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北朝鮮の世界最大の特殊部隊 前編

導入

北朝鮮は世界で最大の特殊作戦部隊を保有しており、現在は少なくとも18万人以上20万人前後の規模であると考えられています。これらは1つの組織にまとまっているわけではなく、第11軍団もしくは暴風軍団、軽歩兵教導指導局に所属している部隊と、総参謀部偵察総局、砲兵局、海軍、空軍、陸軍の軍団・師団に属する特殊部隊が存在し、各種任務に合わせて散らばった組織構造を持っています。北朝鮮の特殊部隊は基本的に偵察隊、軽歩兵、狙撃隊、航空陸戦部隊(北朝鮮では空挺を航空陸戦と呼ぶ)に分類されます[1]。

これらの特殊部隊は戦術、作戦、戦略のレベルで活動し、師団の通常作戦の支援から政府高官・韓国大統領の暗殺・拉致まで幅広く任務を担います。また今までに何度も休戦協定を破って活動を強行してきた実績があり、これらの特殊部隊の引き起こした日本が参考するべき最も重要な活動のひとつは1968年10月30日の蔚珍・三陟(ウルチン・サムチョク)武装共匪浸透事件です。この事件は北朝鮮の特殊部隊の1個中隊がゲリラ拠点を建設するために韓国国内の8つの地点に海から上陸した事件で、米韓軍の対処により特殊部隊は110人以上の死者を出して放逐されました。しかしこの事件の対処の為に韓国軍は延べ7万人以上の動員を必要とし、民間人23人を含む63人の犠牲者が発生しました[2]。

北朝鮮政府の中心的な意思は未だに朝鮮半島の北朝鮮政府主導の統一です。金正恩国務委員長は朝鮮人民軍が正規戦ではアメリカの率いる米韓連合指揮所(CFC)に対して劣勢であることを認識している発言をしており、またその旨は北朝鮮の軍事思想にも筆頭に記されています。そのため後述する敵中第二戦線のドクトリンを通じて非正規戦を展開し米韓連合指揮所(CFC)の戦闘効率を低下させることが重要であると考えており、正規戦での劣勢を特殊部隊による非正規戦により覆そうとしています[3]。

北朝鮮の特殊部隊は後述する偵察大隊(RGB)が日本に直接の脅威をもたらしています。偵察総局は潜水艦を保有し、偵察大隊の一部を在日米軍基地や日米のC4ISR(指揮・通信・統制・コンピューター・知能・監視・偵察)機能、民間の重要インフラを無力化するために派遣するかもしれません[4]。自衛隊は国防白書にて同様の事態に対する対処について説明しており、「速やかに情報収集態勢を確立し、沿岸部での警戒監視、重要施設の防護並びに侵入したゲリラや特殊部隊の捜索及び撃破を重視して対応する」としています[5]。

脚注

  1. North Korea Country Handbook 1997
    ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-1

  2. Countering North Korean Special Forces 13p-14p

  3. Threat Tactics Report: North Korea p4
    Threat Tactics Report: North Korea versus the United States p2
    朝鮮豆知識 4 軍事 主体歴105年(2016)
    OEE Red Diamond November 2017 p6

  4. 北朝鮮の特殊部隊、2000人以上が日本潜入の可能性…原発や東京を攻撃も

  5.  3 ゲリラや特殊部隊による攻撃などへの対応

Red Diamond Threats Newsletter November 2017 TRADOC G-2 ACE-TI
ATP 7-100.2 North Korean Tactics TRADOC

