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あったか~い場所

また、スマホのアラームが鳴った。
冬の朝である。

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ああ、出たくない。
このあったか~いおふとんから出たくない。

決して睡眠不足ではない。むしろ十分に寝た。
それでももっと寝ていたい。なぜだろう。

それはおふとんの中があったか~いからだ。
裏を返せば、おふとんの外が寒いからだ。

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もしも今、このおふとんを出るとしよう。

急激な温度変化は体内の血管を収縮させる。
血管が収縮すれば血圧が上昇する。
血圧の上昇は様々な病態を引き起こす。

おそらく無意識のうちに「今、外へ出るのは危険だ」というストレッサーが働いているに違いない。

つまり、脳の指令によって、「ふとんから出たくない」と思わせて、自分を守っているのである。
生存戦略の一環として。

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この季節、クマは冬眠し、落葉樹は葉を落とす。

彼らは、冬の活動を停滞させる。それは、養分を得るためには、夏に行動した方が効率的だという自然の知恵である。

だとすれば、やはり、あったか~いおふとんに留まっている方が、長い目でみればパフォーマンスが上がるはずだ。

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冬至は過ぎたが、まだまだ昼は短く、夜は長い。

夏はサマータイムという制度がある。2時間早く出社する人がいる。

冬にウィンタータイム制があってもいいもんだ。

2時間出社を遅らせる。

その分、あったか~いおふとんでぬくぬくしていられる。

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のび太がドラえもんの道具の力で、ふとんのまま学校へ行った話があったような気がする。

この道具を発明した人は天才だ。
ちょー気持ちわかる。

しかし、おふとんのまま飛んでいくには、22世紀までテクノロジーの進化を待たなければならない。



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仕方ない。あきらめてここを出よう。それが現実だ。

都合のいいこと言ったところで何も変わりやしない。

目の前の世界は寒い。

寒いからこそのあたたかさだ。

寒がっている人がいる。

だけど、僕はその寒さを知っている。

大丈夫。

少し進めば日が昇る。

あったか~い場所はある。


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また、スマホのアラームが鳴った。
冬の朝である。






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