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【30億円調達】IVRyはなぜCFO不在の中、シリーズCエクイティファイナンスを成功できたか?

こんにちは、対話型音声AI SaaS IVRyの開発・運営をする株式会社IVRyで財務経理を担当しております後藤です。
この度IVRyはシリーズCラウンドでエクイティファイナンスを実施し、30億円の資金調達を行いました。これにて累計調達額は49.5億円となりました。

またこの調達を記念して、IVRyではリレー形式でブログ投稿を行っております。
社長の奥西から始まり、ユニークなメンバーによる記事や、今回投資いただいたVC対談も公開しておりますので、是非過去の記事も覗いてみてください!

第9回目となる本記事では、実際に本ラウンドの調達実務をメインで担当していた私が、調達実務のプロセス、その裏側の話や調達完了日の様子、なぜこのような大型調達を実現できたのか?また、タイトルにもありますがCFOといういわゆるファイナンスのプロフェッショナルを置かずとも30億という大型調達を実現できたナレッジについて、皆様にお伝えできる範囲でお届けできればと思っております。


自己紹介

改めて、自己紹介です。
後藤祐貴と申します。IVRyでは経理の責任者をやりながら、財務の文脈でファイナンスをやったり、経営企画の文脈で予実管理の対応をしたり、そもそもオペレーションが整っていない部分があるのでその辺りの改善をしたり、実際にオペレーションの中で作業者として関与していたりと幅広に働いております。
IVRyに入る前は、EYという監査法人で公認会計士として会計監査に携わることからキャリアをスタートし、STORES(当時はヘイという会社でした)というスタートアップで経理実務とIPO準備を経験しました。その後、GCAという会計系投資銀行の子会社であるGCA FASという会社(現在G-FASという会社です)で財務デューデリジェンスと株式価値評価業務を中心にM&Aトランザクションサービスを行っており、再び専門性の高い業務を経験しました。
振り返ってみると専門ファーム→スタートアップ→専門ファーム→スタートアップという結構変わったキャリアを歩んでおります。
IVRyに入社した背景は以下のnoteをご覧ください。(再現性ゼロの、自動車教習所リファラルです)

IVRyにおけるエクイティファイナンス

IVRyは今回のラウンドを含めて計3回エクイティファイナンスを行っております。
奥西と友人関係であったこともあり、実は過去の調達であるシリーズA、Bも業務委託として一部お手伝いをしていました。
ですが、調達実務を一気通貫で経験したことはなく、財務に携わる会計人材としては今回のファイナンスは絶対に最初から最後まで関与し、やり切りたいと思っていました。
STORESの時も資金調達は行っておりましたので、そのサポート業務は関与していましたし、FASの時もスタートアップへの出資に関する財務デューデリジェンスや株式価値算定業務は関与しておりましたが、やはり実務家としてメインでディールを担当する経験をしないと手触り感がなく、その業務の難易度や本質も体験できていないというもどかしさを感じていました。
実際、その思いが叶って昨年の10月に入社し、すぐファイナンスチームとして調達実務に関与することとなりました。(そして、想像以上に大変でした。。笑)

エクイティファイナンスのプロセスについて

エクイティファイナンスのプロセスは主に以下の流れで行われます。

  1. 事業計画のアップデートと資本政策表の作成

  2. 投資家の選出

  3. 投資家へのプレゼンテーション・DD対応

  4. 投資条件の交渉

  5. 契約実務、着金

順に解説していきます。

1.事業計画のアップデートと資本政策表の作成

まず、事業計画をアップデートする必要があります。
会社として、今後どのくらいの売上を目指しているのか?その売上達成に必要な人員は何人くらいなのか?マーケコストはどの程度必要なのか?などを洗い出し、定量化し計画に落とし込む作業です。
経営企画で作成した計画は事業部側に展開し、事業部側から指摘を貰いそれを反映し、ブラッシュアップを重ね、全社として納得感のあるものにしていく必要があり、非常に時間と労力を要する業務です。
会社を高く評価してもらうためには、一定の高さと成長率が求められ、一方で実現可能性を追求しないと絵に描いた餅となってしまうため、その最適解を出すことは本当に難しいです。
具体の作業で言いますと、ビジネス観点では現場の人間を巻き込みながら、セールスの人件費やマーケコストが違和感ないものとなってないかをレビューしてもらいつつ実現可能性を織り込んでいく。一方で、ファイナンス観点ではPSRや年成長率を見ながら将来に渡ってのあらゆる可能性をシミュレーションできるように設計を行いました。

