見出し画像

SS「メイドちゃん9さい!おとこのこ!」番外 スーパーねこの日

 スーパーねこの日です。
 メイドちゃんは英国紳士なので、動物愛護精神が豊かです。
「まてー!」
 現在、宿敵にゃんにゃんちゃんを追いかけておりますが。決していじめているのではございません。
「かえしてー! かえしてー!」
 彼奴が奪った賜り物を、取り返さんとの健闘です。奥様からいただいた毛糸のぼうし。こは捨て置いてなるまいぞ。
 身を刺す寒風粉雪も、九つメイドは恐るまじ。
「きゅっ」
 転びました。クラシカルスタイルのメイド服は、見事に泥にまみれました。
「ぐすっ」
 ちいさなお屋敷の垣根を越えて、ひらりと去りゆく巨体の姿。
「めーっ、めーっ!」
 泣き泣き吠えた雄叫びの、甲高いこと悲痛なり。
 今日も敗北メイドちゃん。号泣せざるを得ませんでした。

 舞台は変わりて応接間。
 目を輝かせる奥様です。
「あらあら、ニュースで見たそのまま。KAWAIIだわー」
「うちの若いもんがビッグサイトで仕入れてきた、本場モンだよ」
 極東からのお客人。机に広げる毛糸の帽子。
 齢80奥様の、心を掴んだネコ耳帽子。
「他にもほしけりゃ、そのURLにってさ」
「倫敦まで届けてくれるかしら」
「まあ、まずはアンタんとこのメイドが気にいるか――。ん?」
 庭から響く哀叫に、奥様もあらと呟いて。
「ちょっと、ごめんなさいね。ユーリ! いらっしゃい!」
 メイドちゃんの入室許可ベルが、チリリンと鳴る冬の日です。

END

「メイドちゃん9さい!おとこのこ!」本編はこちら。
エブリスタ
https://estar.jp/novels/25625748

小説家になろう https://ncode.syosetu.com/n4788gd/

Pixiv 


著書最新刊


その他作品情報

応援いただいた分は、生活費に充てさせていただきます。