可愛いあの子は

私が欲しかったものを
可愛いあの子はすんなり持っていった

透明な朝を真っ直ぐ裂く小鳥の囀り
木の葉を掻き分ける小さな仕草
無邪気をまとう潤んだ笑み

私は左右に動かす目を解き
寝かせた耳を上に伸ばし
爪を見せぬよう香箱座りで目を閉じる

私が欲しかったものを
可愛いあの子はすんなり持っていった

死守できたものは矜持
型枠からはずれた今日
誰にも悟られぬまま砕けた胸懐は塵に染まる