北朝鮮の特殊部隊の任務

北朝鮮の特殊部隊の任務は5つのカテゴリーとハイブリッド戦に分類されます。

・戦略/作戦/戦術偵察
・正規戦作戦との連携
・敵中第二戦線の確立
・米韓連合司令部(CFC)の特殊部隊への対抗
・国内警備
+ハイブリッド戦

Red Diamond Newsletter November 2017 p6

戦略/作戦/戦術偵察

部隊編成と任務に基き戦略的、作戦的、戦術的な偵察を実施します[1]。

正規戦部隊との連携

主力正規部隊の作戦を直接援護するために正規戦部隊と連携して作戦を実施します[2]。

敵中第二戦線の確立

敵中第二戦線は、北朝鮮の軍事戦略である"配合(배합)"を担う一翼であり、戦術ドクトリンです。配合とは毛沢東のゲリラ闘争と古いソ連の軍事戦略を文字通り配合したもので、正規戦(Conventional Warfare)による第一戦線と不正規戦(Irregular Warfare)により敵戦線の後方での指揮統制(Command and Control: C2)、戦闘支援部隊(Combat Support: CS)、後方支援(Combat Service Support: CSS)への攻撃を行う敵中第二戦線が合わさることで両者の力関係の優劣を覆そうと試みるものです。北朝鮮の特殊部隊は非正規戦部隊として、空挺機動から南浸トンネルまで様々な手段を用いて敵後方へ浸透し、敵中第二戦線の確立を目指します[3]。

米韓連合司令部(CFC)の特殊部隊への対抗

朝鮮人民軍の通常部隊の後方地帯にて、浸透してきたCFCの特殊部隊からCS、CSSの部隊を守ります[4]。

国内警備

特殊部隊は北朝鮮政府と金一族にとっての最も政治的に信頼できる部隊であり、北朝鮮国内で動乱が発生した際にはその対処を担います[5]。

ハイブリッド戦

特殊部隊は戦闘行為が始まる前に、既に韓国国内に潜伏する工作員に協力してハイブリッド戦を支援するでしょう[6]。

脚注

  1. North Korea Country Handbook 1997
    OEE Red Diamond November 2017 p6

  2. Threat Tactics Report: North Korea
    OEE Red Diamond November 2017 p6

  3. Joint U.S.-Korea Academic Studies 2018 p347
    North Korea Country Handbook 1997 p102
    Threat Tactics Report: North Korea p13-14

  4. North Korea Country Handbook 1997 p102
    OEE Red Diamond November 2017 p6

  5. North Korea Country Handbook 1997 p102
    OEE Red Diamond November 2017 p6

  6. ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-5

北朝鮮の特殊部隊の構造と目標

・偵察大隊
・偵察旅団
・軽歩兵旅団
・狙撃旅団
・空挺部隊
・海上狙撃旅団
・海軍軽歩兵旅団
・軽歩兵師団
・Deep Artillery Reconnaissance Battalions

朝鮮人民軍の特殊部隊一覧表 参考:OEE Red Diamond Newsletter November 2017 Table 1 p7

偵察大隊(RGB)

総参謀部偵察総局(Reconnaissance General Bureau: RGB)隷下の偵察大隊(RGB)は、各500人程度、合計約4000人により8個大隊を構成していると見られています。しかし偵察大隊(RGB)には朝鮮半島外で活動するための更なる大隊の存在が疑われており、それらがグアム、日本などを攻撃する可能性があります。下記に述べる同名の偵察兵による大隊、偵察大隊と区別する為に偵察総局の偵察大隊は偵察大隊(RGB)と表記します。朝鮮人民軍の前進軍団は自身の保有する偵察部隊と、下記に述べる偵察旅団に加えて、1軍団につき1個ずつ偵察大隊(RGB)を受け取ります。この4個の偵察大隊(RGB)はDMZを浸透することに特化しており、前進軍団がDMZを超える際の先導部隊として機能するでしょう[1]。

偵察大隊(RGB)は戦略的・作戦的なレベルで活動し、以下の任務に従事します。

  • 情報収集

  • 戦略目標への攻撃

  • 軍事的・政治的指導者の暗殺

また行われる可能性のある任務として

  • 民間人を狙撃することでパニックを醸成する事

  • C2(Command and Control: 指揮統制)センターへの攻撃

  • 民間人の戦争への反応の観察

が含まれている可能性があります[2]。

偵察旅団は陸路、南進トンネル、潜水艦などを用いて韓国に浸透します。偵察総局はサンオ級、ユーゴ級、ヨノ級の小型潜水艦を保有しており、これらは外国への浸透にも使用されるでしょう。詳細な解説は後の項で行います[3]。

