【禍話リライト】カーナビはダメ!
原則、禍話の翌日にリライトを上げさせていただいているが、昨日は怪談手帖「天狗××」の一本のみ、この話は、妖怪系怪談の画期になる素晴らしい出来で、私などのつたないリライトよりも、余寒さんの手による筆の方がよほど良い(怪談帖2巻買います!)。
したがって、先週の短い話をもう一本、リスナーさんからのカーナビにまつわる話から、かぁなっきさんの記憶の扉が開いたパターン。そしてこの話は先週の【禍話リライト】あと何カーブ?|竹内宇瑠栖 (note.com)へとつながる。
【カーナビはダメ!】
かぁなっきさんが昔、大分の知り合いのAさんに聞いた話。
当時高校生のAさんが家族の手伝いで山間にあるごみ処理場に、不用品を捨てに行くことになった。車で持ち込み、入るときと出るときの重量の差で課金されるという施設だ。
大きな施設で、場所がはっきりしなかったのでカーナビで調べていくことにした。運転手の父親は一度、行ったことはあったものの、道が分かりにくいのだという。
カーナビの指示通りに車を進めると、何もない場所に出た。木々の間にぽっかりと開いた広場だ。
「目的地周辺に着きました。案内を終了します」
無視質な声が、ナビゲーションの終わりを告げた。
おかしい。
市内から、一般の人が捨てに来るため、一般の交通標識に加えて、「あと何キロ」「この道を左折」等独自の案内看板があるはずだが、それがここまで全くない。
しかし、カーナビはこの付近だと言う。
「この先かな?」
とても車がすれ違えないような道を、ハンドルに気をつけながら、ゆっくり進める。すると、落ち葉が多くなってきた。つまり、だれもここを掃除していない。しかし、葉っぱの下には確かに舗装された道があり、ここがどこかへとつながる道だということを示している。
おそるおそるさらに進むと、変な発電所のような場所に出た。
もちろん、「発電所」と書かれているわけではなく、素人目にそう見えたというだけだ。周りは高いフェンスに囲まれ、大きな工場然とした建物が鎮座している。
「何これ?」
車中で皆が困惑して顔を見合わせる。
「違うんじゃない?」
結局、そこで車を切り返して、大通りまで戻り、再度カーナビを設定すると今度は問題なく処理場へ行くことができた。
当時高校生だったAさんは、大学になって免許を取った時に、この時の不思議な体験を思い出した。
『あれは何だったんだろう』と一人山中に入ったことがあるという。
しかし、目的の場所にはついぞ行けなかった。
かなり大きな建物だったので、この数年の間に取り壊されていたとしても、その残骸や敷地は残るものだろう。また、うっかり見逃してしまうような規模の大きさでもなかった。
いや。正確に言うと、当時の記憶をもとに車を進めると、ある場所で道が無くなってしまう。道がないというのは、消えているということではなく、そこから進むことができない山肌や崖になっているということだ。助手席からの視線ではこの先にまだ道があったような記憶が残っている。
思い起こしてみると、普通発電所のような場所の入り口には守衛がいる場所があり、訪問者のチェックをしているが、あの時、門は閉まっていたものの、守衛もおらず、カギもなかったような記憶がある。
あの時、門を開けて中へ入っていたらどうなってしまっていたのか。
カーナビは便利な道具だが、時にこうした場所へと誘うこともあるそうだ。
〈了〉
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出典
禍話インフィニティ 第六夜(2023年8月12日配信)
17:40〜
※FEAR飯による著作権フリー&無料配信の怖い話ツイキャス「禍話」にて上記日時に配信されたものを、リライトしたものです。
下記も大いに参考にさせていただいています。
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