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手袋の話 【短編】【散文】 

 小学生の頃。アホなガキだったので、しょっちゅう手袋を片方無くしていた。一度や二度なら親も買い直してくれるが、本当にしょっちゅうだったので買ってくれなかった。だから手袋は片手だけだった。



 中学生の頃。アホなガキだったので、自分の左手には悪魔が宿っているのだと信じていた。また、手袋は防寒具でなく悪魔を封じ込めるためのアイテムであると考えていたので、右手にははめる必要が無かった。だから手袋は片手だけだった。



 高校生の頃。アホなガキだったので、人と違う事がしたかった。多くの人が両手に手袋をはめているが、それに逆らいたかった。だから手袋は片手だけだった。

 


 大学生の頃。アホなガキでは無くなったので、彼女が出来た。手を繋ぐとき、手袋越しではお互いの手の温もりが伝わりにくい。だから手袋は片手だけだった。           (完)



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