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学校図書館の未来

前書き


どうも、本のすけの右京です。実はこれブログのほうに掲載した記事なんですが、より多くの人に見てもらいたかったのでnoteにものせます。

内容は同じなので、お好きな媒体でどうぞ。


はじめに

皆さん、この記事を読んだことがありますか?

この記事は学校図書館の在り方について語ったもの。内容を要約しますと

学校図書館は昔とほとんど変わっておらず、改革が必要。データが古すぎる・正しくない本は廃棄し、本の分類も学校ごとに見直す。棚の場所やサイズ、清潔感を保てるようなレイアウトにしていく。ネットと本の差別化は、情報が整理できるかで用途が分かれる。

どれも納得がいく意見ばかりです。ですがこの記事には、一つだけどうしても納得がいかない点があります。それがこちら。

それなのに学校図書館の基本的な考えは「1980年代からほとんど変わっていない」のです。30年前の服が並んでいる洋服屋に買いたい服はありますか? 本というのは刷られた瞬間に世界が止まります。データ本はデータが変わったら、法律やスポーツならルールが変わったら使えません。ミステリーなんて、DNAが解析されたので、今は血が1滴落ちていたら犯人がわかってしまいます。時代が緩やかで変化がなければ、本はそのまま使えますが、変化があれば図書館に並べる本も変えなくてはなりません。(中略) 90年代からは、自然科学や社会科学が主流になっていきます。そのため現在は、自然科学が5、社会科学が3、文学が2ぐらいの割合でいいと思います。

https://toyokeizai.net/articles/-/600032

…!?文学の割合は2ぐらいでいい?ちょっと信じられない内容です。確かにおっしゃる通り、昔の本が作られた時代と今の時代は大きく変わりました。ですが昔の文学は減らしていい、という結論に至るのはおかしな話ではないでしょうか?文学と科学の用途は全く違うもの。文学に書かれている内容が古かったとしても、今でも面白いと感じる本はいくらでもあります。今ではもう古いからという理由で切り捨てていいのでしょうか?それに現代では科学が主流という点も気になります。本当に科学のほうが人気になりつつあるのでしょうか?今でも売れ筋の本にあるのは、文学のほうが多い印象を受けます。

この記事にどうしても納得がいかなかった僕は、実際に学校図書館へインタビューを行いました。学校図書館の生の声を聴き、文学や科学の本に関する現状、図書館の利用者数や人気の本について調査を実行。文学にはもう人気はないのか、本当に文学は減らしていいものなのかについて徹底的に考察していきます。

学校図書館へのインタビュー

まずはインタビューした内容をまとめていきましょう。

①図書館の利用者数は増えている?減っている?
A.特に減ってはいない。授業の一環として図書の時間が設けられており、そこで本を借りていくためだと思われる。

②どんな本が人気なの?
A.読み物が人気だが、科学の本も人気がある。

③逆に人気がない本は?
A.古い文学。時代背景や言葉がわからないという子や、デザインが古臭いと言って読まないことが多い。

④昔の文学は全く読まれない?
A.そういうわけでもない。表紙が変わったり注釈が入った本が出版されると、そちらを読む子も増えた。

⑤具体的に貸し出し冊数が多かった文学は?
A.ほねほねザウルスシリーズ、妖怪捕物帳シリーズ、銭天堂シリーズ。

⑥科学の本では?
A.ドラえもん科学ワールド、名探偵コナンの学習漫画シリーズ、科学漫画サバイバルシリーズ。

⑦古い文学はいらないと思うか?
A.そうは思わない。古くても面白い本はあるし、普段読む機会や場所がない子のためにも、そういった文学は残していくべき。一方自然科学や社会科学などの、知識系の本が増えていくことは理解できる。

インタビュー内容を見ていただけたでしょうか?それでは次に考察を初めて行きます。まず僕が感じたのは、文学と科学の人気には、そこまで差はないのではないかという印象です。

文学と科学どっちが人気?

まず文学は今でも多くの学生に読まれています。割合としても文学と自然科学の貸し出し冊数に、大きな差はなかったそうです。特に映画・アニメ化した文学作品は人気が出るようで、インタビューした3月時点では『かがみの孤城』が好評だったそうです。数か月前に制作された映画から小説に興味を持った、という学生が多かったと聞きます。一方やはり文学の中で人気な作品は、新しく出版されたものや、『かがみの孤城』や『銭天堂シリーズ』など映画・アニメ化され、話題となった作品が多いようです。昔の文学作品、いわゆる古典文学はそういった新しい作品と比べると貸し出し冊数は少なくなるようです。

