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【イタリア旅日記04】北イタリアの「おうちごはん」

2022年イタリアに旅して思ったことあれこれ 〈第4回〉 

 あらためて言うのもなんだか照れるけれど、イタリアでは何を食べても美味しい。今回はミケーレの家で食べることも多かった。コロナ禍で「おうちごはん」が多くなったのはイタリアも同じらしい。自身の生活の変化もあって、ミケーレも自炊が多くなったと言っていた。しかし、イタリア人らしいと言うか、ミケーレらしいというか、美味しくないものは許せないらしく、料理に取り組む姿勢も真剣だ。ハム、パン、ワイン、チーズなどの定番食材もそれぞれ買う店が決まっている。

 いろいろ食べさせてもらったが、初めて食べてすごく美味しかったのは「ラディッキオのリゾット」だった。その時はミケーレの長年のパートナーのカルロッタが作ってくれた。カルロッタは1年前、通勤は難しいところに仕事を得て、平日は職場の近くで暮らしている。なので、ミケーレとは今は週末婚のようなものらしい。それでも相変わらずとても仲がいい。カルロッタは文字通りミケーレのミューズだ。

ラディッキオのリゾットは平たく広げられていた

 ラディッキオというのは、北イタリアの冬の定番野菜だそうで、チコリの仲間らしい。日本でも紫チコリは見かける。味はやはりチコリっぽくて、ほろ苦甘い。見た目では紫キャベツに似ているが、こちらは文字通りキャベツの仲間なのでまったく別物らしい。

 日本に帰ってから、イタリア食材店で「あれはラディッキオでは?」と思う野菜を見つけた。「トレヴィーゾ」という札がつけられている。トレヴィーゾといえば、トークイベントをやった場所ではないか!うきうきしながらお店の人に尋ねると、それはまさにラディッキオで、国内でも生産者さんがいるらしい。名前の由来は、トレヴィーゾが元々の生産地だからとのこと。「トレビス」として売られているものも同じで、「トレビス」は「トレヴィーゾ」のフランス語読みだそうだ。なんだかいろいろな場所や出来事がつながってうれしくなる。

 ラディッキオのリゾットの作り方は極めてシンプルで、ラディッキオペースト(細かく切ったラディッキオを炒め煮する)を作って、お米(イタリアの長いお米)と煮て、塩こしょう。味だしに腸詰めウインナーを入れて(これはカルロッタ流らしい)、食べる時にパルミジャーノを好きなだけチーズおろしでおろして食べる。ほろ苦甘いラディッキオにチーズの塩気、腸詰めウインナーのコクが口の中で混じり合う。

ラディッキオのソースは作り置きしておくとのこと

 食べたものの中でもうひとつ印象的だったのは、「ズブリゾローナ」という北イタリアの焼き菓子。ロンバルディア州マントヴァ県が発祥の地らしい。とうもろこし粉のザクザクした生地にアーモンドが入っている素朴なもので、割るとボロボロと崩れる。ビスケットを大きく分厚くした感じで、直径は10センチくらい。

 だが、印象的だったのはズブリゾローナそのものより食べ方だった。ズブリゾローナにグラッパをかけて食べるのだという。ザクザクした生地がしっとりしておいしいのだそうだ。ザクザクがしっとりになるほどかけるって?とひるみながらもやってみると、甘すぎない生地に強烈なグラッパが不思議なほどに合う。

手前にあるのがズブリゾローナ

 北イタリアはグラッパの名産地。生まれも育ちもパドヴァのミケーレにとってはなじみ深いのもうなずける。ズブリゾローナを食べた後はもちろん(と彼らは言う)エスプレッソだが、飲んだ後のカップにまたグラッパを入れて、底に残ったエスプレッソと混ぜて飲む。"rasentin"という習慣だそうで(英語ではrinse?)「洗い流す」ということらしい。グラッパで洗い流す!でも、濃いチョコレートのようなエスプレッソに、まさに葡萄の皮の甘みと渋みを凝縮したような複雑な風味のグラッパはやはりぴったりで、最後にもう一品デザートが出てきた気分になるのだった。

(↓解説ビデオを見つけました)


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