North Korea Country Handbook p142 より1個偵察大隊の編制。この情報は古すぎるか正確ではない恐れがあります。

偵察旅団

偵察旅団は前進軍団と機械化師団の隷下に3個旅団、17個大隊、3300-4500人が存在します。この偵察旅団と隷下の偵察大隊は上記の偵察大隊(RGB)とは完全に別物である点に注意してください。偵察旅団は大隊レベルで各前進軍団に分配されます。偵察大隊は1個大隊当り450人もしくは500人であり、基本的に10人の分隊規模で活動し、任務よってはこれより小さな規模で活動することもあります[4]。

分配された偵察大隊は作戦的・戦術的レベルで活動します。偵察大隊の主要な任務は以下の通りです。

  • CFC部隊の配置を捜索し、その意図を確認する。※これに関しては後編で詳細解説

  • 間接火力部隊の観測者となる。

また状況によっては以下の更なる任務に従事する可能性があります。

  • 飛行場、海軍基地、港湾設備、POL(燃料、オイル、潤滑油)設備、ミサイル射場のような高価値目標の攻撃
    [5]

偵察大隊は地上の浸透路にてDMZを縦断します。いくつかの地上浸透ルートには次の項にて説明するDMZの地下に事前に建築された南浸トンネルがつかわれます。地上や南浸トンネルを使用する特殊部隊員はCFCとの戦闘を避けるために韓国軍の制服を着用したり民間人の格好をする可能性があり、偵察旅団の兵士は恐らく英語を話すことすら可能であり、偵察旅団隷下の部隊の中には女性によって構成された部隊もいくつかあります[]。

偵察旅団の偵察大隊は配属される軍団との長期的な関係により、密接な協力と効率的な能力発揮が可能であり、配属される軍団の正面の地形に熟知しています[6]。

North Korea Country Handbook p142 より1個偵察旅団の編制。この情報は古すぎるか正確ではない恐れがあります。

軽歩兵旅団

軽歩兵旅団は朝鮮人民軍の第11軍団と偵察総局の隷下に12個旅団と、前進軍団の隷下に3個旅団の合計15旅団が存在します。第11軍団と偵察総局の8個の軽歩兵旅団は平時には本来の目的外の活動も含めた自由な運用が為されています。これらは有事には状況に応じて上の項で述べた5つの任務に割り当てられるでしょうが、ほとんどの場合は4個の前進軍団に指揮が移管されると思われ、最初から前進軍団の隷下にある3個軽歩兵旅団と共に以下の戦闘任務に従事します[7]。

軽歩兵旅団は作戦的・戦術的なレベルで活動し、小隊から大隊規模で分散し指揮系統から独立して活動します。活動範囲は通常部隊のバトルエリアの前進限界から30㎞-50㎞の地点までであり、以下のような任務を負います。

  • 敵後方に浸透し、ミサイル射場、C2部隊、化学・核兵器設備を掌握するか破壊する。

  • 敵後方に浸透し、飛行場やPOL設備のような高価値目標を撹乱するか破壊する。

  • 敵後方に浸透し、敵前線への補給や増援を防止する為、主要な連絡線を掌握、阻止、支配下に置く。

  • 敵後方に浸透し、重要な地形やダム、発電所、敵の補給所/物流センターを掌握する。

  • 撤退作戦中の後方地帯防御として機能し、橋、トンネル、その他敵の進行を容易にするインフラストラクチャを破壊するか、敵を直接妨害する。

  • 長距離偵察(LRRP)を行い、軍団・師団を支援する。

  • 陸軍の部隊と連携し、包囲や側面攻撃を敵部隊に対して行う(戦術的)。※これについては戦術の項で詳細解説。
    [8]

North Korea Country Handbook p143 より1個軽歩兵旅団の編制。この情報は古すぎるか正確ではない恐れがあります。
North Korea Country Handbook p143 より軽歩兵旅団の装備。この情報は古すぎるか正確ではない恐れがあります。

軽歩兵旅団は前述の分散し指揮系統から独立した状態で、主に陸路を使用してDMZを縦断します。縦断する際には夜間か視界の限定される時間にさらに少数の3から5人のチームに分散し、縦断後に予め指定した地点で集結します。またいくつかの部隊は南進トンネルを使用したり、潜水艦や揚陸艇を使用して海岸を移動します。南進トンネル、潜水艦、揚陸艇は次項で詳細な解説を行います[9]。

