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内部監査がつまらない理由・面白い理由

この記事は、以下の内部監査募集を読んだ方から内部監査は面白くない印象でしたが変わりました!という感想があったと柴田さんから聞いたので考えたものです。確かに内部監査は面白くなさそうという意見もありそう!と思ったので、どうしてあんまり自分がそう思っていなかったのかを考えてみました。つまらない理由を考えた後に、内部監査の歴史を振り返って、面白くなるポイントを見つけます。面白いところは「組織が良い意思決定をしているか?」を内部監査が問うようになっていること、です。

なぜ内部監査はつまらないのか

と言っても、私は今やっている内部監査以外がどんなものかを知りません。なので、ここはおそらくこうなんじゃないかという空想です。

●作業が決まっていて繰り返し作業になる。
●何かを指摘をしても聞いてもらえず嫌な顔をされる。
●経営者や周囲から評価がされずモチベーションが下がる。
●今後のキャリアに繋がらなさそう。

確かに。これだと全然やる気が起きなそう。では、これがなぜ起きるのかをさらに考えてみました。(空想ですが)

普通に日本の中小上場企業であれば、監査資源が足りないからつまらなくなるかもについては前の記事に書きました。

今日はそもそも内部監査の仕事には、2つのつまらなくなる要因があり得るということを考えます。

画像1東京都労働相談研究センター

上の図の左右どちらに行ってもつまらなくなります。
①成果・達成感が低くて、ストレスレベルも低すぎる状態。「被害意識・孤立感」が生じる状態です。具体的には、内部監査の作業感が強くて組織への貢献が見えにくい状態になります。
②一方で、求められる水準が高すぎてストレス過剰になる右側の状態もあります。最悪はパニック状態・うつ状態もあり得ます。具体的には、経営者や周囲から評価されない(評価の水準が高すぎる、または、評価の水準が明らかでない場合も含まれそう。)が、評価へのプレッシャーが高い場合に起こりそうです。

まとめると、内部監査は、その組織の「成果・達成」との関係性が曖昧だったり、はっきりしない場合に、上記の「何も期待しない作業と扱われる」か、「過剰に何かを期待されているが依頼する側もはっきりしていないため内部監査人が燃え尽きしてまう」の2方向のリスクがあると考えられます。

と、ここまで冷静風に書いてみて、うわっ内部監査怖い!と思いました。

内部監査の2つの出自と変質

さて、どうして私が内部監査が面白くないとは思わなかったのか、をここで考えます。

成果と仕事の紐付きが曖昧、または無いことが内部監査のつまらなさや、過剰なプレッシャーを生むと書きました。この原因は、「内部監査」と言う概念そのものの歴史がわかりにくいからなのではと、私は個人的に思っています。いろいろ混ざってきているからわかりにくい。

歴史を振り返り現代の内部監査の目的「良い意思決定につながっているか?」を見出すと面白くなってきます。

内部監査の元となる「監査」には最低でも2つの出自があります。1つ目は、オーソドックスというか想像のつきやすい王とか経営者のニーズに応えるもの。

広義の監査は古代から存在し、特に国家の公的部門(公会計)で行われていた。集めた物資の管理を監督・監視する制度が定められ、監査は役人や君主自身が行なった。文字に残された最古の会計監査の記録は、紀元前4000年の古代エジプトである。
監査の歴史(wikipedia)

2つ目が、財産を委託されて運用される状況が生じてからのいわゆる「エージェンシー問題」に対応する目的の第三者的な立場による監査の発生。これが中世・近世になって生じてきた。(ちなみに本題とは逸れますが、イギリスでは、もともと株主による自由監査が行われていた、と言う話が書いてあってなんだこれ面白そうと思いました。この過程で私立探偵とか雇いそうで、すごい良い。あと、外部監査人が企業から報酬をもらうがゆえに、このエージェンシー問題が別の角度から勃発したエンロンのケースも内部監査部門を巻き込んでいるので興味深いけど、ここで書ききれない。)

説明責任がともなう経済活動においては、経済資源の所有者を不正や誤謬から守るために監査が行われた。財産の委託・受諾関係をもとにした会計として代理人会計が行われるようになり、民間の商業活動の増加にともなって監査も増加した。
監査の歴史(wikipedia)

