリカ中で売ることができるようになりますね。日本企業もこの2つの国には、消費財含め工場を置いている会社があるので、広い範囲の市場に対して関税メリットを享受でき、アフリカ域外からの輸入品に対抗できます。

アフリカで日本企業が何を作っているかは、こちらから見られます。

ひとまず現状については、1月1日から運用開始と発表されたものの、関税免除に向けたスケジュールに沿って減税された状況での貿易というのは、まだ始まっていません。

まだ批准書を出していない国は、5月末までに出すようにとアフリカ連合に催促されていたので、それくらいのタイミングで同時に譲許表などもほぼ固まりだし、年内に一部の国の間で開始されたりしながら、来年くらいには少しは本格運用に入るのではないかと想像しています。

アフリカ自由貿易圏(AfCFTA)協定の進捗については、当社のホームページ週刊アフリカビジネスでこれからもまめに共有していきます。

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