【30億円調達】 日本のAI活用を加速させる。IVRyの挑戦。
こんにちは、対話型音声AI SaaS IVRy(アイブリー)代表の奥西です。
この度、IVRyはシリーズCラウンドにて、30億円の資金調達を実施し、累計49.5億円の資金調達額となりました。
この記事では、調達後ブログ祭の第一弾として、「IVRyは30億円資金調達をして、これからなにをしようとしているのか?」を記載したいと思います。
日本の社会問題を解決したい
人口減少により、労働力不足が顕著になっていく時代
日本の人口減少が社会問題化されていることは、ご存知だと思いますが、人口減少により顕著に起こる問題は、「労働力不足」です。
労働力不足によって、「配送が行き届かない」「医療や介護が受けられない」等のさまざまな現在の当たり前がなくなっていく可能性があります。
また、2023年時点で、中小企業を中心に「人手不足が事業運営に支障をきたすレベルで深刻」と答えている割合が60%以上おり、既に顕在化した課題となっています。
これらの課題を解決するためには、シニアや女性・外国人登用だけでは足りず、AIやソフトウェアによる圧倒的な生産性向上(DX)を行う必要があり、IVRyではこの社会問題に向き合い、解決したいと考えています。
LLMの進化で、パラダイムシフトが起こる
以下はLLMの進化の図ですが、IVRyでのAI活用を考え始めた2020年頃には、GPT-2やGPT-3の流れから、GPT-4か5かわからないけど、そのうちすごいLLMがくるんじゃないか?とIVRyのAIエンジニアが予想しており、それらを待ちながら顧客接点と顧客データを最大化する戦略を取り、大幅な進化が来ることをずっと待っていました。
そのインパクトは当時のわたしたちの想像を遥かに超えるインパクトで、今後10年間で各産業にパラダイムシフトが起こっていくと考えています。
その中でも、生成AI関連アプリケーション(≒LLMを中心としたAI SaaS)が特に市場の中心となってくることが予想されています。
※余談ですが、OpenAIやGemini等のLLM基盤モデルは、現在のAWSやGCPと同じポジショニングだと考えていて、IVRyはAI活用で問題を解く会社なのでLLMのアップデートは基本的にすべてポジティブです
AIを誰でも簡単に活用できる世界を創りたい
Augmentation(アシスタント)とAutomation(自動化)
Generative AI for Everyoneでも話がありましたが、基本的には、自動化するプロダクトを作るほうが難易度は高く、現在の日本でのLLMの活用事例はアシスタント的な使い方であることが多いと思っています。
一方で、アシスタント的な使い方は、高いIT/AIリテラシを要するため、大企業やIT企業での利用が多く、日本全国での活用は難しいと考えています。
本当の意味で日本の働き方を変えるためには、誰もが活用できるプロダクトに落とし込む必要があり、それは業務を自動化するレベルのプロダクトが必要なんだと考えています。
5-10年後に変わるのでは、日本の労働力不足は解決できない
「紙からWeb」「オンプレからクラウド」への変遷を見てきましたが、大手からコストをかけて活用し始め、事例ができてきたら、パッケージ化されて中小企業や地方へ展開するという流れで、いつも最先端のテクノロジーは、大企業や都会で流行りはじめ、中小企業や地方に届くのは5-10年後です。
一方で、日本の労働力不足の問題は深刻で、数年後には数百万人の労働力不足が顕在化してしまいます。それよりも速く日本全体の労働生産性を大きく向上させる必要があると思っています。
そのためには、安価に誰でも簡単に活用でき、業務を自動化できるAI SaaSが今すぐ求められていると考えています。
「コンパウンドAIシステム」で日本のAI活用を推進していく
LLMを活用して、自動化が難しい理由
LLMを活用し、自動化レベルのプロダクトを実装することが難しい理由として、ハルシネーションを制御する難易度が非常に高いことが挙げられます。
ファインチューニングやRAGなどの機能はありますが、現時点では完全に制御することが難しく、アシスタント的な使い方によって、最後は人間に判断させるプロダクトとして提供することが多いです。
コンパウンドAIシステムとは
LLMの特性を考慮して、海外で言われ始めているLLMを活用したシステム開発の考え方がコンパウンドAIシステムです(フローエンジニアリングやモジュラーダイアグラムシステムと呼ばれることも多いです)
考え方はシンプルで、単一のEnd to EndのAIモデルで制御するのではなく、複数のAIモデルや伝統的な処理システムやデータベース/検索システムなどを組み合わせ、相互作用するコンポーネントを使用することで、アウトプットを制御するという方法です。
