音楽教室_東山堂

「JASRACが音楽教室から著作権料徴収へ」 ―営利を目的とした一般社団法人と、営利に控えめな株式会社。とある音楽教室―_20170205東京新聞杯&きさらぎ賞

日本音楽著作権協会(JASRAC)は「音楽教室での演奏について著作権料を徴収する」という方針を固めたそうだ。
その理由として、生徒も不特定の「公衆」にあたるとしたらしい。
ゆえに、この演奏にも演奏権が及ぶと判断し、著作権料を年間受講料収入の2.5%とする案を検討し、徴収額は年間10億~20億円と推計しているそうだ。

ここでJASRAC のサイトからJASRACの概要を調べてみた。

●団体名:一般社団法人 日本音楽著作権協会(JASRAC)
●職員数:483人(男性313人、女性170人)[2016年4月1日現在]
●事業の目的:音楽の著作物の著作権を保護し、あわせて音楽の著作物の利用の円滑を図り、もって音楽文化の普及発展に寄与すること

一言でいうととても窮屈で生きづらい世の中になってきたなというのが第一印象だ。音楽教室に通う生徒(とくに子供たち)から徴収するという事は、将来の自分たちの飯の種を自ら奪っていることにほかならない。

どうしてこうなったのだろう?
原因は大きく二つあると思う。

・CD、DVDなどの音楽ソフトの売上減少
・天下り問題のひとつで、目的のために存在していたのが、存在のために目的を利用している本末転倒状態


まず、著作権は保護されるべきであり、JASRAC(他社も)の仕事は無くてはならないものだと思う。

問題なのはその組織が時代とともに維持、拡大しづらくなっているのに保身が優先となっているように思え、「無理が通れば道理が引っ込む」状態になっているのだ。単刀直入に言うと、上記原因などから、著作物の権利、著作権は守られなくてはならないことを大上段に構え、取れる所から取る様は、まさにみかじめ料を徴収している「著作権ヤクザ」と揶揄されても仕方ない。

ちなみに

一般社団法人とは:一般社団・財団法人法に基づいて設立される、営利を目的としない社団法人(by Goo辞書)

とあるが、十分に営利を目的としている社団法人のように見えるのは私だけか。権利の方ばかりに偏重しすぎるあまり、音楽教室からの徴収となると、事業の目的の最後にある「・・・もって音楽文化の普及発展に寄与すること」とあるが、むしろ音楽文化の発展の妨げになりかねない。いや、そこに気づいているのだろうが、もはや483人の職員の給料確保が先決なのだろう。本末転倒だ。著作権の権利を守るためではなく、職員の生活を守るために四方八方収入の種を探しているように見える。

なぜか?

繰り返すが、音楽CD、 DVDの売上減により、次なるJASRACの収入源を模索する必要があるのだ。以下のグラフ「生産実績 過去10年間 オーディオレコード CD合計」を見ても明らかだ。

                 (by 一般社団法人日本レコード協会)

上記CDに限らず、カセットなどテープや音楽ビデオを含む「音楽ソフト 種類別生産金額推移」(by 一般社団法人日本レコード協会)も1998年(平成10年)「607,494百万円」をピークに2015年(平成27年)「254,449百万円」と半減以下だ。補足するが、当然このソフトの代わりにインターネットでダウンロードする音楽配信は増えてはいるが、ソフト売上とは桁が違い、全体に及ぼす影響はまだ軽微だ。

それなのに、当のJASRACの奮闘努力により「使用料徴収額の推移」は以下のように横ばいだ。


                    (by JASRAC)

この間、カラオケ店からの使用料徴収を開始したり、「まっとうな」著作権保護への努力はしている。そして、職員数推移の詳細資料はないものの、平成20年度末の職員数 が479名(by JASRAC)と職員数も現在に至るまでほぼ横ばいだ。

が、それにしても時代とともに主な収入源のソフトの売上は年々減少しているので、民間ならリストラなりで組織縮小しているだろう。しかしそうしないところが社団法人なのだ。だから本末転倒になる。

さらに、このJASRACの方針に異を唱えている人物が複数いる。しかもJASRACの会員にもかかわらず、というところが本質をついている。

テレビアニメ「エヴァンゲリオン」のオープニング曲として有名な『残酷な天使のテーゼ』の作詞家、及川眠子さんが「音楽教室で『練習のために』弾いたり歌ったりするものから、使用料をもらいたいと思ったことなどない」と痛烈に批判した。

ここまで窮屈になると、音楽教室は自作の音楽を教材にしたらどうだろう?という思いになる。しかし、会員になるとそれすら防衛策にならない。

なぜなら、過去には大槻ケンヂさんが自分のエッセイに自身が作詞した曲の歌詞を載せたところ、JASRACから歌詞の使用料を徴収されてしまったそうだ。しかもその金額が印税としてまったく還元されなかった。その件について彼が自身のコラムやラジオ、ライブのMCなどで話したとされたが、後日彼自身は「都市伝説」と火消しに徹した。

しかし私は「火の無いところに煙は立たぬ」と思っている。都市伝説ではなく、どこかで本音をぼそっと言ってしまったのだと思っている。それを裏付けるものとして、過去には爆風スランプのファンキー末吉さんが「ちゃんと著作権者に分配しろよ!!」と訴訟沙汰にした。

しかるに問題なのは、音楽教室や自作物に対しての行き過ぎた使用料徴収だけでなく、著作権者への分配、還元がしっかりなされていない可能性があるということだ。

それもそのはず、冒頭の「・・・著作権料を年間受講料収入の2.5%とする案・・・」とするようなどんぶり勘定には、使用頻度による著作権者ひとりひとりに配分することなど毛頭考えにないのだ。あるのは著作権者の保護ではなく、JASRAC自身の保護だ。

CD、DVD売上減少が今後も続く中、今後は音楽の授業など教育目的分野にも矛先を向けそうだ。発想が逆なのだ。JASRACが音楽教室、音楽授業から使用料徴収するのではなく、反対にこれから収入源になるであろう音楽に興味のある金の卵「子供たち」にJASRACが支援しなくて誰がするのだろう?自分で自分の首を絞めているのがわからないようだ。

最後に、JASRACの方針に耐えてがんばってほしいの願いを込めて、ある音楽教室のミュージックCMをご紹介しよう。本来、営利を目的とする株式会社のはずが、教室名を描写しないし、なんとも営利に控えめで宣伝色の少ない純朴な作りとなっている。岩手県の音楽教室、株式会社東山堂の3分半の作品だ。


                    (by 株式会社東山堂)

娘(新婦)のテーブルでの右手。
ピアノ上の妻の遺影。
式場の司会者が「新婦のお父様より・・・メッセージがございます」と言ってから新婦の父は一言も発していないのはよく作られている。
そして、セピア色の過去の描写はすべてサイレントだが、たった一か所だけ音が入っているのも効果的だ。

― 音楽は、言葉を超える。 ―
音楽文化普及発展に寄与する全国の音楽教室を応援してます!


さて、東京新聞杯ときさらぎ賞。
東京新聞杯は「福は内」ということで最内枠の①ダイワリベラルを狙う。
きさらぎ賞は「福は外」で福永騎手の大外枠⑧スズカメジャーを狙う。
そしてもう一頭、セピア色のサイレント、その名も音無(おとなし)調教師の⑦アメリカズカップを狙う。

(勝馬投票は自己責任でお願いします)

[過去の当たり]

◯京都金杯 ブラックスピネル6人気2着

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