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名古屋市役所職員だった小野地光弘がUIJに参加した理由

わたしたちUrban Innovation JAPAN(以下、UIJ)は、自治体職員と企業が協働し、社会や地域、庁内の課題に取り組んでいます。

地域の課題は複雑で、ひとつの部署では取り組めないほど壮大な課題や、地域でこれまで積み重ねてきた取り組み方と社会背景の大きな変化が重なり合い、そのひとつひとつを丁寧に解きほぐして向き合っていく必要があります。

その課題と向き合い、協働し、伴走していくUIJの仲間を紹介していくシリーズ、今回は小野地光弘を取り上げます。

小野地は2000年4月に名古屋市役所入庁し、21年間市役所に勤務しました。そのうちスタートアップ支援などの産業振興に14年間従事し、2020年に取り組んだUrban Innovation 名古屋では、名古屋市役所側の担当者でした。そして2021年3月に名古屋市役所を退職し、UIJにジョインした人物です。

どんなきっかけで安定した市役所を辞めて転職を決めたのか、その謎に迫ります!

入庁前から「中小企業をサポートしたい」と考えていた

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小野地光弘/1972年秋田県生まれ、名古屋在住。大学卒業後、民間企業で5年営業職を経験の後、2000年4月に名古屋市役所入庁。21年の市役所勤務のうち、スタートアップ支援などの産業振興に14年間従事。そのほかまちづくりや市民活動推進担当部署等を歴任、2021年3月退職。2021年4月から名古屋の中間支援NPOや名古屋工業大学にも勤務するパラレルワーカー。

名古屋での大学生の頃は映画を見るサークルに所属し、年間100本の映画を見ることを目標にしていました。それで将来は遊びや余暇といったエンタメ分野で仕事できればと考えて、映画配給会社やゲーム会社を目指して就活したんです。

運良くゲーム会社に入れたものの、企画はさせてもらえず営業職でした。営業先はゲームセンターとかゲームショップで、商談相手は中小企業の社長さんが多かったですね。飲みに連れて行ってもらったり、ときには叱ってもらったり、すごく良くしてもらいました。

でも入社して3、4年経った頃、自社のゲームが次々と売れ始めて。その頃からちょっと社内の空気が変わりはじめました。会社側は当然のごとく強気の販売方針をとるようになり、自分には、自社の論理をお客様に押しつけているように思えてなりませんでした。

何か違うと感じて、すごく良くしてもらった中小企業の社長さんたちと別のカタチでいっしょに仕事できないかと思って、コンサルタントとか税理士になろうと思ったんですよ。

ヒット商品連発で勢いのある企業だったから終電で帰宅するような生活をしていたので、勉強する時間がないわけです。「そうだ、公務員になれば時間ができて勉強ができる!」と安直に思っちゃって。それで公務員の勉強をはじめたらまたまた運良く名古屋市職員になれたんです。

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最初は区役所のまちづくりの部署に配属されたんですが、思ったとおり民間企業のときよりも早く帰れたので専門学校に入って税理士になる勉強をしていました。

でも途中で税理士はあきらめるんです。というのも「中小企業振興センター」という部署の庁内公募があり(名古屋市役所には、特殊な業務を行う部署が庁内から職員を公募するという制度があります)、中小企業を支援したいという思いが役所にいながら叶うと思って、応募してみたらまたまた運よく採用していただき、4年間在籍していました。

そこでは中小企業診断士の先生とお仕事する機会が多くなって、税理士はいつでもなれるだろうと思って中小企業診断士の勉強をはじめたんです。なんとか5年目で受かったんですが、その頃にはまた違う部署に異動していました(笑)

きっかけは2020年に関わったUIJのプロジェクト

退職する一番最後の年にスタートアップ支援の部署に配属されました。

名古屋市が2019年から行政の課題を先進技術をもった企業さんと解決していく事業をはじめたんです。それは僕が参加する前の年なんですが、どこにも委託せずに市役所が独自で行っていました。事業が良かったので2年目は予算も拡大させてプロポーザルに出したところ、UIJも含まれているコンソーシアムが落札したんです。

名古屋市時代

そのとき僕が担当になったのでそこでUIJとのつきあいがはじまりました。それが2020年6月頃です。始まった当初からUIJの仕組みがすごいなと感じていました。役所の課題をスタートアップが解決するのもすごいけれど、まずUIJがきめ細かく伴走してくれることに感動しました。

それまでから産業振興にいたのでスタートアップとの付き合いもわかっているつもりでしたが、役所の部署は下手すると民間企業とつきあったことのない人とかもいるんですけど、そういうところと最初の課題のヒアリングから上手に伴走してくれるんですよね。

ヒアリングでUIJのふたり(吉永松村)の質問力とか寄り添い度合いにやられちゃった。現場のことも課題感もわかってくれるし、それに対する技術だとかスタートアップ企業とかを思い浮かべながらいろいろ深堀りしてくれるわけです。