加えて、ファイナンス観点で一番重要なことは、投資家からIVRyがどう見えるか?を俯瞰して考えることだと思っています。どこに資金を投下するとN年後の売上でn倍で返ってくるビジネスモデルを証明できているのか?という目線を大事にして、自社分析と事業計画作りを行いました。

拘ろうと思えばどこまでも拘れる作業であり、IVRyでは全員が納得感がある成果物がなかなかできずにめちゃめちゃ苦労した記憶があります。ですが、ファイナンスチームとして粘り強く社内でコミュニケーションを続け、全体の合意を取ることで何とか乗り切っていきました。

事業計画が固まると、将来計画と今後必要となる資金が明確になるため、それをベースに資本政策表を更新していきます。
IVRyでは足元のシリーズCまでの持分比率を算出するに留まらず、IPOまでのタイムラインを想定した資本政策表を作成し、その調達タイミングやダイリューション(希薄化)の度合い、各投資家のリターンも含め様々なシミュレーションを行っていました。
投資家側は確実にこのレベル感でリターンの計算もしているので、投資家と同じ目線を体感できるという意味でも常に長期の目線で資本政策表を作成することは重要だと思います。

2.投資家の選出

次は投資家のリストアップです。
投資家名、投資ステージ、ファンドサイズ、ファンド期限、主な投資先、投資対象領域、EXIT実績について、国内の投資家を中心に幅広にリストアップすることから始めました。
そこから本ラウンドのリード投資家となっていただける投資家を中心に優先度を付けていき、現状のIVRyに最適な投資家をイメージしながら絞り込んでいきます。
最終的に接触可能な数まで絞り込んだリストをベースに進捗率の記載を行った進捗管理表を作成し、当該リストを元に既存の株主やその他証券会社にアクセス可能な窓口がないかを確認、連絡を開始しました。

連絡の観点では、投資家には誰からアクセスするか?が重要とも言われており、可能な限り既存の株主や信頼度の高い人から繋いでもらう方がお勧めです。
また、シリーズC以降は数十億規模の調達となる傾向があり、国内プレイヤーが少なくなってきます。事前に海外のプレイヤーも含めて調査、検討しておく、そのために半年と言わずに一年前くらいからコミュニケーションを開始しておけばよかったなという点は反省点です。

3.投資家へのプレゼンテーション・DD対応

投資家と面談のアポイントを取った後は、投資家へのピッチのフェーズに移っていきます。
会社の現在の状況、サービスの説明、メンバーの紹介、事業スタッツと将来計画、IPOスケジュールなどを端的に伝える必要があり、ピッチ資料の作成から開始することとなります。
また、ピッチを終えて投資家に興味を持っていただけた場合は、DD(デューデリジェンス)対応が始まります。DDは決算書や事業計画、定款や登記簿、重要な契約書等を詰め込んだ初期開示資料パッケージを作成し、それを投資家に見てもらいながら必要に応じてインタビューや追加の資料を開示していく作業であり、投資家毎にどこまでの資料を開示したか?数字の不整合はないか?をレビューしながら進める必要があるため、進捗管理が重要となってきます。(私は前職でこの作業をリクエストする側で行っていたため、過去迅速にご対応いただいた会社の方々に改めて感謝いたしました。また、ロジ周りは前職の経験が活きる部分がありました)
ピッチ資料作成やDD対応についてファイナンスチームだけでは対応不可能です。
ピッチ資料の元データは現場レベルでもっているローデータを使うことになりますし、DDで提出や説明を求められるデータはセールスやマーケチームに確認しないと理解が難しい情報も多いです。社内に対して丁寧な状況説明と、投資家から何を求められていて、どういう回答をするのがベストなのか?を常に意識しながらプロセスを進めていきました。
DDには従業員へのインタビューも含まれている場合が多いので、このフェーズは全社一丸となって投資家に対して会社の魅力を伝える段階だったなと今振り返っても思います。

IVRyのメンバーはこの辺りの相談をしやすい方が多く、IVRyのメンバーだったからこそ乗り越えられたなと強く感じています。
改めて感謝しかありません!

