見出し画像

CEATECレポ:[Ch3-102]企業のイノベーションを実現する“デザイン”のチカラとは ~デザイン経営を実践するために必要なこと~

2020年10月20日、テクノロジーの祭典CEATECが開催されました。

今年はコロナの影響により全プログラムオンラインで開催されました。サイトにアクセスできない、アクセスできても途中でアクセスできなくなる、出展ブースのUIが悪いなど致命的な部分はありつつも、大企業の経営層からスタートアップ、現場の最前線、アカデミック領域の有識者が集まる場所はなかなかないのでとても楽しむことができました。

以下、1日目に開催された(はずだったがログインできない問題が発生したため2日めに振替え放送もされた)[Ch3-102]企業のイノベーションを実現する“デザイン”のチカラとは ~デザイン経営を実践するために必要なこと~を勉強用にまとめました。


登壇者

ファシリテータ 日経BP総合研究所 上席研究員 デザイン・イノベーション センター長 丸尾 弘志 氏
Speaker 経済産業省デザイン政策室 室長補佐 菊地 拓哉 氏
Speaker 一橋大学大学院経営管理研究科教授 鷲田 祐一 氏
Speaker ソニー株式会社 VP. クリエイティブセンター センター長/ソニーデザインコンサルティング株式会社 代表取締役社長 長谷川 豊 氏
Speaker 株式会社ドングリ 代表取締役 ミナベトモミ 

なにがわかったか

・デザイン経営を行政、リアルな現場、大企業、アカデミックの視点から
・デザイン経営はなぜ、何が重要なのか、本質的な価値は何か


以下、講演で各スピーカーが話したことを記録しました。

 デザイン経営の現在地

ソニーモバイルコミュニケーションズの事例より。見えない裏側の部分と、世に出す部分。その両方でビジョンを実現することがデザインの1つめの価値。2つめの価値はSonyのSports×AIの事例からみてとれる。その価値とは技術の価値を視覚化していくこと。(長谷川様)

サービス開発をキモにしている会社において、デザイン経営はいち早く発展してきた。これまで定量的な指標をベースに成長してきたが、世の中が変化する中で、定量だけで世の中のニーズ、体験にフィットするものをつくることは難しいということが分かってきている。これまでマーケの下についていたデザイン組織が経営に直轄するようになった。経営者の片腕となって意思をいかに伝えていくのか、プロダクトをいかに早く素早くユーザーにフィットしたものを届けていくか。今後重要になっていく。(ミナベ)

経済産業省、特許庁が発表したデザイン経営宣言が話題になった。以前は半信半疑であったものが、富士通やSONYなど大企業がやっていることで、価値のあるものなのではと世の中が変化している。デザインの価値はまだみえていないが、そういったものをマーケやテクノロジーと同じように、後押ししていかないといけない。ITベンチャーなどの方が感度が高い。その他注目しているのは昔からのモノヅクリの企業。変革という観点で実行しようとしているのが目に見えていて面白い。今まで遠心力として使われていたものが求心力として活用しないといけないとなったのが大きな変化であると思う(鷲田)

デザイン経営宣言後、様々な取り組みが行われている。デザイン経営宣言後、「高度デザイン人材」が発表された。デザインスキルだけではなくビジネススキル、リーダーシップを身につけることも大事であると定義されたことが大きな特徴である。教育や、デザイン人材、デザイン経営についての議論も行われており、どういった課題がありどう乗り越えていくかが話されている。日本はアートやクリエイティブが経営と遠いところにあることが課題であるという流れが、デザイン経営とは別の軸でも発生している。(菊池)

今後への期待

高度デザイン人材育成の取り組みは高く評価している。デザインマネジメントを担う人材が不足していると感じる。いかにデザイナーが、マーケティング、ブランド、経営のPL、PSなどとデザインを越境をいかにして接合していくのかが重要であると、現場では議論になっている。デザインシステムがいかに経営のシステムに接合していくのか、アカウンタビリティを果たし実践として成果を出した上で経営数値にいかに貢献できるのか、解像度がデザインマネージャーレベルでも低いのが現状。それらをまとめて体系化できたらと期待している。(ミナベ)