では全く昔の文学作品が借りられないのか、と言われるとそういうわけでもないようです。こちらの画像をご覧ください。

左が新しく出版された本、右がそれより前に出版された本です。左の本は表紙にかわいらしいキャラクターが描かれていたり、挿絵が登場人物たちの様子を描いたものになっています。また文頭には、世界観や作品の簡単な解説が加えられていました。一方右の本を見てみると、左の本とは大きく違います。表紙の絵は素朴なものとなっており、挿絵は風景のみを描いている場合が多い印象を受けました。単語の注釈もありましたが、左と比べると少々わかりづらい、感じるものもありました。この2冊の内容は全く同じです。省略されたり追加されているわけでもなく、どちらを読んでもストーリーは理解できます。ですが人気な方はどちらなのか、と言われるとそれは左の新しい本なのです。この4冊以外にも、新しいバージョンと古いバージョンがある昔の文学作品では、新しく出版された方に人気があったということは確認できています。

ではなぜここまで新しい本とそうでない本に差がでるのでしょうか?僕はこの差をキャラクターの有無だと考えました。例えばこの小学校で人気がある本を見てみます。『ほねほねザウルスシリーズ』、『妖怪捕物帳シリーズ』、『銭天堂シリーズ』・・・。どの作品にも、目玉となる人気キャラクターがいるという共通点があるとおもいませんか?『ほねほねザウルスシリーズ』には、ティラノサウルスの子供ベビー。『妖怪捕物帳シリーズ』には、岡っ引きを務めるいなりのこん七。『銭天堂シリーズ』には不思議なお菓子屋の主人・紅子などなど。物語の中心となる彼らは可愛らしいデザインをしていたり、アニメや食玩に登場するなど読者にとっては親しみやすいキャラクターです。さらに作品の中には、登場人物の挿絵が比較的多い・あるいは絵の中に文字が組みこまれているという特徴もあります。キャラクターが登場する絵が増えることで、キャラクターの活動や表情、感情が伝わりやすくなっています。そのおかげでストーリーの分かりやすさを補強し、より面白くさせています。単純に見た目がいい、という点も大きいでしょう。内容はほとんど変わらない本が、表紙や挿絵にかわいいキャラクターを増やすだけで、貸し出し冊数に差ができることがその事実を物語っています。

この人気キャラクターの有無で人気が大きく分かれるという事実は、科学の本でも同じです。科学の本で人気だったのは『ドラえもん科学ワールドシリーズ』、『名探偵コナンの学習漫画シリーズ』、『科学漫画サバイバルシリーズ』です。

上記の作品にもドラえもんや江戸川コナンなど、国民的人気キャラクターが登場しています。『科学漫画サバイバルシリーズ』にも、いくつかの巻に共通して登場する人気キャラクターが存在しています。興味深いのは、こういったキャラクターが登場する作品が人気を得ていることに対し、より詳しく科学について触れている本はさほど借りられていないのです。こういった本が漫画形式だからではないか?とも思いましたが、同じように漫画形式となっているが、特にキャラクターが登場しない科学系の本は、さほど借りられていないそうです。つまり『文学・科学関係なしに、キャラクターが登場する本が人気である』というものです。

文学は減らしてもいいの?

それを踏まえて、文学の数は減らしていいと思いますか?僕は『NO』だと考えます。まず一つは文学と科学の人気度に、そこまで大きな差はないと思われるためです。貸し出し冊数の割合は大きく変わっていませんし、昔の文学作品もいまだ読まれています。さらに言えば、『文学・科学関係なしに、キャラクターが登場する本が人気である』という結論からわかるとおり、科学だから人気とは言い切れないのではないでしょうか?もう一つの根拠は、文学を減らすと困る学生が存在するためです。学校図書館の利用者の中には、近くに本を読める環境がない学生もいます。例えば本を気軽に買うことが難しかったり、行動範囲に本屋や市立図書館がなかったり・・・。そんな学生たちが気軽かつ近場で本を読むことができるのは、学校図書館に他ありません。さらに言えば、科学はインターネットを使えばいくらでも情報を入手できます。記事にもあるように、インターネットだけでは情報が整理できないなどデメリットもありますが、少なくとも知識を得るという目標は達成できます。対して文学。文学はあくまで読むものであり、あらすじや内容を知っても、文学を本当に読んだとはいえません。文学には必ず本が必要なのです。本を減らすことは文学に触れる機会そのものを減らしてしまうことと同義と言えるのではないでしょうか?

終わりに

いかがでしたか?今回は実際に学校図書館さんへのインタビューを通し、文学の必要性について考察しました。上では挙げませんでしたか、そもそも今の時代に合ってないから読まれない、というのも早計なんじゃないかなーとも思います。そもそも文学はフィクションなんですから、時代に合っているかどうかが、そこまで大きく影響を与えるとはちょっと考えづらいですよね。現代でなじみのない単語は、解説や注釈を入れたり、絵を差し込んで補強するなどやり方はいろいろあります。その工夫をして貸し出し冊数が増えた本もありますからね。

最後になりますが、今回インタビューにご協力いただいた小学校さん、誠にありがとうございました。それでは今回はこの辺で。ではまた。


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