この考え方によって、ハルシネーションを制御し、業務を自動化できるAIプロダクトを実装することが可能となってきています。
(LLMに含まれる伝統的な要素技術を正しく理解/実装できるAIエンジニアがいる前提ですが)
AI SaaSをPMFする
IVRyでは、2023年3-4月頃にEnd to Endの制御は厳しいということに気づき、そのタイミングからコンパウンドAIシステムで対話型音声AIを実装していました。
そのため、多くのAIプロダクトをリリースすることができており、かつ、実際に様々なユースケース(石川県の老舗工場や歯科クリニック、ITスタートアップなど)で利用されはじめています。
AI予約(デモ)
AI電話代行(事例)
AI通話要約(事例)
AIシフトの時代に、AI SaaSで突き抜ける
コンパウンドスタートアップ x AI
コンパウンドスタートアップとは、プロダクトのコア機能やデータ等を活用し、効率的にマルチプロダクト展開をするスタートアップのことを指します。(詳細はこちら)
IVRyの場合は、電話にまつわるデータをAIが活用することによって、顧客が実現できなかった業務フローやビジネス構造の改革をシームレスに実現できると考えています。
コンパウンドAIシステムで、コンパウンドスタートアップする
何度も言いますが、これから10年で「紙からWebへのシフト」「スマホへのシフト」「クラウドへのシフト」といったレベルで「AIシフト」が起こると考えています。
AIシフトの時代には、AIを中心としたSaaSプロダクトが提供されることによって、従来の当たり前のソリューションが当たり前ではなくなり、各産業の様々な業務がAIを活用することで変革されていく時代が来ると思います。
そのときに、本当に求められることは、顧客を本当に理解したうえで、顧客の業務ユースケースに正しくAIを活用し、業務FITする形でハルシネーションを起こさないコンパウンドAIシステムを開発・提供できることだと考えています。
さらに、そのAIプロダクトを提供することで生まれるデータや、モジュールを利活用することによって、MOATの強い2nd/3rdプロダクトを実装し、更なる価値を創り続けていく。
IVRyはそんな会社になることを意識しながら、日々の事業開発やプロダクト開発と向き合っていますし、これからも実績で証明していきたいと考えています。
これからのIVRyが投資していくこと
①電話データを活用したマルチプロダクトを展開する
IVRyは、47都道府県、80以上の業界/業種で活用されており、トラクションも累積1900万着電以上、累積12,000アカウント以上と、多くの事業所様で導入いただいています。
過去の電話データを活用し、任意の店舗や事業所に適したAIを生成したり、予約や注文システムとの連携を増やすことで、様々な業務ユースケースを自動化していきたいと考えています。
②電話対話だけではなく、音声対話AIプロダクトへと展開する
IVRyのコアプロダクトは「電話」ではなく「音声対話のAIとソフトウェア」と考えていて、スマートデバイスなどとの連携など、音声対話領域にインタフェースとして展開していきたいと考えています。
実際は、オフライン環境での雑音や対話セッションの管理、ハードウェアとの相性など、様々な課題がたくさん存在していると考えていますが、この問題が解けた際における日本の人手不足の解消インパクトはとても大きいと考えています。
③多言語やグローバル展開に対応していく
直近のGPT-4oのアップデートでリアルタイム翻訳デモがあったりしましたが、AI対話において多言語対応はとても相性が良く、今後増えていく日本のインバウンド対応での活用や、根本的なグローバル展開として、管理画面多言語対応をしていくことも考えており、各国のニーズやユースケースでも活用できるプロダクトに進化していく必要があります。
マーケティング観点だと、グローバル展開するためには、深いPLGでスケールしていくマーケティング〜プロダクトフローの開発・検証やセルフオンボーディング/アップセルを高めるUI/UX改善の施策など、まだまだやらなければいけないことは盛りだくさんですが、日本初のグローバルで成功するSaaSを目指して、仮説検証を進めていきたいと考えています。
課題は山積み、しかし、解決した先の未来はおもしろい
チャレンジ1: AI SaaSを地方や中小企業、はたまたグローバルにまで届ける販売プロセスの開発
AIを中小企業や地方、はたまたグローバルにまでもマーケティングし、セールスし、カスタマサクセスするというプロセスは、まだ誰も解いたことのない問題です。
