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新規ゲーム開発時に気をつける4つのこと【#新規事業 #新企画 #ゲーム開発】

ビジネスにおいて新しいことを始めようとする時、売れているものとか
人気があるものを参考にして小さくスタートするのはよくある手法です。

しかしながら、その際に参考にしてはいけないやり方もあるということを抑えておくと、大きな失敗は免れる可能性があります。

今回はゲームの現場でよく起きている失敗事例を上げておきます。


気をつけるポイント1
著名な作品をのゲームシステムだけ真似る

著作が原作の作品の側だけ真似るパターンです。

わかりやすいものでは、ワンピース、ドラゴンボール、ドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーとか。そしてアプリゲームでは「Fate Grand Order」(以下FGO)が代表例です。

いわばこれらでヒットしている作品の、中身だけを真似してしまったがために、数多くの屍を産むことにもなっています。

(アプリの世界では、著作ゲームは逆にオリジナル作品のヒット作のゲームシステムを真似て成功したゲームが多いですが)

「FGO」は、レビュー等でもさんざん書かれたわけですが、ゲームシステムそのものとしては斬新性も少なく、体験型としてのゲーム性はあまり評価されていません。(今はリリースしてからだいぶ良くはなったと感じていますが・・・)。

ただ、作品が持つ魅力や、シナリオ、世界観、キャラクターのビジュアル、フレーバーテキスト、運営スタイルなどなど、作品の持つ「FGO」らしさ、独特の世界観への引き摺り込み方や演出方法が秀逸で、そのサービスの未完成さも含めて1つの魅力として捉えられている不思議なコミュニティを形成しているサービスになっています。

ゆえにお客さんの層も異様であり、作品自体もかなりの歴史とコアなファン層がたくさんいるため、不完全さや未完成さ、異常な課金設計も含めて受け入れているという、顧客の教育が完全に行き渡っているタイトルでもあります。

「FGO」というサービスはゲーム単体ではなく、世界観、ゲームの外側まで含めて1つのサービスとして構築されているため、ゲーム単体だけでヒットしているというワケではない点がポイントです。ここが圧倒的な競争障壁になっていて、誰が真似ても追いつけない圧倒的なオリジナル要素でもあります。

あらかじめ作品としての世界観がそもそも出来上がっている中に、最適な接触頻度と課金性を備えたアプリが最適なタイミングで登場したので大ヒットしている1つの要因と分析しています(これだけではありませんが)。

そんな背景の中で、「FGO」が売れているから、「あんな感じでもいいんだ」という理由で、これを模倣しようとしたタイトルが数多く作られました。結果、世に出たものは即終了し、中には世の中に出ないままにクローズしてしまった作品も数多くあります。

まずはこれが1つの失敗事例です。

あとは「ポケモンGO」「ドラクエウォーク」「ドラゴンボール ドッカンバトル」などもいい事例で、すでに著作物として巨大なブランドが気づかれている作品のゲーム性だけを真似ても絶対に成功はしないです。



気をつけるポイント2
先行者利益を受けているタイトルの模倣


先行者利益とは、新たな市場にいち早く参入したり、新製品をいち早く導入したりすることにより得られるメリット(利得)を得ていることです。

たとえばゲームアプリですと「パズドラ」「モンスト」「ディズニーツムツム」が、その恩恵を多分に受けているゲームの1つです。

誤解がないように伝えておきますと「パズドラ」「モンスト」「ディズニツムツム」はゲームシステムも画期的であり、まったく新しいゲーム性が体験できたサービスとしての先行者利益と、スマートフォンゲームのインフラとしての先行者利益が得られたタイトルです。

これらのタイトルにおきましても、多分に模倣タイトルが開発されては、リリースされて消えて、リリースされずに消えていったものも数多く存在しました。

競走地位の戦略にのっとれば、このリーダーを追随する戦略として、「チャレンジャー」の戦略という方法がありますが、ゲームにおいては1位のスケールメリットが働きすぎてしまうことや、コストと利益率の問題などで、2番手が生き残れないという事例が多いようにも思えます。

そのため、完全オリジナル作品でのチャレンジャー戦略が成り立ちづらいのではとも思います。

競走地位の戦略、チャレンジャーの戦略
チャレンジャー企業は、経営資源は豊富にあり規模の優位性は持っているものの、経営資源の独自性がない位置する企業などを指します。リーダーの模倣から始まり、改良を重ねてできる限りリーダーの地位に近づけ、経営資源の質を高めようとしている企業群。コーラーで言えばペプシなどが代表例。


