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渋谷区も那覇市も札幌市も、まだ同性婚は認めていません。

これ、本当の話。
僕らは2017年6月に那覇市のパートナーシップ登録と英国大使館にて英国の法律に基づく同性婚を行いました。

結構、同性婚やらパートナーシップやらの話とかを友人にすると勘違いされている方が多いので、敢えてこのエントリーで説明しようと思います。
まぁ、当事者が周りにいないとまず関わることのない制度なので、知らないのも当然だと思います。
現在、日本で同性パートナーシップ制度は6つの自治体で導入されています。

北海道:札幌市、東京都:渋谷区、世田谷区、三重県:伊賀市、兵庫県:宝塚市、沖縄県:那覇市

さらに福岡市や大阪市が導入予定しているそうです。

同性パートナーシップとは何か?

那覇市の例:

那覇市総合計画及び「性の多様性を尊重する都市・なは」宣言の理念に基づき、人がその多様な性を生きることは人権として尊重されるものであり、その中で築かれるパートナーシップもまた尊重されるべきものであることから、誰もが差別や偏見にさらされることなく、安心して暮らすことのできるまちづくりを目指し、「那覇市パートナーシップ登録の取扱いに関する要綱」を策定しました。市では申請に基づき、「戸籍上の性別が同じである2人」が互いを人生のパートナーとするパートナーシップ登録を行い、証明書を交付いたします。この制度は、法的な効力を有しませんが、市営住宅の入居申し込みや医療機関での手続き等での活用について、関係機関と調整を進めていきます。市民の皆様におかれましては、誰もが差別や偏見にさらされることなく、安心して暮らすことのできるまちづくりのため、ご理解とご協力をくださいますよう、お願いいたします。

ここで敢えて他の自治体と比べる必要ものないので、割愛させていただくが、まぁ、大体どの自治体もこんな感じの文章です。
※渋谷区のみ条例としています。

そう、上記の規定にもあるように、パートナーシップ制度は”法的な効力を有しません“。基本的にはあくまで自治体からの医療機関や民間企業への”お願い”なのです。自治体レベルで法律を変えることは不可能ですよね。

もちろんこれによって、多くの同性カップルが今まで状態と比べてカップルとして受ける恩恵は確実に増えていますが、パートナーシップ制度は法的効力のある婚姻とは全くの別物だということを知って欲しいのです。

さて、パートナーシップ制度が法的効力を持たないとどうなるか。実体験を元に共有したいと思います。

※いいことも沢山ある中で、問題指摘の為に敢えてネガティブな部分を提示しています。

・該当の自治体を転出するとパートナーシップ登録を解除しなければならない

制度は、自治体レベルで行なっているものなので、その住民じゃないと、認められません。僕らの場合、庭さんのビザの問題やらやらで日本を出ることにしたので、登録を解除せざるを得ませんでした。

・社会保険の扶養に入れられない

僕は会社員で社会保険に入っていたのですが、仕事なく収入もなかった庭さんを家族として扶養に入れられませんでした。前年度はしっかりフルタイムで働いていたので、毎月の国民健康保険料がかなり高くついてしまいました。

・外国籍パートナーの場合、配偶者ビザが認められない

これはかなり死活問題ですが、僕の場合はパートナーがイギリス国籍のため、ビザの問題で常にヒヤヒヤしていました。男女の国際結婚であれば婚姻届を出して、条件の書類さえ揃えらればほとんどの場合、日本人の配偶者等の在留資格で無条件の滞在と就労が認められますが、パートナーシップの場合は特別な在留資格は認められませんでした。

一度チャレンジしてみた時の話がこちら

その他、以下のような難点があります。

同性カップルが排除された主な権利(NPO法人「EMA日本」のサイトから抜粋)

<<婚姻に基づく法的権利>> 
・配偶者の実子、養子の共同親権
 ・配偶者が死亡した際の遺産相続▽遺族年金▽公的年金の死亡一時金
 ・医療保険の被扶養者になる権利
 ・労災補償の遺族補償、遺族給付
 ・所得税の配偶者控除 ・相続税の配偶者控除
 ・医療費控除のための合算
 ・配偶者のための介護休業取得
 ・外国籍の配偶者が配偶者ビザや日本国籍を取得する資格
 ・配偶者からの暴力防止、保護を定めたドメスティックバイオレンス(DV)防止法の適用
 ・離婚時の慰謝料▽財産分与▽年金分割
 ・公営住宅への入居資格婚姻に基づく法的権利>

※公共住宅への入居資格などは自治体によってパートナーシップ制度で代替してるところもあります。

<<民間のサービス>> 
・民間生命保険の死亡保険金受け取り
 ・配偶者として葬儀に参列
 ・配偶者が入院した際の面会権、医療行為への同意
 ・企業の慶弔休暇▽慶弔見舞金▽扶養手当▽家族手当
 ・自動車保険の運転者家族限定特約
 ・携帯電話の家族割引
 ・クレジットカードの家族カード
 ・交通機関の夫婦割引、航空会社のマイレージの家族サービス民間のサービス

※企業によっては既にパートナーシップ制度を男女の婚姻と同等の扱いにしているところもあります。

他の国はどうなの?

現在、世界各国で同性婚に対する様々な議論が行われています。
いち早く2001年に同性婚を施行したオランダ をはじめ、多くの国が同性婚またはそれと同等の権利を与える法的なパートナーシップ制度を既に有しています。現在、主要国首脳会議(G8)のメンバーで、同性婚の権利を与えていない国は日本とロシアのみです。

一方で、現在も主にアフリカの一部やサウジアラビアなどの国で結婚は愚か、同性愛自体を死刑犯罪としている国もあります。かつてはヨーロッパでも同性愛を犯罪としていた歴史もあり、それぞれの正義が混在しています。

性的少数派に対する世界の国と地域の対応状況

赤〜黄色:犯罪または法律がない 77の国と地域
青:保護をするルールがある 85の国と地域
緑:同性婚や法的パートナーシップがある 47の国と地域

(出典:https://ilga.org/) ※PDFは下記から

まぁ、色々と問題点を書いてきましたが、僕は、自治体が率先して導入したパートナーシップ制度にとても感謝しています。勤務先の会社も理解があり、那覇市のパートナーシップを結婚同等の扱いにしてくださいました。

公の機関に自分たちの関係を認めてもらえただけで、「これで、こそこそしなくていいんだ。」と勇気をもらえました。

ただ、同性カップルを巡る日本での問題は自治体のパートナーシップ制度で解決した訳ではありません。

当事者が身の回りにいない方は想像しにくいかもしれませんが、僕らは”当たり前”のことを出来る前の段階でつまずいてしまいます。真剣にお付き合いしているパートナーと将来を想像するのが難しい状況下にいる人が大勢います。交際の末、結婚や子供を持つことが当たり前ではありません。まだまだ問題が沢山あるという知って欲しくてこのエントリーを書きました。

LGBTに限らず、マイノリティーの問題は非常に気づきにくいです。周りに見えなくても、すぐ近くで悩んでいるかもしれません、自分の子供が将来、性思考で苦しむ世界を誰も望んでいません。自分の大切な人がもしかしたら、悩んでいるかもしれない、苦しんでいるかもしれないと思ったら、ぜひ先入観を捨てて話を聞いてみて欲しいと思います。

資料:[ 日本における同性婚容認の可能性 — アメリカ合衆国最高裁判所の同性婚容認判決の論理を示唆として — 上 田 宏 和]論説>

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