例えば、どうやってマーケティングすることがより伝わりやすいのか?市場醸成はどのように効果的に展開していけるのか?であったり、AIプロダクトをどのようにセールスすれば、より価値が伝わるのか?どのようなオンボーディングを行えば、より顧客価値の最大化につながるのか?といったようなまだまだ答えがわかっていない課題が山積みで、今までの経験をフルで活用しながらも、常に新しい問題が存在しているので、やることが尽きません。
また、グローバル展開を加味すると、よりテックタッチでのアカウントバンドルフローや、オンボーディングフローを開発していく必要があり、マーケティングからプロダクトやカスタママーケティングまでワンチームで問題を解いていく必要があります。
これらの課題を解決した先には、日本全体にIVRyが行き届き、様々な人手不足が解決していると思いますし、日本初のグローバルでの成功への打席に立てるのではないか?と思います。
チャレンジ2: LLMの進化をいちはやく社会に浸透させるプロダクト開発
GPT-4oのアップデートなど、1日で常識が変わっていくLLMの進化の世界で、日々解ける問題が大きくなっていきます。
そんなソリューションの進化が大きく・速い時代に、LLMのアップデートをいちはやくプロダクトに落とし込み、インパクトのあるプロダクトアップデートを日々社会実装をしています。
特に難易度が高く、かつ、チャレンジングであることは、まだ誰も解いたことのない「AIプロダクト開発」をファーストペンギンとして、プロダクト開発プロセスを自分たちで学習しながら創り上げ、AIプロダクトにおけるデザインやエンジニアリング組織やプロダクト改善フローの当たり前を作っていくことだと思っています。
例えば、AIにおける音声対話のデザイン(VUI)は、まだまだマテリアルデザインが出る前のように、世界にとっても全く正解がありませんし、言語によって答えも少し違ってきますし、AIにおけるプロダクトアップデートは、少しの変更でも影響範囲が膨大となりやすく、テストプロセスやデグレの確認プロセスも通常のソフトウェアエンジニアリングとは違ってきます。
また、SREやインフラエンジニアも腕の見せどころが多く、リアルタイム音声対話において、0.5sの遅延をどれだけ減らせるか?で、クリティカルに顧客体験の質に関係してきます。
これらの課題を解くことによって、改めて日本のAI活用が進んでいくのではないか?と考えていますし、より高いレベルでのAIプロダクトを当たり前化させ、10年後に「IVRyを使い始めて、いつの間にかAIと一緒に働いていた」と言っていただけることに繋がると信じています。
ちなみに、エンジニアリングプロセスにおいても、今までは先陣たちが解いてくれた発明の上にでソフトウェアエンジニアリングを行っていましたが、IVRyでは自分たちがAIソフトウェアエンジニアリングの当たり前を作っていくことで、日本や世界にとっても大きな課題を解決しているんじゃないかと浅い知識ながら思ったりしています。
チャレンジ3: 圧倒的な組織成長を支える
IVRyは上記の複雑な課題を解きながら、T2D3を超えるスピードで成長していく会社です。そのため、1年以内に参画する人の数もT2D3で伸びていきやすく、通常は味わえないような速度で組織が拡大しています。
そんな組織成長を支えるためのカルチャーづくりや仕組みづくり、採用広報〜実採用活動、評価設計やオフィスづくりといった手広い仕事が、まだまだ手つかずでたくさん残っています。
また、より高い成長を実現するためのFinanceやIPOプロセスも含めた守りのデザインなど、まだまだたくさんの課題が存在しており、自慢じゃないですが、こんなにやることが残ってる会社も珍しい(笑)と思っています。
最後に
IVRyはこれからコンパウンドAIシステムによって、日本の働き方を大きくアップデートしていく会社で、市場参入の角度とテクノロジーの進化のタイミングが交差し、これからの10年のAI社会を創り、もっと言うと21世紀の歴史に残る会社になれるチャンスが存在している会社です。
一方で、爆発的な組織成長や事業成長、そして、今後の可能性に対して、お恥ずかしながら、まだまだ当たり前の「あ」の字もできていないことがたくさんある会社です。
「チャンスの女神は前髪しかない」と言いますが、IVRyはこのチャンスをしっかり掴むべく、顧客価値に向き合うことはもちろんのことながら、IVRyの更なる可能性となる採用を日々求めています。
この記事を読んで、少しでも心が動いてくださった方は、ぜひカジュアル面談や採用イベントに気軽にご応募いただき、お話させてください!
これからの日本やグローバルでのAI活用の当たり前を一緒に創りましょう!