交渉力などビジネス的スキルを含めた育成という観点、デザイン知財をいかに企業にフィードバックできるかという2つの観点で考えている。特に後者に関しては、効果指標というものがあればいいと期待している(長谷川)

ソニーなど企業の取り組みと協調し国が作っていくということもあり得ると思っている。(菊池)

最終的には「金」に帰着するべきだと思っている。現状、会計上にデザイン関連の指標が存在しない。人件費、研究開発費に間借りさせてもらっている状態。これは慣習の問題。デザインを客観的にみることができていない。しかし以前まで技術、テクノロジーも同じ問題を持っていた。まず経営者が評価し、そして消費者が評価することで現在のように評価されている。デザインも、現在のようにマーケ的に消費者に評価されるかまず試してみるようなやり方では状況は変わらないと感じる。まずは経営者がデザインの価値を会計の指標、どつまりれだけ使ったのか、最終的なリターンはどうだったのか、落としていくことが必要と感じる。(鷲田)

 一般のビジネスマンへの提言

-求心力と遠心力という視点だと遠心力の視点で話したい。現在の学生にとってデザインは普通のこと。しかし次のステップ、つまり「面白い体験」としてのデザインではなくキャリアとして考えるステップに進むべきである。デザイン人材の提示は国主導で行われているが浸透はしていない。しかも年齢が上がるに比例して従来のやり方にしがみつきがちであると感じる。(鷲田)

トップを志している人々が、デザインに対しての理解を深めていくべき。デザインを実践しているスタートアップが大きくなることで社会に浸透していくのではないか。(長谷川)

スタートアップの中でもデザイン経営がうまくいく組織とそうでない組織がある。前者は文化としてデザインが根付いている組織。後者はトップが「デザイン組織作ったからあとはよろしく」と丸投げし、文化として根付いていない組織。いかにデザインを自分ごととして学習しカルチャーにしていくことが必要。定量と定性が対立することは必然的にある。どちらが優れている、と考えるのではなく、デザインが深く追求すれば成果に結びついているのは当然のことであるため、対話するカルチャーが必要。(ミナベ)

カルチャーとして経営層のコミットが必要ということは大前提。あとは人材の活用。必要な人材をどう活用するか、組織デザインの観点も必要。(菊池)

コロナ禍におけるニューノーマルに対し、デザインが取り組んでいること

リモートの中でコミュニケーションのあり方、PJTが何を目指しているのか、分散型のクリエーションを行うスキルがこれから必要。リモートの価値として今まで参加できなかった人々が参加できるようになったことがあるが、コミュニケーションロスという課題も同時に発生している。「心」というものにデザインが入り込み価値を発揮する余地があると考えている(長谷川)

コロナ禍において組織の効率化、デジタルトランスフォーメーションをデザイン組織が担うことが多くなっている。背景として組織文化、政治の壁に、プロトタイピング的なデザインのスキルが役立つというところがある。組織の内部に対しデザインがコミットすることが今後求められると思う。(ミナベ)

コロナ禍におけるデジタルトランスフォーメーションのインパクトは大きい。イノベーションと言っていいと思っている。今後リアルとリモートの融合をしていかないといけない。そのためにはデザインの素養が必要。現状、現場はリアルかリモートか、0か1の状態。どのようにすれば人々の創造性が一番発揮されるか。人々は前向き。この流れを持続させることが必要(鷲田)

イノベーターとしてのデザイン人材、デザインの素養をもったアントレプレナーの需要がどんどん増えていく。地方創生などあらゆるフィールドで求められている。どう作っていくか、支援していくか、仕組み作りをしていきたい。(菊池)


おもったこと

デザインの価値は依然として抽象的なものに留まっているものの、どう具現化するか、ネクストステップの足がかりはできていると感じた。それは「デザイン経営」宣言を始めとした明文化や、ベンチマークとしてのスタートアップの存在など。あとはいかにネクストステップの解像度を上げていくか。答えのない世界だと改めて思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?