担当職員の目つきや表情が変わるのを感じた

伴走支援もありがたかったです。名古屋市役所の担当者としてわかったのは、担当部署の職員の目つきとか表情が明らかに変わってくるのがわかるんですね。

自分の課題を企業の担当者さんが解決してくれるんですよ。普通役所は仕様書をつくって、入札して、プロポーザルして、という具合に一気通貫でつくってしまう。そうすると不備があったときに修正が難しい。

一方でUIJは半年実証実験をしながら担当課とスタートアップが「こういうのできました」「こうしたほうがいいですね、できますか?」「できますよ」と言いながら新しいものをつくっていくんですね。この一連の協働作業をしながら担当課の人間が一番変わってくるんですよ。

自分が提案したものが反映され、それがやっぱり先進技術というところもあって、担当課のモチベーションがどんどんあがってくるのを肌で感じます。

例えば中区役所民生子ども課の担当係長なんかもそうですね。

もともとアツい人なんです。聞くところによれば、窓口の改善を本庁のバックオフィスに進言したり、現場でいろいろ試行錯誤されてきた背景がある。うまくいくこともあればうまくいかないこともあって、もがいてきた背景があったところにてスタートアップ企業のアノルドさんが手をあげてきてくれた。

「外国人の手続きをなんとかしたい」という課題に対して大掛かりなアイデアが来るのかなと思ったら、アノルドさんの回答は、申請書を写真に撮ってそれに注釈をつけるというシンプルだけど、ものすごい効果的なアイデアが出てきてそれがびっくりでした。

そこに対して担当者とアノルドさんの「こうしたい」「ああしたい」のかけあいがすごくうまく噛み合って、どんどんいいものになっていくのがわかりました。

窓口は役所の中でもたいへん忙しい部署なんですけど、仕事の合間を塗っていいものをつくっていこうと一生懸命になっていた姿が印象に残っています。現場の一生懸命さが報われた瞬間を見ることができました。最終的には次年度の予算で何台か導入まで運ぶことができました。

ほかの角度で言うとスポーツ市民局地域安全推進課の防犯パトロールの課題も印象に残る仕事でした。

防犯パトロールのボランティアさんはシニア層が多く、「果たしておじいちゃんがスマホを使うだろうか」というのはあったんですが、その考えは短絡的で、実際は楽しんでいただけました。

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「防犯アプリを使って犯罪率が下がりました!」と言えればきれいですが、半年ぐらいでは検証できない中で、防犯パトロールのみなさんが「これいいね」「もっとパトロールしよう」とモチベーションがあがる発言が聞けたのがうれしかったです。

21年在籍した役所を辞めて、転職を考えた理由

転職を考えたのはUIJに取り組んだ6月ですね。先ほども言いましたがUIJのふたり(吉永・松村)に魅せられて。「企業と行政をつなぐ仕事なんてめっちゃ面白いじゃん!」と思って。単純だから。今いっしょに仕事するようになって苦労があるのもわかってきましたが(笑)

もともと「中小企業の支援がしたい」と考えていたし、21年も在籍した役所の経験が活かせる仕事なんじゃないかと思いました。中小企業の支援もできて、自分が活かせる仕事だと感じました。夏終わりから秋口に求人されていたので、本当にUIJの仕事がやりたいと、ふたりにはそれとなく匂わせたりしていました。

市役所とUIJ両方を経験したからこその思い

今はUIJのメンバーとしては直近では豊橋市さんの課題に取り組んでいます。

豊橋市は市役所の担当者がすごく積極的だし、よく動くし、優秀だなあと思います。レスも早いし。

担当課も課題を解決したい思いが強いし、間に入っている地域イノベーション推進室も事務局としてUIJといっしょに課題を解決したい思いが伝わってくるのでやりがいがあります。

UIJを名古屋市役所職員として体験して、役所にもいい、ベンチャー企業にもい、課題解決できるのもいい、人材育成につながるのもいい、発注の仕方の改革、調達の改革、半年いっしょに汗をかくのもいい、と感じました。だからこれを全国に広めていきたいです。コロナ禍じゃなければいろんな自治体に営業に回りたいです。一部自分のこれまで培ったネットワークを使って、近隣の市町村の担当者に話もしています。

行政・NPO × テクノロジーで世の中をよくしていきたい

UIJの仕事だけをしているわけではなく、NPOで働いたり、大学の研究室で研究員もしています。結局僕がやりたいのは何かと考えたときに、行政とスタートアップとコラボで課題解決したいというのは一番にあるんですが、NPOでもできないだろうかとUIJに入る前から考えていました。

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NPOも地域の課題を抱えて一生懸命に現場で奮闘しているところがたくさんあります。NPOこそテクノロジーの力を使って課題を解決してあげれば世の中よくなるんじゃないかなと思っているんです。

テクノロジーで役所が変われば世の中が良くなって、NPOが活躍すれば世の中が良くなるんじゃないか。そういうコーディネーションができればと考えています。

その手段のうちのひとつがUIJであり、達成するためにNPOにも在籍しているし、大学で研究している状況です。行政・NPO × テクノロジーで世の中を良くしていきたいと考えています。(インタビュー/狩野哲也)

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