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日本企業にとってのアフリカのスタートアップ投資・オープンイノベーション(前編)

アフリカのスタートアップに関心を持つ日本企業が増えています。先週は伊藤忠がアフリカ5カ国(ウガンダ、ザンビア、ベナン、ガーナ、モーリタニア)でミニグリッド事業を行う英Winch Energyに20%程度出資したと日経新聞が報じました。事実とすると、これで双日を除く7大商社がすべて、アフリカにおけるオフグリッド事業、つまり太陽光などを使ってミニマムに発電し、国の配電網を使わずに電力供給する事業に出資したことになります。

アフリカスタートアップへの投資に関心が集まっている背景

アフリカで事業を行うスタートアップへの日本企業への投資は、商社からはじまり、昨年、ヤマハ発動機やダイキン工業といった現地での市場開拓を狙う事業会社へと広がりました。出資分野は、前述の(1)オフグリッド発電が多くを占めており、次に自動車や二輪車メーカーをもつ日本の強みを生かした(2)物流や配車スタートアップが多いです。

日本企業のスタートアップ投資

出所: こちらの当社資料(PDF)

活発化しているのには、ひとつはESG投資やSDGsの枠組みのなかでアフリカが対象として選ばれているというのがあります。後述しますがアフリカのスタートアップ事業領域は、人にとって基礎的なサービス(電気など)を提供するものも多く、フィット感がいいです。

また、日本市場・既存事業の成長が見込めない中、新規事業を創出、とくにtoC事業の開拓が喫緊の課題となっていたり、オープンイノベーションを進めている日本企業が増えていることが、アフリカのスタートアップへの関心増加に影響しています。リバースイノベーションの観点からアフリカで生まれたビジネスモデルを取り込んだり、日本人で構成された社内からはでてこないアイディアを取り込みたい。AIやブロックチェーンなど世界で取り組まれている新技術はアフリカにも大きな時差なく到来しています。また、ドローン事業などでよく言われることですが、アフリカならば(日本と比べて)レガシーや規制が少なく、新しいことを試せるという目論見です。

3つ目としては、アフリカで事業開拓を行っている企業の、ネガティブにいうと手詰まり感といいますか、解決策の模索としての一面もあると思います。アフリカはアジアと違い、製造拠点としての進出でなく、(日本とは対照的に)年齢が若く今後も増えていく消費者に対してtoC事業を行う先として注目されてます。一方で、アフリカで消費者向けのビジネスで成功している日本企業は大変少なく、消費者接点をもつスタートアップとの協業による自社事業へのシナジーを期待する動きがあります。

(なお、アフリカ企業・スタートアップへのフィナンシャルな投資は別途行われており、おおむね期待利回り7~12%程度となっているようです。金利が2桁になる国が多いので、定期預金でもその程度の利子になるのが投資を募る側としては大変なところです)

誰と組むのか

資金調達でみると、アフリカスタートアップへの投資は次のような数値となっています。まだ金額としては小さいですね。日本では昨年が3,500億円程度だったでしょうか、リーマンショックのあとで700~800億円だったと思いますので、日本のリーマンショック後がアフリカの2018年といったところです。

トレンド

2018年、2019年が急激に伸びていますが、これは投資先国としてはナイジェリア、投資家としては中国、投資事業としてはフィンテックが多いに伸び、ブームとなったためです。特に中国系のスタートアップの事業開始、それにともなう中国系VCの大型投資がみられ、昨年2019年は、中国がアフリカのスタートアップ投資にアクセルを踏んだ最初の年と呼ぶことができます。

先に書いた伊藤忠の投資先Winch Energyはイギリスの会社でしたが、大きな資金調達に成功しているスタートアップは、アフリカを事業地とする海外法人や、シリコンバレーや欧州のシリアルアントレプレナーが立ち上げたスタートアップが多いです。

アフリカ最大かつほぼ初の国をまたがるeコマースで、「アフリカのAmazon」、2019年にニューヨーク証券取引所に上場するまでは「アフリカのユニコーン」と呼ばれていたJUMIA(ジュミア)も、フランス人がドイツに登記した企業で、オペレーション上の本社はドバイ、技術開発やデータ管理のチームはポルトガルにあり、「どこがアフリカのスタートアップなのか」と言う声もあります。(JUMIAのビジネスモデルおよび上場についてはこちら

誰が

ただ、最近は、いわゆるディアスポラといわれる、MITやアイビーリーグ、英国の大学や企業を経て国に戻ってきたアフリカ出身の人たちや、JUMIAやUberといったスタートアップの現地オフィスで働いてから、自分で事業を立ち上げたJUMIAマフィア、Uberマフィアなどと呼ばれる人たちが増えています。

また、数としては、この背後に、大量のフォロワーがいます。アフリカはもともと多くの人が自営で生計を立てており、自分で事業をはじめることに日本ほどの気負いはありません。JUMIAの成功をみてeコマースを始めたり、Uberと同様の事業をはじめたりする人たちが多くいます。

