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着付師はアスリート

きものの着付する人、お願いする人は、今は身内の誰かやご近所の女性という時代ではなくなってきた。
現代ではホテルの婚礼担当、美容室の女性のほかここ10年ほどで増えてきた“出張着付師”というフリーの着付をする人。
私もその出張着付師の一人である。
“出張着付師”とは自宅や滞在宿泊施設の部屋まで伺って着付をする技術者のこと。
今はかなりの人数の出張着付師がウェブサイトや検索サイトで探せるが
私が始めた頃はまだガラケー時代でもあり、数は少なかった。

着付や着物の仕事をを京都でする前は某スポーツのインストラクターをしていた。
その後、何故着付師だったか。。
技術職として現役で長く出来る仕事であると同時に得意な身体を使う仕事だったから。

スポーツと着物着付師はなかなか結び付きにくいと思うが
意外と要素が近い。
① 体幹が必要であるということ
私はこの体幹が着付にはとても重要だと思っている。
お客様に“踏ん張ってくださいね!と言われる”と聞いたことがあるが、
踏ん張らなくてはならないのは着付師の方。
お客様にはふわっと立っていてもらいたい。

② ある程度の筋肉の力
着物が着崩れるという表現ではいろいろな現象があるが
一番多いのは帯締めが緩んで下がること。
つまりお太鼓や振袖の飾り結びが崩れるのも帯締めの緩さが起因する。
この帯締め、細いのにいい仕事をするグッズだ。
帯締めがしっかりしていると確実にお太鼓や帯結びの安定感に繋がる。
細い帯締めを握って、しかも帯を固定するほどに締めようとすると
そこそこの力が必要である。
そこで大切なのはお客様を押さずに自分の体幹を使って締める事。
(着付師の)身体の軸をぶれさせずに軽く帯に手を添えて
帯締めが通っているお太鼓や飾り結びの背中部分が凹むようにしっかり結ぶ。

左の締め方は背もたれに寄り掛かるとお太鼓がつぶれて帯締めが緩む。右の締まり具合までが理想

③ 時間短縮(以下時短)をするために無駄に動かず手早く
肌着や補正から考えると仕上がるまでそこそこの数の紐や道具を使う着付。
それぞれをゆっくりやっていたら時間はいくらでもかかってしまう。
脳をフル回転させ、お客様の周りをぐるぐる動かずに効率よく着付ける。
素早く手を動かしながら次の動作や作業のイメージをすることが時短に直結する。

複数や多人数の着付をしなくてはならない時には特に上記の要素が必須。
ほかにも準備と紐類を効率的に使って
美しい着姿の維持や着付時間の短縮
そして一番大事な着る人の心地よさを追求していかなくてはならない。

体調の維持だけでなく、筋力が落ちないようにしたり
下半身を鍛えたり、着付師はアスリートに限りなく近いと感じる。

Submitted by 宇ゐ(ui)

ここやかしこ着付サロン 着付師 宇ゐ



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