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雪のノイシュヴァンシュタイン城

せっかくなら雪に覆われた城を見てみたいと思い、1月にミュンヘンを訪れた。
雪が少ないロンドンに比べて、到着したミュンヘンは雪で真っ白だった。
街に着いたのは金曜日の夜。ホテルに荷物を置いてから夕飯を食べに行くことに。
雪が音を吸収しているせいか、金曜なのに街は静かに感じる。繁華街に着いても煩い感じはなかった。 
観光地のはずなのに不思議に感じたが、その謎はすぐに払拭された。

観光雑誌にもよく掲載されている、ミュンヘンで1番有名なビアホールは大勢の人で賑わっていた。
そう、みんな暖かいビアホールでビールを楽しんでいたのである。
パイントよりも大きなジョッキでがぶがぶと。
喉が乾いていたせいか、ここのビールは今まで飲んだビールTop5に入る美味しさだった。
塩気の強いソーセージと、酸っぱいザワークラウト。ドイツのご飯はビールのためにあるようなものだと思う。
お腹いっぱいになってホテルに戻り、翌日のバスツアーに備えて眠りについた。

参加したバスツアーはノイシュヴァンシュタイン城の他に、リンダーホフ城とオーバーアマガウという街に立ち寄るものだった。
最初に訪れたのはリンダーホフ城。バイエルン王ルートヴィヒ2世が建設した小さな城だ。
この城の魅力はヴェルサイユ宮殿を模した内装と美しい庭なのだけれど、興味深いことは精神を病んで引きこもったルートヴィヒ2世が誰にも会わなくてすむような造りになっている点である。普通は給仕が食事を運んだりするのだが、それすらも避けられるよう食事を運ぶような装置までつけられていた。
冬は周囲を深い雪で囲まれる人里離れた地で、メルヘン王と呼ばれ、自分の地位や家柄を好まなかったルートヴィヒ2世の哀しい生活の一端が垣間見えた気がした。

2つ目の目的地はオーバーアマガウ。ここは10年に1度、キリストの受難劇が行われる村で、その歴史は1633年「ペストの蔓延が収まったら受難劇を10年に一度上演する」という誓いを立てたことがきっかけに始まる。受難劇はかなり大規模なもので、5月から9月にかけて100回以上上演され、上演時間は、朝から夕方までになる。ちなみに来年2020年は上演の年となるけれど、私が行った2018年の時点で既にチケットは完売。ドイツ語なんてまったくわからないけれど、10年に1度しか行われない劇に興味が湧いた。

ツアーの最終目的地がノイシュヴァンシュタイン城だった。
生憎正面部分が大規模修復中だったけれど、雪の森に聳える白い城はとても美しい。
この城は要塞としても住居としても造られた訳ではなく、ルートヴィヒ2世が自身の中世への憧れを詰め込んだ城であり、彼が好んだワーグナーの『ローエングリン』が描かれた絵画も飾られている。
ローエングリンは白鳥の騎士であり、ルートヴィヒ2世が求めていた男性像のように思えた。或は呪いがかかった白鳥に自身を重ねたのかもしれない。
城は建設が途中で中止され、内装は中途半端なまま遺されている。
最初に見たときは感じなかったけれど、御伽話の城には華やかさではなく、ルートヴィヒ2世の人生のようにどこか寂しい空気が漂っていた。


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