<先行者利益タイトルの代表例>

◆スマホ筐体(操作性、画面構成、ゲームシステム)を最大限に活用した元祖オリジナル+育成+アプリゲーム

類似タイトル、模倣タイトルはあとを経っていないが、いまだに君臨し続けるこのタイトルこそ最強。ちなみに台湾では「パズドラ」をパクって、パズドラよりも先に現地リリースされた模倣タイトルが成功事例になっている。


◆LINE+オリジナルのカジュアルパズル+課金性の完成系

これ以降の類似パズルゲームのヒット作は数多くありましたが、オリジナルパズルを採用している「ぷよぷよ」「ドラゴンボール ドッカンバトル」「すみすみ」を除いては、「妖怪ウォッチぷにぷに」ぐらいが大成功したタイトルの事例。
「妖怪ウォッチぷにぷに」の開発元は同じなのでノウハウ、リリースタイミング、使っている著作物、ゲームの完成度共に秀逸な作品。




◆スマホ筐体(操作性、画面構成、ゲームシステム)を最大限に活用した元祖オリジナル+育成+アプリゲーム
以後にこれ系の類似タイトルはほぼ全滅。シンプルに「モンスト」が強すぎる。


◆スマホ(GPS、操作性、著作、ゲームシステム)を最大限に活用した元祖オリジナル+育成+位置情報アプリゲーム

位置情報系ゲームでの成功事例は「駅メモ」を除いてはほぼ全滅。最近だと「ドラゴンクエストウォーク」が大ヒット事例だが、そもそも位置情報系ゲームは開発ハードルもユーザーのプレイハードルも高すぎる。また課金性も難しいため、圧倒的な優位性がない限りは勝ちづらい。

ポケモン、ドラクエぐらいの超絶有名タイトルと最適なゲーム性が落とし込めないと難しい。「テクテクテクテク」が大爆死したのは記憶に新しい限り。そもそもあれはゲーム性すべてがダメだったけど。

つまり洗練されたゲーム性、完成されたゲーム性がいち早く登場したものに対してはその後の追随タイトルを寄せ付けない競争優位性がとても高い。



気をつけるポイント3
巨額資本が突っ込まれているタイトルを真似する


最近だと中国のアプリがその典型例です。

そもそも中国で運営して大ヒットしたものを日本国内に持ち込まれているタイトルは、まず開発力が桁違いなので、ボリュームが半端ない。日本国内ではまず真似できないのです。資本力、開発人数、広告費、コンテンツボリューム、洗練された運営テストの結果。

なので大資本が突っ込まれているタイトルを真似ても成功はできません。

そしてこれは広告展開においてもそうです。

例えば類似タイトルであっても、広告量が圧倒的に多いタイトルにはまず露出で負けます。レビュー数で負けます。注目度でも圧倒的に負けます。

故に同じ土台で勝負した場合、類似タイトルでリリースした場合に圧倒的に負けてしまいます。


◆最強の黒船が「荒野行動」

すでに世界での成功事例があるのでゲーム開発に迷いがない点が最大の強み。ゆえにマーケティングは振り切りに振り切れて、ゲーム層でないターゲットにおもいっきり突き刺さって大ヒット。

本家のPUBGが日本で大きく乗り遅れたのはマーケティング戦略と市場戦略で負けたことが最大の原因。


◆日本の御家芸を奪われた中国タイトル

・アズールレーン
「艦隊コレクション」がリリースされた以後、数多くのサービスが日本でも立ち上がったが、大成功を収めたのは中国のタイトルだった。完全に日本市場をターゲットにして開発された本作は、キャラクター性、ボリューム、ゲーム性ともに気軽に遊べる簡易性と育成、キャラクター愛が存分に感じられるもだった。しかもマーケティング戦略もSNSNを最大限活用したり、コミュニティ、ファン欲求を承認させるコンテンツ展開も秀逸で、日本の得意とする御家芸を全て計算高く展開されたサービスで真似るべきところが多すぎた。


・陰陽師
そして女性ファンをかっさらったRPG「陰陽師」もアズールレーンに近しい展開を日本で行われた代表作。こちらも開発は中国のNetEase(荒野行動)だが、やはり日本を据えて作られたコンテンツ、マーケティングが秀逸すぎて、まさに日本のお株を奪われた1つだった。
しかしこのキャラクター押しのジャンル、日本は中小企業が取り組むカテゴリーとして多いのだが、そこを大資本でぶっこまれるので勝ちようがない戦いになるのが特徴的。高い水準のマーケティングを巨額でボリュームある完成度の高いコンテンツを持ってこられると勝負のしようがない。


◆崩壊3rd

3D+美少女+アクションという、一見ありそうなジャンルをハイクオリティで展開してきたのもやはり中国だった。日本ではその手のタイトルは社内承認がおりづらい時代背景があった。理由としては、上記に上げた、パズル、RPG、著作物の原作を壊さないゲームを意識して作るということが主流になっていて、オリジナルを作ろうという発想自体が少なかったからだ。

