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純文学は好きですか?~庄野潤三~

 京都にある古書善行堂では、善行堂倶楽部として予算の範囲内で店主の古書ソムリエ、山本善行さんが選書してくれるサービスがあります。

 この小説は、山本さんが選書してくださった中の1冊です。

 庄野順三「葦切り」。

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 僕が初めて読んだ庄野作品は、夏葉社から刊行された「親子の時間」でした。庄野家一家の日常や文学者・河上徹太郎氏夫妻との交流が優しい目線で描かれていて、とても素敵な小説でした。

 第三の新人と言えば、吉行淳之介や遠藤周作、丸谷才一など、いわゆる純文学です。

 純文学ってちょっとハードル高くないですか。物語というにはストーリーに乏しく、淡々としていて何が面白いのか分からないという意見も分かります。

 でも、僕は純文学、大好きです。

 何が好きかって、確かに淡々としていて一見、ストーリーがなさ気ですが、じっくり読むとそこには確かな世界があります。

 その世界の魅力が分かれば、あなたも純文学ファンです。

 「葦切り」は工事現場の現場監督らしき人「篠崎さん」に、著者らしき人が延々とインタビューする小説です。そのインタビューの中で、篠崎さんは公共工事の苦労ややりがい、家族のことなどを語ります。そして、篠崎さんは歌も詠むのです。インタビュアーである著者が絶妙のタイミングで「現場監督」作の短歌を挟むことで、「現場監督」の記憶が呼び起こされます。

 例えば、インタビュアーがこういう場面があります。

「もうひとつ、川の底まで水が透き通っていて、その底で、流れ静かに砂を押す見ゆ、というのがありましたが、あれはどのあたりだったんですか」

 工事現場の監督がこういう目線をもって、現場を見ていることが感動的です。

 これだけを見ても、この小説に独特の小世界があるのを感じます。

 ミステリや感動の物語も好きですが、こういう静謐な世界こそが、純文学の魅力だと思います。

 僕のおすすめの純文学作家は、例えば、堀辰雄、遠藤周作、外村繁などです。今の作家だと村上春樹や保坂和志が好きです。

 もしよかったら、図書館ででも読んでみてください。

 この静謐な世界の魅力を1人でも多くの人に共感してもらいたいです!


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