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資金調達はベンチャーゲーム会社にとっては難しすぎるのか!?②-プロジェクトファイナンスと受託開発の違い

プロジェクトファイナンスとは?

前回の記事では、

イザナギゲームズ がビリビリさんなどから第三者割当による出資を受けたタイミングということもあり、「ベンチャーゲーム会社の資本による資金調達」について書きました。
本記事では、「プロジェクトに対する出資-プロジェクトファイナンス」について主に書こうと思います。

プロジェクトファイナンスというと、プラントなどインフラなどの巨大なプロジェクトに対する銀行からの融資を指すことが一般的です。

プロジェクトファイナンスとは、特定事業に対して融資を行い、そこから生み出されるキャッシュフローを返済の原資とし、債権保全のための担保も対象事業の資産に限定する手法です。石油・ガス・鉱物などの資源開発や鉄道・発電所などのインフラ整備、石油化学などのプラント建設など、国内外で行われる大規模な事業を対象に、プロジェクトファイナンスを活用してお客さまの資金調達を支援しています。

三井住友銀行

ひと昔前だと、パブリッシャーでもない機関投資家がゲームプロジェクトにプロジェクトファイナンスをすることなんてほとんどなかったのです。しかし、Steamなどの出現により、多くの新興開発会社が世界に対してパブリッシュすることができるようになり、またゲームの企画やモックアップからゲームの可能性を見出せるような投資家が現れてきたことなどから、プロジェクトに対するファイナンスがゲームに対してもより多く行われるようになってきました。

受託開発でもインセンティブをもらえる契約はある

一方、大手パブリッシャーからの受託開発においても、特にメインの元請けになっていればインセンティブがもらえることはあります。一般的にはリクープ(開発、プロモーションなどプロジェクトのコストを収益で回収した)後、数%の配分になることが多いです。なぜわずか数%となるかというと、受託開発において開発会社は納品物に対してパブリッシャーから支払いを受けているからです。かかったコストに利益を乗せてパブリッシャーに請求をすることになります。ですので、マイルストーンの設定通りに納品ができていてパブリッシャーからの検収をもらえれば基本的には開発会社はその段階で利益が確定することになります。

プロジェクトファイナンスと受託開発(におけるインセンティブ)の大きな違いはパブリッシング権の帰属と利益配分比率

プロジェクトファイナンスと受託開発(におけるインセンティブ)の違いを一般的な例として箇条書きすると

プロジェクトファイナンス
・プロジェクトホルダーはファイナンスを受ける側
・特にリクープ後のレベニューシェアが大きい
・パブリッシュ・プロモーションの主体もファイナンスを受ける側

受託開発
・プロジェクトホルダーはお金を出すパブリッシャー
・インセンティブはリクープ後、数%
・パブリッシュ・プロモーションの主体はパブリッシャー

となります。あくまでプロジェクトに対してファイナンスをするというプロジェクトファイナンスと、開発委託を受託する受託開発の違いですから、このような違いがあります。

プロジェクトファイナンスって受託開発会社にとっても夢のある最高のファイナンスなんではないか?と考えられるかもしれませんが、確かにその通りではありますが、私の肌感覚だと日本の中規模以上のゲーム開発会社のプロジェクトはこのプロジェクトファイナンスにそぐわないと思われます。

なぜプロジェクトファイナンスが日本の中規模以上のゲーム会社のプロジェクトにそぐわないか?

その理由は、プロジェクトファイナンスをしている機関投資家がゲーム業界にいる金融のプロみたいな人たちだからです。ゲームのことも理解しているけど、ファイナンス的にこのプロジェクトが妥当なのか?をかなりシビアに判断しています。北米や欧州などのインディゲームクリエイターチームの作品をいち早く買いに行ったりという動きをしています。日本の中規模以上の開発会社の新規IP作品をそのシビアな目で投資効率として高いとみるか?といいう話になります。クオリティ感が高いものを作れる会社は多いと思いますが、投資回収予測が北米・欧州のインディクリエイターに比べて高いものを作れるかでいうとかなり厳しいのではないかと思います。(あくまで投資する側の予測においてで、出来上がりのゲームのクオリティとはまた別です。)

北米・欧州の新規ゲーム会社の強さ

北米・欧州のAAAタイトルに関わってきたような人たちが独立をして、ガレージで立ち上げるスタートアップベンチャーの精神で作っているゲームは正直強いです。Unity、Unreal Engineなどのミドルウェアの発達もあり、かなりクオリティ高いものを作ります。またプリプロダクションの段階でもかなり面白そうで、優れたゲームになることがわかるようなものを提示し、プレゼンします。ハングリー精神もあります。

凄く直球で言うと、日本の中規模開発会社がパブリッシャーに対して提示しているような計画だと企画に対してコストが高い場合が多くなってしまうでしょう。(それが悪いわけではなく、ゲームプロジェクトファイナンスの市場感としてそうだと思います。)

世界にアンテナを張り巡らせているプロジェクトファイナンスをする機関投資家から出資を受けることがハードルが高いですよ・・・。ということを言ってきましたが、イザナギゲームズ でもプロジェクトファイナンスを受けてきているので日本のゲーム会社だって頑張れば受けることは可能です。
ただ、もっと他の方法もあります。

リスク・リターンを当事者契約で柔軟に契約に落とす

この方法が今イザナギゲームズで様々な開発会社さんとゲーム開発をご一緒していて、一番良いと感じています。
初期の話し合いの時間や信頼関係は必要ですが、全体のコストに対しての負担割合とリターンの配分を決めて、コストダウンについても話し合い、期待リターン値をチームで高めるのです。

例えば、MyDearestさんとの共同プロジェクトであるDYSCHRONIAでは

MyDearestさんとイザナギゲームズ が完全に50%:50%のコスト負担 & リターンとなっています。
予測通りにいかないこともいろいろありますし、VRのことは完全にMyDearestさんに任せています。お互いベンチャーとして様々なところから出資は受けているものの、大規模な会社ではない2社が様々な変化が起こるゲームプロジェクトでこういった形でプロジェクトを進めるのは難しいのではないかと思います。
これを可能にしている大きな部分は、MyDearest代表の岸上さんと私との信頼関係な気がしてます。(まだゲーム完成してないですのであまり言えないけど・・・)

岸上さんのnote(いつもアツいです)

あとがき

資金調達はベンチャーゲーム会社にとっては難しすぎるのか!?の②を出すのが①を出してからかなり時間が経ってしまってすみません・・。
イザナギゲームズっていう会社は新規IPを世界に向けて発信していく会社です。①を書いてから②を書く間に
・Webトゥーン制作「ツクヨミ」
・谷口崇部

の設立が発表になりました。
まだまだ新規IPを生み出していく取り組みを直近でもいろいろ進めていますので、またそれぞれをこのnoteでもお伝えできると良いかなと思っています。フォローしておいていただけるとうれしいです!!!

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