留学を成功させるための秘訣「4S」
北澤 耕司
京都府立医科大学 眼科医
Buck Institute for Research on Aging、客員研究員
今のご職業に就くと決めた時期は?
高校生の頃に医師を目指すことを決めました。医学生の時に出会った、当時の眼科学教室の教授に感銘を受け眼科医を目指しました。眼科医になった後、臨床現場での限界を感じ、徐々に医師・研究者としての道を志しました。
今のご職業に就くためにどう動きましたか?就職に成功した秘訣は?
眼科医・研究者としての道に進むために眼科学の歴史を最初に勉強しました。そうすることでunmet medical needを考えることができ、今後の目指す方向性を自分でイメージすることができました。具体的には、まずは日本語でたくさんのレビュー論文を読み、国内でどこの大学の誰がどのような研究をしていて、どこまでのことがわかっているかを把握し、その次に英語のレビュー論文を読み、海外での動向を同様の方法で勉強しました。その結果、海外留学し、独自の分野を作る必要性を感じ、準備を開始しました。
まずは資金調達です。申請可能な海外支援フェローシップを可能な限り調べ、過去の受賞者がどれくらいの業績で受賞しているかを調べて、それをモチベーションにして業績を重ねました。そして多くの海外支援フェローシップに応募し、留学資金を獲得しました。次に、留学先を探しました。人生100年時代の今飛び込む領域は“老化研究”であること、留学直前に抗老化治療薬“セノリィティクス”の臨床試験がアメリカのベンチャー会社で始まっていることから、そのお膝元である米国唯一の老化研究所、Buck Institute for Research on Agingに、知り合いもいない中飛び込み、“眼”と“細胞老化”というテーマの研究を開始しました。
先日、ボスに「なぜ、面識がなかった、しかもただの眼科医であった、私を研究室に受け入れたのか?」と興味本位で聞きました。いつも世界中からたくさんの研究室受け入れ依頼が来るのに、なぜ私を?という疑問がずっとあったからです。返ってきた返事は次の通りでした。
1;“眼”という分野が彼女にとって新しく、興味があった
2;履歴書と推薦書
3;情熱
1についてはこれまでも様々な議論をしてきている中、彼女が”眼”に興味を持ってくれているのはわかっていましたが、2の履歴書や推薦書を意外に細かくみていたことに驚きました。ただもっと驚いたのは3の情熱が最終的な決め手であったこと。これを聞いた時に、これまでの留学の苦しかったことを走馬灯のように思い出して、一気に報われた気がしました。留学当初、眼の研究について拙い英語で必死にプレゼンテーションをして、ちゃんと伝わっているのかどうか不安に思う日々が続いていました。それでもデータを見せれば伝わるんだ、という必死の思いで実験を重ね、論文を読み、様々な提案をし、研究所内の他のP Iとも独自に共同研究をしてみるなどアピールをし続けたことは間違いでなかった、と感じた瞬間でした。言語の壁は自分が思っていたよりは低く、日本でこれまで学んできたことをそのまま出すだけで良い、ということを再認識できました
他の進路と比べて迷ったりしましたか?
迷ったことはこれまでに1度もありません。いつも今の仕事が天職であると感じています。苦しいことも、その後にくる喜びや達成感を考えると乗り越えることができました。
今のご職業を含め生活の満足度は?やりがい?夢?
留学中は金銭的に苦しいこともありました。しかし、お金はある程度どうとでもなり、成功した時にはお金がついてくると信じています。むしろ目先のお金を考えるあまり、本質的な自分への投資をできないことが、長期的にみるとマイナスになると考えています。隣の芝は青く、苦しい時は羨ましく思うこともありますが、そんな時は自分がなぜ、何のためにやっているかを考えて原点に戻るようにしています。
医師として多くの患者の治療に関わることができ、いつもやりがいを感じています。また研究者として、新しいものを作っていき、現状の医療では解決できないものを解決できることに取り組んでおり、最終的にそれを目の前の患者にまで届けることができればと考えています。眼の領域には多くの加齢性疾患があります。私たちはヒトの年齢(chronological age)を知ることができても、“眼”の年齢を知ることができません。“生物学的年齢(biological age)≒体内年齢”という言葉があるように、“眼年齢”がわかれば、またそれを若く保つ方法がわかれば、100年経ってもちゃんと“見える眼”を維持することができるのではないでしょうか。“Science creates the future”というボスの言葉を胸にこれからも自分の信じた道を進んでいきたいと思います。
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