軽歩兵旅団の兵士は陸軍に4-7年服務した且つ政治的に問題のなさそうな兵士の中から選抜で選ばれます。このような忠誠心に関わる要求は敵後方で指揮系統から独立して活動することが理由であると考えられます。また軽歩兵旅団の兵士も民間人やCFC兵士の装いをして敵を混乱させようとするでしょう[10]。

狙撃旅団

狙撃旅団は第11軍団隷下に3個旅団あり、1個旅団の人数は不明ですが合計約16800人です。海軍と空軍にそれぞれ2個旅団ずつ海上狙撃旅団や空中狙撃旅団も別に存在しますが、これらは投射手段が異なるだけで本質的に似たような活動を行います[11]。

狙撃旅団は5人のチームから10人の分隊で活動し、戦略的・作戦的なレベルで活動します。小型のチームで活動する為、大きな目標については軽歩兵旅団に任せ、以下の目標を攻撃します。また狙撃旅団の活動範囲は軽歩兵旅団の範囲よりも深く、

  • 小さなC2ポスト

  • 孤立した通信中継所

  • 補給所

  • その他の高価値目標

また狙撃旅団は重要な政治的・軍事的指導者の暗殺のような戦略的な目標についても攻撃を実施する可能性があります[12]。

地上狙撃兵の名でアナウンスされた狙撃兵の隊伍。2019年労働党創立75周年記念閲兵式より KCNA

空挺部隊

朝鮮人民軍は最低でも7個の空挺部隊を展開しています。空挺部隊は合計30000人の兵士により構成され、3個の航空陸戦旅団と3個の空軍狙撃旅団と単一の525特殊作戦大隊が存在します。30000人の兵士の内、約半数はパラシュート降下により投射されると思われ、残りはヘリコプターや固定翼機によって投射されると思われます[13]。

・航空陸戦旅団

北朝鮮に於いて航空陸戦は空挺作戦の意味で使用されます。航空陸戦旅団は空軍に属し、1個旅団当たり約3500人の兵士を持ち6個大隊、合計21000人を隷下に収めていますが、航空機の不足により1回の任務で1個大隊かそれ以下の規模でしか投射することができません。

航空陸戦旅団は作戦的・戦略的なレベルで活動し、主な任務はC3結節点(Command, Control, Communication)、CSS(Combat Service Support: 後方支援)、その他の高価値目標を捜索して破壊・無力化することです。また可能性として上陸作戦の支援、敵中第二戦線への参加、防御的任務としてCFC特殊部隊の浸透・空挺への対抗が任務に含まれている可能性があります[14]。

航空陸戦旅団の編成。筆者作製。

・空中狙撃旅団

空中狙撃旅団は空軍の隷下にあり3個旅団が存在し、1個旅団の兵員は3500人です。空中狙撃旅団は空挺機動の後は前述した通常の狙撃旅団と同様の任務を負うか、CFCの飛行場、指揮、統制、通信、コンピューター、情報、監視、偵察のアセットを破壊/無力化する任務を受け持つでしょう。また北朝鮮の最精鋭部隊として優先的な航空装備を受け取ることが可能です。また編成は以下の通りです[15]。

An-2から降下する訓練を行う空中狙撃旅団の兵士。2019年11月18日 KCNA.

・第525特殊作戦大隊

第525特殊作戦大隊についての情報は限られています。軍直属であることは明言されていますが、規模については不明です。2016年から17年の間に複数回にわたって金正恩の視察を受けたことから重要視されていることが伺えます。恐らく戦略的レベルで最も重要な任務である韓国大統領暗殺が強く意識されており、2016年12月の演習では韓国大統領府である青瓦台の模型に対して直接攻撃を実施するデモを披露しました[16]。

第525特殊作戦大隊による青瓦台の模型に対する襲撃のデモンストレーション。この時の演習だけで第525特殊作戦大隊はヘリボーン能力と空挺降下能力の2つを実証しました。KCNA 2016年12月

海上狙撃旅団

海上狙撃旅団は海軍に属する狙撃旅団で、西海艦隊に1個、東海艦隊に1個の合計2個旅団、1個旅団3000人、合計約9000人が存在します。これらの部隊は恐らく水陸両用作戦を可能にするために海軍に置かれていますが、実際には陸軍の管轄にある可能性があります。存在する部隊の名称は以下の通りです[17]。

・第29海上狙撃旅団(西海)
・第64海上狙撃旅団(東海)

North Korean Special Operations Forces: Hovercraft Bases (Part IV). Beyond the Parallel.