エージェンシー問題については、以下の記事も詳しいです。つまり、「所有者」と「実行者」を分けると、本当に依頼通りに実行されるかは分からなくなる、と言っているのでしょう。

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部下が上司の期待通りに働かない理由 『世界標準の経営理論』で学ぶエージェンシー理論

ここで3つめの変化が生じます。(1940年頃のIIA設立。)外部監査と内部監査の役割を分けて定義しようとする人たちが現れた。

想像ですが、内部監査と外部監査の2つがなんとなくあって、これどっちも同じじゃね?ってなったところから定義したい欲求が生まれたのでは・・・。ここから内部監査は「業務がより良くできているか」を考える方向に急に傾き始めます。

・・・従来型の内部監査の原初的な役割は、経営の目となり耳となり、給与不正や現金紛失の防止など、資源保全を行うことに主眼があった。やがて内部監査の目的は、全ての会計取引の検証に拡大し、徐々に「経営のための監査」から「経営の監査」へと移行して行った。・・・内部監査の役割を、経営(業務)監査へと転換させ、会計監査の類型であるとの誤解を解くことに大きな意義があった。
・・・それまでの会計と財務事項を主とした内容からは大きく舵を切り、業務監査への転換を明確とした。
内部監査部門の歴史と将来の展望 - 日本内部監査協会

そして、以下が大体どんな風に拡張されたのかの経緯です。ただし、これも全て「説明責任のために」やるので、背景となっているのは株主に内部のことをできる限り説明して保証する、エージェンシー問題を抑えるという視線は変わっていません。

スクリーンショット 2021-07-12 20.50.32内部監査部門の歴史と将来の展望 - 日本内部監査協会p.64をもとに作成

内部監査と「良い意思決定か?」がつながると面白くなる

 これ以外にも、この出自からくる2つのレポートラインという概念が面白い、とか。独立性とは。内部統制ってなんだ。とか面白ポイントがいっぱいあるのですが、すごく長くなってきたのでまとめます。

内部監査のつまらないところと、面白いところ、まずつまらないところとその理由を振り返ります。

●作業が決まっていて繰り返し作業になる。
●何かを指摘をしても聞いてもらえず嫌な顔をされる。
●経営者や周囲から評価がされずモチベーションが下がる。
●今後のキャリアに繋がらなさそう。

つまらない理由を歴史に見出すと、伝統的な「会計記録の正確性」に貢献しているのは明確に「外部監査人」と「社内の経理チームや現場」になってきているということがあります。(この流れにはITシステムによって内部統制の構築が現場の協力で可能になってきているという要因もあると思います。)内部監査室は、この定義を歴史的に(1940年代から)手放しつつあるのです。これが理由で、「何も期待しない」または「何を内部監査に期待したら良いのかわからない」という状況が生まれやすくなっています。もし会計記録の正確性を中心に据えて仕事を進めると、面白くなりにくい状況が世の中的にはありそうです。(個別の会社の事情は違うので、一概には言えませんが・・・。)

では、面白くなる理由はどこにあるでしょうか。これも、私はですが歴史にあると思います。(これも個別の会社の事情があるので、一概には言えませんが。)

私が思うここをやったら面白そうをあげてみます。(いまできているかは棚に上げました。)

●業務遂行の正確性・能率性または、弾力的な意思決定ができているかをテーマにする。
●上記をテーマとして設定しつつも、そもそも「内部監査とは」についての合意が少ないと思われるので組織内の合意に手間をかけてみる。
●組織内の合意が難しい場合には、弾力的な意思決定の話題とコーポレートガバナンスの話はつながっているのでそこから話してみる。(この話題は別の記事で掘り下げたいと思います)
●とはいえ、会計不正は大切な仕事なので、監査法人・監査役(監査等委員会)としっかり話して、防衛ラインを握る。

こんな感じで、内部監査によって、組織のどんな単位でも良い意思決定されているかを判断できるようになったらすごい面白いな!と思っています。

「組織の面白さと内部監査」はすごく関係があるよ!と言うことが言いたかった記事でした。この感じ面白くないですか ? 

そう思った人は、募集内容を見てください!

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