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【イタリア旅日記06】賑わいが戻ったヴェネツィアを訪ねる

2022年イタリアに旅して思ったことあれこれ 〈第6回〉

 コロナ禍の規制から解放されたヴェネツィアは、かつてと同じように賑わっていた。この冬はヨーロッパも異常気象らしく、11月に入っても日中は10度を超える日が続いていた。陽光の下、誰もが明るい顔をしていて、足取りも軽やかだ。 

みなさん結構、薄着

 私たち一行はミケーレ、マルコ、ブリッタの4人。マルコとブリッタは2015年にパリ、fotofeverで展示をした時に出会った。マルコは当時、リグーリアで大型観光船の船長をしながら海洋生物の写真を撮っていた。パートナーのブリッタはハイキングのガイド。出身はドイツだが、イタリア在住歴の方がずっと長い。その後もFBやメッセンジャーではつながっていて、イタリアで展示があると伝えると、行くよと気軽に言ってくれた。

 その時はリグーリアとの距離感がわかっていなかったのだけれど、会ってから聞くと車で4時間かかるという。つい申し訳ない気がしたものの、それはこちらの勝手な罪悪感なのかもしれない。パドヴァとヴェネツィア観光ができるから嬉しいんだ。ずいぶん前に行ったきりだからね。実際にふたりはいつもとても楽しそうで、一緒にいるだけでこちらの気持ちも弾んでくる。ちなみに今回初めて、ブリッタはマリオより13歳年上だと知った。でも、そんなことは感じないし、感じさせないし、そもそもどうでもいい感じが素敵だ。

バンクシーが2019年5月に描いた「難民の子供」。煙の部分がかなり消えている?

 ヴェネツィアではミケーレがガイド役。日頃は観光業に従事しているマルコとブリッタもその日は完全に観光客であることを楽しんでいた。私もこれまで来た時はひとりだったので、ガイドブックと首っ引きで名所巡りをしていたが、今回はついて歩くだけ。

対岸の絵になるふたり

 ミケーレとマリオが行きしなから熱く語っていたのは「コルト・マルテーゼ」という漫画についてだった。イタリアの漫画家、ユーゴ・プラットによる作品で、コルト・マルテーゼは主人公である海賊の名前。1967年からさまざまなシリーズが発表されていて、イタリアでは国民的漫画くらいの位置付けらしい。日本でいえば、アトム?ドラえもん? 何とマリオは背中にコルト・マルテーゼのタトゥーまでいれている。「見せて」と言うと、なんの迷いもなくシャツを捲り上げてくれた。

これが「コルト・マルテーゼ」のヴェネツィアガイドブック。私が知らなかっただけで、日本でも「知る人ぞ知る」なのかも?

 それとヴェネツィアがどう関係するのかというと、作者は波瀾万丈の人生だったらしいが、ヴェネツィアで漫画を描き始め、その後もヴェネツィアを「世界の中心」と言っていたそうだ。その彼と30年にわたってたびたびヴェネツィアを歩き回った二人のデザイナーの友人が、コルト・マルテーゼがヴェネツィアを案内するという体で書いたガイドブックが秀逸だというのだった。日本ではあまり知られていないかもというと、ふたりはがっかりしていたというか、ほぼ憤慨していて、ミケーレはヴェネツィアでそのガイドブックの英語版を買ってくれた。

ミケーレが本を買ってくれたのは、店内にゴンドラや桶がディスプレイされている書店「Libreria Acqua Alta」意味は「高潮書店」!

 そんな話を次から次へと聞きながら、しょっちゅう休憩と称してはワインを立ち飲みする。「バーカロ(barcaro)」という立ち飲み屋みたいな店がそこここにあって、「チケット(cicchetto)」というカナッペやフライなどの小皿料理的なものつまむ。さっと飲んで食べてまた歩く。1日というか、実質半日になんとそれが5回。みんな元気すぎる。あるいは私が軟弱なのかもしれないけれど、人生楽しむためには体力をもっとつけなければと痛感する。ミケーレとマリオは結構お腹が出てきているけれど、気にもしていない様子だ。これが幸せの証拠さ。友だちに会って、しゃべって、食べて、飲んでるってことなんだから!

ひたすら歩きつつ、こんな休憩パターンが半日で5回。

 「そうだよねー!」愛すべきイタリアの友は妙に説得力に富んでいて、日ごろは懐疑心が強くて、何かと斜めにものを見がちな私もついついそう言ってしまう。ありがとう、ミケーレ、マルコ、ブリッタ。


(2019年11月の高波の後、12月5日付のバンクシーのインスタを見つけました↓)


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