海上狙撃旅団の任務は基本的に作戦的な任務を担いますが、韓国の海岸線に沿って上陸し活動する可能性が高い点が異なります。海上狙撃旅団は複数大隊によって行われる大規模上陸、大隊もしくは中隊によって行われる中規模上陸、それ以下の少数で行われる特殊上陸の3つの規模の上陸作戦を実施することが可能で、詳細は後の戦術の項で解説しますが、総じて以下の任務を担います。

  • 渡河点を確保し、陸軍の攻勢を支援する。

  • 敵後方の海岸線にある重要目標を襲撃する。

  • 鉄道を破壊するなどしてCFCの後方域での補給任務を妨害する。

  • CFCのCSS部隊を攻撃するもしくは撃破する。

  • 敵予備隊の敵前線への展開を遅延させる。

  • 沿岸の重要な島嶼を占領するか襲撃する。特に西海のNLLに沿って存在する5つの島について占領する。

  • C3結節点を襲撃する。
    [18]

海上狙撃旅団はホバークラフト、潜水艦、揚陸艇を用いて韓国へ浸透します。朝鮮人民軍海軍は一度に5000人から7000人を両岸に投射することが可能で、これは2個旅団といくつかの大隊/中隊を同時に投射するのに十分な能力です。これらの海上機動については後の項で詳しく説明します[19]。

2019年労働党創立75周年記念閲兵式にて行進する海上狙撃兵の隊伍 KCNAより。

海上狙撃旅団の行う水陸両用作戦は、CFCに対して特筆すべき影響力を持ちます。実例として、湾岸戦争での砂漠の嵐作戦では、海兵隊による水陸両用作戦の脅威によりイラク軍は8万人以上の兵力を沿岸防御に割かなければなりませんでした。後述の海上軽歩兵旅団の脅威と合わせて、海岸線の豊富な朝鮮半島ではより多くの兵力をCFCは沿岸防御に回さなければならないでしょう。
また両海上狙撃旅団は人間魚雷大隊を保有している可能性があります。これは回天のようなものではなく、1941年のアレクサンドリア港に停泊する英戦艦2隻へのイタリア海軍による人間魚雷による攻撃の成功に起因するもので、港湾に停泊中のCFC艦船を攻撃することを試みるでしょう[20]。

North Korea Country Handbook p142 より海上狙撃旅団の編成。この情報は古すぎるか正確ではない恐れがあります。

海上軽歩兵旅団

海上軽歩兵旅団は海軍に属しており、3個旅団、13個大隊が存在し、兵員は合計約5000人です[21]。

海上軽歩兵旅団は戦略的なレベルで活動し、以下の任務に従事します

  • 敵後方域の沿岸に存在する緊要目標について掌握する。

  • 敵後方域でCFCのCSS部隊を攻撃する。

  • 緊要地形を掌握し、陸軍の南進を促進する。
    [22]

海上軽歩兵旅団は揚陸艇、ホバークラフト、ゴムボートなど多種多様な浸透手段を持ちます。朝鮮人民軍海軍は一度に5000人から7000人の部隊を両岸に上陸させることが可能で、これは2個旅団といくつかの大隊/中隊を同時に投射するのに十分な能力です[23]。

軽歩兵師団

軽歩兵師団は第11軍団隷下の部隊にして、最も新しく編成された特殊部隊です。この師団は1個当たり約7000人の兵士により構成され、合計50000人から60000人の兵員によって7個師団が構成されています。

軽歩兵旅団は戦術的な任務を負い、以前の師団に存在した砲兵、戦車、防空などの有機的な支援を殆ど取り払っており、代わりに市街地と山岳で戦闘する訓練や視界不良時の活動が注力されています。朝鮮人民軍はアメリカのイラクとアフガニスタンでの活動をよく観察したのち、2003年頃に合計7つの歩兵師団と機械化師団を非正規戦に最適な形に転換して軽歩兵師団を編成しました。2003年以降、これらの部隊は中東での西側諸国とアメリカに対して成功した不正規戦(Irregular Warfare)のテクニックを認めたうえで、非正規的なテクニックを受け入れ、発展させてきました[24]。