4.投資条件の交渉

ピッチやDDを通して会社の魅力が投資家に伝わり、いざリード投資家から投資の実行の可能性が高まってきたら、投資条件の交渉に移っていきます。
投資条件というと、バリュエーション、調達総額、現実的な着金時期という数字面に関するものから、株主間契約(SHA)の中で定められる取締役の派遣権やオブザーバー権、事前承諾事項等という契約の細かい内容まで含まれています。(後者については5に記載する契約書の中で内容を詰めていくことが多いです)
バリュエーションや調達金額についてはピッチの段階で一定こちらの希望は伝えてはいますが、実際どのくらいの時価総額でどのくらい調達するのか?(株を放出するのか?)調達金額のアロケーション(リード投資家、各フォロー投資家の割合)はどうするのか?フォロー投資家に新規株主、既存株主の誰を入れるのか?などなど、この段階でも実はめちゃめちゃ検討することは多いです。
会社の将来の事業運営に大きく影響を与える一方で、不可逆的なものでもあるので、資本政策表を再度アップデートしながらリスクリターン含めて会社内で十分に検討する必要があります。

5.契約実務、そして着金へ…

投資条件が固まると、実際にこれらの条件を反映した契約書を作成し、契約に進む準備に移ります。
契約書には株主間契約契約書、株式引受契約書、分配合意書などがありますが、双方の弁護士を通してお互いに納得できる契約内容になっているか?生じるリスクは許容可能なものか?を文書をやり取りすることで細かいところも含めて内容を詰めていきます。
ここで重要なのは、株主間契約書は新規の投資家だけではなく、既存の株主の同意も得る必要があるため、リード投資家と内容について合意を得つつ、他の株主、投資家にも適宜その時のドラフトを共有し、全員で合意可能な内容になっているかをコントロールしつつ進める必要があります。
場合によっては、株主に直接説明をする必要も多々あり、非常に泥臭い作業だったなと改めて思いました。
実はこの段階でも期間的には1カ月以上かかったので、本当に本当に大変でした。
そして、各種契約書について最終合意まで取れれば最後の契約手続きです。
本ラウンドはとにかく関与している会社が多く、株主間契約書に関してはすべての株主、投資家の押印が必要となってくるため、契約締結日までに押印手続きを終えるために最後の最後まで細かい調整が必要となってきます。
IVRyでは電子契約締結にて手続きを進めましたが、その事前準備だけでもほぼ1日時間を使いました(笑)
契約締結の前日と当日は本当に他の業務が捗らず、生きた心地がしなかったです。

これらの長い長い、本当に長いプロセスを乗り越えて、着金予定日に無事着金を確認することができまして、IVRyのシリーズCラウンドは幕を閉じました。

契約完了・調達パーティー当日の様子

契約完了の日は、作業に集中するためにリモートしていたのですが、奥西が最後の契約書にサインをした時に画面の向こうから沢山のメンバーが「お疲れ様!」と声をかけてくれました。
その時に、あぁ、本当にここまで頑張ってよかったなと感じると共に、IVRyに入って本当によかったなと心から思いました。
また、IVRyではシリーズBの時からファイナンスが無事終わった後、全社で調達記念パーティーを開催しています。
この調達パーティーは、会社のVisonである「Work is Fun」を体現している解りやすい例ですが、調達という会社一丸となって挑んだ挑戦が終わったら、今度は会社一丸となって全力で楽しもうという想いでシリーズBの時から開催されているものです。
やるときは全力でやる、楽しむときも全力で楽しむというIVRyらしさがよく解る素晴らしいイベントだなと思います。

調達パーティー当日は、社員の方々皆さん本当にとても楽しそうな顔をしていて、全員で乗り越えたシリーズCの調達だったなと改めて実感できました。
色んな方から「ありがとう!お疲れさまでした!」の声をかけていただき、充実感を感じれましたし改めて素晴らしいメンバーに囲まれて仕事ができているなと思いました。

