見出し画像

【イタリア・ドイツ旅日記11】旅で出会った言葉「人生は一度きり」

2022年イタリアに旅して(最後にドイツに寄って)思ったことあれこれ 〈第11回〉

 フランクフルトの市場「クラインマルクトハレ」の一角にお寿司屋さんがあった。お寿司屋さんでありながら、包丁、日本茶を売っていて、包丁研ぎも? シルバーヘアの店の主人は60代と思われる日本人。精悍という言葉がまさにぴったりの風貌。堂々とした雰囲気は、この地に根を下ろし、自信を持って生活している人のものだった。

 午後遅い時間でお客さんも一組しかいなかったので、思い切って声をかけてみた。「このお店はいつから?」という私の最初の質問に「どうしてそんなこと知りたいんですか」と冷ややかに返されて、質問が唐突だったか、あるいは向こうが気難しいのかと思いながら、自分のことを簡単に、でも正直に話す。それで、心を許してくれたのか、店の歴史やご自身のことを話してくれた。(そのうち、お茶も出してくれた。ありがたい……)

 日本の大学を卒業してからは一般企業に就職し、海外駐在が長かったらしい。英国のインベストメントバンク、ケルンのオペラ座のマーケティングマネージャーを経て、2001年、49歳の時に包丁とお茶と箸の店をフランクフルトの中心、旧オペラ座(アルテオーパー)の近くにご夫婦で開店。

 「怖いもの知らず」だったというものの、京都有次の包丁を求めて、ドイツのミシュラン星の料理人が次々に訪れたという。そのうち、お寿司、包丁研ぎ、料理教室、包丁研ぎ教室も始めた。そして2005年にクラインマルクトハレに移転。

 やっていることの取り合わせはちょっと不思議に思われるけれど、自分たちにできること、素養と経験をすべて使って、自分たちにしかできないビジネスをしていると胸を張る姿はとても素敵だ。

 私自身、これまでやってきたことがとっちらかっていて、さあ、これからどうするかと思っていたところで、やれることは全部やればいい、出し切ればいい、それが自分にしかできないことだと勇気づけられる。

 それでも挑戦の人生は、ビジネスマンとしての計算はあったにしても、常に順風満帆ではなかっただろう。何がこの人の原動力なんだろうと探っていると、彼は言った。

「人生は一度きりですよ」


翌日の朝、日本に帰るという日に訪ねたので、お寿司を食べることはできませんでしたが、フランクフルトで今、一番美味しいお寿司が食べられるのはこの店「Kinya」だそうです。フランクフルトに行くことがあったら、ぜひ訪ねてみてください! 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?