2019年労働党創立75年記念閲兵式にて山岳歩兵とアナウンスされた軽歩兵師団と思わしき隊伍 KCNAより

Deep Artillery Reconnaissance Battalion

Deep Artillery Reconnaissance Battalion(DARB)は正式名称がわからない為英語のまま表記しています。戦略軍、砲兵局、第518砲兵師団、4個の前進軍団、機械化師団がDARBを運用しており、隷下には合計11個大隊が存在します。兵員数は不明です[25]。

DARBは戦略的、作戦的なレベルで活動し、敵後方に浸透したうえで以下の任務を遂行します。

  • 砲撃目標の捜索

  • 間接火力の誘導

  • 攻撃後の損害評価
    [26]

DARBは各種弾道ミサイルの目標選定や誘導に深くかかわっている可能性があり、北朝鮮の弾道ミサイル能力の一翼を担っていると思われます。

脚注

  1. National Interest. Should the World Fear North Korea's Special Forces?
    Threat Tactics Report: North Korea versus the United States
    OEE Red Diamond November 2017 p8
    ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-1

  2. OEE Red Diamond November 2017 p8
    ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-1

  3. OEE Red Diamond November 2017 p12

  4. ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-2, 3
    OEE Red Diamond November 2017 p8
    北朝鮮特殊部隊 ジョゼフ・バーミューデッツ[著] 高井三郎[訳] p190

  5. ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-2, 3
    OEE Red Diamond November 2017 p8

  6. ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-2, 3
    OEE Red Diamond November 2017 p8
    北朝鮮特殊部隊 ジョゼフ・バーミューデッツ[著] 高井三郎[訳] p191

  7. ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-3
    OEE Red Diamond November 2017 p8-9
    Countering North Korean Tactics

  8. ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-3
    OEE Red Diamond November 2017 p8-9

  9. ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-3
    OEE Red Diamond November 2017 p8-9

  10. ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-3
    OEE Red Diamond November 2017 p8-9
    Countering North Korean Special Forces p15

  11. OEE Red Diamond November 2017 p9
    ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-3
    North Koreas Massive Special Operation Force Just What Can They Do

  12. OEE Red Diamond November 2017 p9
    ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-3

  13. OEE Red Diamond November 2017 p10
    ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-3, 4

  14. OEE Red Diamond November 2017 p9-11
    ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-3 I-4
    National Interest. How Effective are the North Korean Special Forces?
    対北情報調査部 2003年
    North Korea`s Airborne Training Sites. AccessDPRK

  15. OEE Red Diamond November 2017 p9-11
    ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-3 I-4
    対北情報調査部 2003年
    北朝鮮特殊部隊 ジョゼフ・バーミューデッツ[著] 高井三郎[訳]
    North Korea`s Airborne Training Sites. AccessDPRK

  16. 金正恩最高司令官が第525軍部隊直属特殊作戦大隊を視察. KCNA
    金正恩最高司令官が朝鮮人民軍第525軍部隊直属特殊作戦大隊戦闘員らの戦闘訓練を指導. KCNA

  17. OEE Red Diamond November 2017 p11
    ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-3
    North Korean Special Operations Forces: Hovercraft Bases (Part IV). Beyond the Parallel

  18. OEE Red Diamond November 2017 p11
    ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-3
    北朝鮮特殊部隊 ジョゼフ・バーミューデッツ[著] 高井三郎[訳] p181

  19. OEE Red Diamond November 2017 p11
    ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-3

  20. OEE Red Diamond November 2017 p11
    ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-3
    Countering North Korean Special Purpose Force p15

  21. OEE Red Diamond November 2017 p11-12
    ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-4

  22. OEE Red Diamond November 2017 p11
    ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-4
    Countering North Korean Special Purpose Force p18

  23. OEE Red Diamond November 2017 p11
    ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-4

  24. ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-2, I-4
    OEE Red Diamond November 2017 p13

  25. ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-5
    OEE Red Diamond November 2017 p13

  26. ATP 7-100.2 North Korean Tactics Appendix I-5
    OEE Red Diamond November 2017 p13

後編は浸透手段と各部隊の任務の詳細解説です
後編へ続く…

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