IVRyのシリーズCが成功した要因

今回の資金調達は金額も30億と大型の調達であり、新たに投資いただいたALL STAR SAAS FUNDさんの存在やBoost Capitalさんの第一号案件ということもあって非常に話題にもなりました。手前味噌ですが、このマーケットの状況を鑑みても大成功と言ってもいいのだと思います。
では何故成功できたのでしょうか。
成功の要因は主に2つあるかなと思います。

  • IVRyに今後の成長可能性余地がまだまだあることが投資家に適切に評価された

一点目はIVRyがまだまだ伸びるということを愚直に訴え続け、その可能性が投資家に届き、適切に評価されたからだと思います。
IVRyは当初IVRシステムという電話の自動応答サービスをメインにサービスを展開をしておりました。ここでいう電話の自動応答というと、「営業時間に関するお問い合わせは1番を、予約に関するお問い合わせは2番を押してください」と流れて、その案内に合わせて番号をプッシュする皆様が一番イメージしやすいものです。
一方で、2023年の初めからOpenAIが台頭し始め、そのシステムを上手く活用することで、IVRyでは番号をプッシュせずとも、AIオペレーターが電話の窓口となって要件をヒアリングする電話の応対が可能になりました。これにより、更に効率化が進み、利用者の幅や利用されるシチュエーションが一気に広がりました。
(この辺りの詳しい技術変革の話は奥西の以下のnoteをご覧ください。)

このIVRyAIを上手く活用できると、今までTAMとして考えていた「電話対応市場」から「法人対話業務市場」へと広がり、約15兆円の市場が見込めると考えております。
この点の説明を、過去のIVRyのトランザクションをベースに様々な資料やデータを用いながら丁寧に説明を重ねました。
このような地道な努力を愚直に繰り返すことで、IVRyのこれからの高い成長可能性が理解され、結果として今回のような大型の資金調達に繋がったと考えております。

  • 魅力的なメンバーがIVRyに揃っている

二点目はIVRyに本当に素晴らしいメンバーが揃っていることです。
ピッチの段階でIVRyのメンバーを紹介すると、どの投資家様も、なぜこんな強いメンバーを採用できるんですか?という質問を例外なくされました。
IVRyは最近でこそ採用を加速させるためエージェントを利用し始めましたが、かなりリファラル率が高い会社です。従業員は90名を超えましたが、現時点でも7割を超えています。
口コミで広がっていく名店のようなもので、IVRyに業務委託から関与し、やがて社員となり、IVRyの魅力を自身で一気に体験すると周りの人にも紹介したくなるようで、素敵なメンバーから素敵なメンバーへとリファラルで繋がっていくという流れかなと思っております。
この採用力が強い点は投資家にピッチをする中で、どの投資家様にもかなり評価をいただいた点でもあり、ALL STAR SAAS FUNDの前田ヒロさんにも「人材のブラックホール」と評価のコメントをいただいております。
素敵なメンバーの入社エントリーは以下にまとまっておりますので、是非一度みてください!

IVRyはまだまだあなたの力が必要です

ここまで読まれてIVRyにどんな印象を持ちましたか?
私は知り合いに、
「IVRyの採用ページやnoteを読むとすごい人が居すぎて自分なんて活躍できる気がしない」
ですとか、
「もう仕組化が進んでそうで、そこまでやることないんでしょう?」
ということをよく言われます。
恥ずかしながら、まだまだやるべきこと、やりたいことは山積みです!
前述した高い成長を確度高く実現するためには、すべての職種でまだまだ人が必要ですし、それによって更に高いところまで成長できると思います。
それは会社として成長余地も勿論ありますし、個人としても経験できる幅が非常に広いと思っています。
私が所属している経理は、現状正社員は私一人ですので、ここで特に強く募集させていただければと思います。
経理は通常の経理オペレーションの運用に加えて、オペレーションの改善、各種プロジェクトの推進、その他これからIPOに向けてまだまだ整えないといけないことが沢山あります。
私一人で出来ることは限られていますので、一緒にIVRyの成長を支えてくれるメンバーを探しています。
少しでもIVRyに興味が湧いたら、是非お話ししましょう!

代表の奥西、VP of Growthの片岡、VP of Corporateの宮田の対談の記事も是非ご覧ください!


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