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読書感想文

青い鳥|重松清

嘘をつくのは、その子がひとりぼっちになりたくないからですよ。
嘘をつかないとひとりぼっちになっちゃう子が、噓をつくんです

村内先生は国語教師なのに、言葉がつっかえて上手く話せない。
けれども大切なことは教えてくれる。
ひとりぼっちで耐える中学生たちに寄り添う、なんともパッとしないヒーロー。
ある人に比べたら幸せだ、あんな人だって頑張っている…
辛いと思う許容量は十人十色で、相対的には比べられないもの。

うつくしい人|西加奈子

離陸の瞬間が好きだ。自分の内臓を残して、体だけがぐう、っと浮くあの感覚。
置いてきたものは内臓だけではなく、知りたくない自分だったり、過去の汚名だったりするのかもしれないと、ほんの一瞬思うことが出来る。

居づらくなった会社を辞めて、美しい瀬戸内海に浮かず離島を旅する百合。
引きこもりの美しい姉、旅先で出会う人たち…
周りの目を気にし過ぎて、その環境に合わせた自分を作ったり、他人と比べることで自己嫌悪に陥ってしまう。誰にでもある自意識過剰。
日常が途切れずに続いていくことは時として残酷かもしれない。
自分で不幸になれるなら、自分でも幸せになれるはず。

ガール|奥田英朗

立場はちがっても、女同士は合わせ鏡だ。
自分が彼女だったかもしれないし、彼女が自分だったかもしれない。
そう思えば、やさしくなれる

30代バリバリ働く女性たちの短編集。突然課長に昇進し年上の男性社員を部下に持った人、マンションの購入を悩む人、ディスコに通う人、小1の子を持つ人、新人の教育係を命じられた人…いずれも30代OL。ガールというには違うような年齢の女性。
独身でも、結婚してても、子どもがいても、みんなきっと焦ってる。
仕事はすごく頑張っているけど、このままでいいの?

対岸の彼女|角田光代

ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、
ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、
うんと大事な気が、今になってするんだよね

子供のいる専業主婦の小夜子。独身の女社長の葵。同い年だが、環境が全く違うふたり。
人間関係は複雑。独身、既婚、子どもの有無で立場や価値観が違ってくる。
ライフスタイルの変化で分かり合えなくなってしまい、疎遠になってしまうが、一緒に過ごした時間は決して無駄ではない。
違うから惹かれ合って、違うから上手くいかないこともある。
儚く脆い人間関係に疲弊するときもあるけれど、人との出会いを求めることはやめられない。

世界から猫が消えたなら|川村元気

プレゼントは物"そのもの"に意味があるのではなく、選んでいるとき、
相手が喜ぶ顔を想像する"その時間"に意味がある

郵便配達員として働く僕。ある日突然、脳腫瘍で余命わずかであることを宣告される。
僕の元に「世界から何かを消す代わりに寿命を1日延ばせる」という悪魔が現れる。
一番大事なものが何かと本気で考えたとき、綺麗事を抜きにしたら自分ではないのか。
天秤に掛けて選択して生きているし、大抵のものはなくても生きていける。
かけがえのないものは、得てして失ってから大切だと気付く。

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