いや、実際にはあったが、完全オリジナルのジャンルは開発費が高騰しやすい上に完成まで漕ぎ着けるタイトルが圧倒的に少なかったので、企業側としては手堅くシミュレーションしやすいタイトルばかりが承認されるという異様な風習があったように思われるからだ。

これは日本の携帯産業にも言えることで、手堅い作品を作ろうとするあまり完全なるガラパゴス化と、オリジナリティがない作品が有象無象に現れる結果になったとも言える1つの原因だと言える。

このタイトル含めて日本にリリースする前から遊んでいたのだけど、中国の開発は今コンテンツ力を高めようとクリエイター支援を行っている会社がすごく多い。

その中で生まれる作品の品質が低くなるわけがない。


◆ラングリッサーモバイル

これもともとは日本の家庭用RPGのシリーズ作品である。しかしながら、台湾がライセンスを借りて開発をしたRPGが世界で大ヒットし、日本に逆輸入されたのが2019年。

こちらも大資本で開発されたタイトルであり、コンテンツボリュームが凄すぎることに。さらにはこの作品が好きな開発者が徹底して開発を行ったところが随所に盛り込まれており、日本でも大ヒットを遂げた。

ポイントは海外の大資本で作られて、海外でもヒットするまでチューニングされたものを日本に持ってきたという点。日本でもうまく行かないわけがない。



気をつけるポイント4
薄利多売モデルを採用しない


薄利多売モデルとは、安い商品を圧倒的な物量(ユーザー数)でカバーしようというものです。これはゲーム性で例えるとサバイバルゲーム系、パズルゲーム系、カジュアルゲーム系が代表例です。

これらのタイトルは顧客単価がRPG系に比べて安くなりやすいため、顧客単価が圧倒的に低くなりがちです。サービスとしての健全性は高いのですが、サービス側としては課金率も低いし顧客単価も安いので、規模の経済を活用しないと収益性が厳しくなるからです。

日本国内だけでサービス展開する場合はこの規模の経済が今は生かしにくくなっているので、そういったゲームジャンルを選んだ時点でかなり事業自体が厳しくなりやすいです。



気をつけるポイントのまとめ


1つは作品ありき、原作ありきのもののシステムだけを真似ても結果は出ないということ。そもそも認知度や市場浸透、ブランド力が違いますから勝負になりづらいということです。

2つ目は市場性やタイミングでヒットしたタイトルを真似しても結果がでないということ。たとえばインターネット初期だからヒットしたものを今やったところで売れるか?というとかなり難しいです。

3つ目は競争相手を見極めること。世界の状況をウォッチしておくこと。

4つ目はビジネスモデル、商品戦略の例です。


これからはじめるビジネスは斬新で新規性があるものを生み出す必要があるのかというと、それは凡人ではかなり難しいです。

さらには資本力があるところとぶつかってしまうとコスト、競走優位が失われるので勝負もしづらい。

であればどうすべきか?については、局地戦をやることが小さい企業、タイトルにおいてはやる必要があるのだということです。

小さいターゲットながらも専門性と確実性を持てる分野、ビジネス的な戦略でいればランチェスター戦略を展開していくことがとても大事なのかなと思いますし、後発タイトル、中小企業がとるべき戦略ではないかと感じています。

あとはスマホはもうやめて、PCやブラウザで展開すべきでもないのか?というのは1年前ぐらいにnoteでも書いたのはそういう背景からになります。


市場調査ばかりしすぎると
オリジナリティあるものは皆無になる


みんながみんな博打ができるわけではないですが、市場調査をしすぎる嫌いもあるかなと思います。そのため、なんとなく手堅いものだけを選びたがる。

故にゲーム性も課金システムも同じものになりやすく、顧客が減る中で収益性をアコギにあげたがってしまうという安直ケースに走る。

結果無駄に顧客単価だけが上がるが満足度は低くなりやすくなる。結果次の手が打てなくなる。新作が出せなくなる。新作を考える余地がなくなる。開発者自体の肩身が狭くなって業界からもいなくなるという事例があとを立たないかなとも感じています。

そして今やまた中国、台湾、アメリカ含めて大資本が業界内に飛び込んできたりもしていますので、日本の良さ、日本の強さを活かすためにはやはりアイディア、著作を生み出す力、物語性を新しく創出できる環境も必要なのかもしれないと感じています。

とはいえ、今は海外発祥のコンテンツも多いし名作も多いのですけどね。

だから私はアジア圏が好きなんですよね。


PS
過去海外の著作物を日本に持ってきたことがありましたが、結構売れました。タイトル名は変えましけど。

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