この、たくさん存在するスタートアップの中から、誰と組むか、というのが、日本企業にとっては見えづらいところかと思います。

ピッチコンテストやアイディアソンをしても、自社の事業とシナジーがあり、かつ優れたスタートアップというのはなかなか見つからないでしょうう。こういう機会に応募してくるのは、どこかで見た事業を真似たフォロワースタートアップが多い傾向もあります。

日本においても、フィナンシャルリターンを求めない事業会社のスタートアップ投資やオープンイノベーションは、相手の選択が「緩く」なりがちだと思いますが、アフリカにおいてはなおさらです。

日本人に置き換えて考えてみれば明らかですが、アフリカ出身の人であれば現地の市場や産業実態、事業の成功パターンを知っているわけではなく、さらに、格差が大きいアフリカでは、中間層以上の人は人口的に多数を占める庶民の生活をまったく知らなかったり、または中にいるがゆえに、個別の事例は知っていても市場や産業の全体像を俯瞰して把握していなかったりしますので、適切な相手を見極めなければ、時間を無駄にするでしょう。

アフリカの企業と組むことを、全社を挙げて賛成されている日本企業はまだ少ないと思います。「成果がでていない」「何をやっているのか」という社内の声に潰されないためにも、自社にとっての利点を明確に説明できる相手を見つけることが大事です。

どうやって見つけるのか

現在、スタートアップと呼ぶ急成長を目指す企業であるかどうかに限らなければ、アフリカでも、あらゆる産業でトライ&エラーをしている会社が存在しています。自社内でどのような領域や技術を持つ相手を見つけたいかが明確になっていれば、必ず候補先は見つかります。

明確になっていない場合は、どういったスタートアップが存在しているのか、しばらく情報収集をしてみるのがよいでしょう。戦略が明確で自社に合った相手を探すフェーズではインターネット上の情報だけではよい相手は見つかりませんが、最初の「あたりをつける」「感覚をつくる」情報収集はインターネットでできます。ただし、すべて英語で検索し、英語であたりをつけてください。仏語圏やアラビア語圏の国でも、外国企業にとって必要なスタートアップや企業情報は英語でほぼカバーできます。当社が提供している「アフリカベンチャーニュース」「週刊アフリカビジネス」は、日本語ではもっとも多くの現地企業の情報を提供していますので、参考にしていただくのも一手です。

相手を判断する際には、注意点があります。まずは、「事業の実態がある」ことを確かめる必要があります。当たり前に思えると思いますが、実態がほぼないまま多くの投資やドネーションを集める企業、そういう会社に投資してしまう日本や海外の企業は比較的存在しています。プレゼンがうまい創業者の語る将来像でなく、いまやっていることを見ることです。

世界をまわってイベントやピッチを行い出資を集める、entrepreneur(アントレプレナー:起業家)ならぬentertainpreneur(エンターテインプレナー)も多いです。出資を集めるため世界中の人と会うのは起業家の重要な仕事ですが、いったいいつ事業を行っているのかという人もいます。

スタートアップ投資ですから、事業の実態がまだない段階で事業でなく人に投資することも当然あり得ることですし、オープンイノベーションにおいては、アイディアの段階で協業を決めることも多いでしょう。ですが、遠く離れて常に会えるわけでないことは進捗や状況把握をしづらくしますし、現地の市場や産業の実態を知ることを目的とするストラテジックな投資や協業の場合は思った成果を得られず、よい手ではないでしょう。

現地で事業を行っている様子を、スタートアップ側に案内してもらうだけでなく、誰か第三者にその販売先や顧客、取引関係者、倉庫や物流拠点を訪ねてもらい、実際の人とモノの動き確認することが大事です。当社が日本企業から依頼されてそうやって商流をたどってみると、ほとんど実態がなかったということは、これまでもありました。

もうひとつは、「自社にとっていい相手」を選ぶことです。自社の目指す事業領域にフィットしている、自社からも提供できるナレッジや市場、製品がありお互い活発に協業できるという事業上の組み合わせの良さや、話がスムースにできる、ビジネス上の商習慣や価値観が似ているといったカルチャー上のフィット感です。

アフリカにもスタートアップにも限らない基本中のきだろう、と言われそうですが、これがアフリカの企業が相手となった場合、ポジティブすぎる色眼鏡で見てしまったり、現地に貢献できると舞い上がってしまうことも多く、どこまでが市場や産業の特性として違いを受け入れるべきところなのか、どこからが事業として冷静に判断するべきところなのか、境界が難しいのです。

アフリカのスタートアップといえども米国や欧州の企業や起業家ばかりを見ることになったり、すでに著名な組織やVC、または日本の企業が投資している相手を選ぶといった安全パイな選択になってしまいがちなのには、このような背景もあります。事業投資やオープンイノベーションの場合、みんなにとっていい相手が自社にとってもいい相手とは限りません。

アフリカのスタートアップの事業領域については後述すると書きましたが、紙幅がつきました。このあたりで一旦終え、次回は、どこの国で、どういう事業を行うスタートアップがいて、今後はどの国・どの事業が有望かということについては、書いてみたいと思います。

今回使った資料は、以下URL先の中ほどからダウンロードできます。


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